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ため息しか出ない... 受動喫煙対策の改正法案が骨抜きに!?

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現在、世界最低ランクの日本の喫煙対策。東京パラ五輪を前にようやく改善か、との期待が煙に巻かれたのが半年前でした。そして今、総選挙と新たな厚労相の就任を経て、不安が現実となりそうな気配です...。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

前回の国会で、法案提出にさえ至らなかった健康増進法の改正。「喫煙は30㎡以下のバーやスナックに限る」としていた厚労省案に対し、自民党が「飲食店を廃業に追い込みかねない」と反発して立ち消えとなり、それきりになっていました。このほど再び動きが見られたものの、やはり恐れていた通り、自民党案をほぼなぞったままの内容でした。

毎日新聞によると、

新たな案では、飲食店内は原則禁煙(喫煙専用室設置は可)だが、店舗面積150平方メートル(客席面積100平方メートル)以下なら店側の判断で喫煙可としてもいい。ただし、施行時点で開業し、大手チェーン店などではない中小企業や個人事業主が運営する店に限るなど、一定の歯止めをかける。面積による線引きは「臨時の措置」と位置づけるが、見直しの時期は明示しない。

とのこと。

以前にも健康増進法改正について書きましたが、当時の自民党案は「100㎡以下」(約30坪以下)だったはず。そして餃子の王将でさえ20坪から通常店舗を展開している、とも書き添えました。150㎡となると、45坪超です。

そこで飲食店の平均面積等が分かるサイトで調べてみると、東京都内はざっと以下のような状況でした。
・新宿区:平均74.71㎡(22.59坪)、30坪未満79%、50坪未満92%
・練馬区:平均63.59㎡(19.24坪)、30坪未満86%、50坪未満93%
・西東京市:平均91.43㎡(27.65坪)、30坪未満74%、50坪未満88%
・立川市:平均96.72㎡(29.26坪)、30坪未満67%、50坪未満86%

ご覧の通り、少なくとも東京では150㎡(45坪)の規制に引っかかる飲食店がいかに少ないことか!特に23区内では、そんな贅沢なお店、なかなかないですよね。ごく一部のファミレスくらいです。

あとは規制対象となる「大手チェーン店」とはどこまで含まれるのかが気になるところ。私が子連れでよく訪れる飲食店は、全国チェーンのファミレスなどばかりでなく、多摩地区で展開する中小規模のチェーン店だったりします。となると、やはり150㎡以下を喫煙OKにしたら、実質的に法改正の意味はほぼないでしょ、としか思えません。

冒頭の記事ではさらに、「世界保健機関(WHO)の受動喫煙対策の格付けが最低ランクの4番目から3番目に上がるのは、当初案と変わらない。」としています。その一文を読んで、一層がっかり。まさにこの喫煙防止対策が誰のためのアクションなのか、国や政治家がどこを見ているのかを、端的に示しています。国際社会に「ちょっとずつは喫煙対策を進めていますよ」とアピールして国の体面を保ち、「それに、WHOのランクだって4から3に変わるのは前の案と一緒でしょ」と言い訳しているような感じ。

こういうのを「骨抜き」と言うんだなあ、と、ただただ呆れ、ガッカリするばかり。受動喫煙は分煙では防げないという事実を一人でも多くの人が共有し、飲食店内での喫煙に対して毅然と「NO」と言い続けるしかないと思っています。

●公共の場の分煙 健康を守れない(←クリックすると読めます) 
●無煙タバコでも受動喫煙は発生(←クリックすると読めます)

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