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加熱式タバコでも電子タバコでも、分煙でも、受動喫煙は発生します!

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衆議院解散から1週間、総選挙の争点の中には、半年前に盛り上がっていたはずの健康増進法改正の話は一切出てきていません。受動喫煙の対策強化を目指す法改正ですが、パラ五輪直前までうやむやになってしまうんでしょうか。その間にも、加熱式タバコのシェアは順調に伸びていくことでしょう。でも、煙が出なくても受動喫煙は起きます。うやむやにされている間、受動喫煙は続く、ということですよね。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

加熱式タバコでも電子タバコでも受動喫煙は起きている、という話は、ロハス・メディカルの最新号で書いたばかり。

●無煙タバコでも受動喫煙は発生 ←クリックすると読めます。

ざっくり言ってしまえば、煙は出ていなくても、蒸気は出ていて、そこには有害物質が含まれる、ということ。たぶん微量かもしれないけれど、でもロット間や製品間で差があるので、もしかしたらちょっと多い場合もあるかもしれない、という状況だそうです。いずれにしても受動喫煙してしまうんですね。

また、「受動喫煙を防ぎたいなら、分煙を徹底すればいいじゃない」という人もいるでしょう。特に、郊外型の飲食店など大型店舗なら、喫煙室を作るスペース的な余裕も充分にあります。現状では「分煙」とは名ばかり、ただ「ここからこっちは喫煙、ここからこっちは禁煙」と席を分けているだけで、煙が自由に行き交って充満している飲食店も珍しくありません。それを考えれば分煙を徹底すれば済むようにも見えますが、そうは問屋が卸さないようです。

●公共の場の分煙 健康を守れない ←クリックすると読めます。

ですから法改正が進まないで放置されている間、紙巻きタバコが減って、加熱式タバコがシェアを伸ばし続けたとしても、それで受動喫煙が万事解決とはならないのです。むしろ、見えないけれど吸い込んでいる、というのはかえって恐ろしいこと。煙くて臭くて、というのなら、すぐ気づいて逃げようもあるかもしれないですが...。

ちなみにタバコは国の重要な財源、ってよく聞きますよね。実際、JTのホームページにも大きくはっきり「たばこ税は、一般財源として多大な貢献をしています」と書いてあります。でも、加熱式人気の一方で紙巻きタバコの売上が落ち込み、税収が500億減なのだとか。紙巻に比べて加熱式は税率が低いせいだそうです。となると、増税の議論から、加熱式タバコと受動喫煙の話が再燃するかもしれません(それまでに、加熱式タバコによる受動喫煙の影響についての研究がさらに進んでいてほしいですね)。パラ五輪直前までお預けかと思っていましたが、議論再開がもう少し早まることを期待したいと思います。


さて、以下は、法改正がお流れになって、今更思うこと。というか、今更腹が立ってきたというか、思い出しても呆れてしまって...。蛇足です。

個人的には、煙やら有害物質やらが「多い」とか「少ない」とかの観点での議論には、正直、違和感があります。だって、そもそもタバコは嗜好品。だから本人がその毒を甘んじて吸引する、というのは自由と言えば自由です。国民医療費の観点は別として。でも嗜好品だからこそ、周囲の人に毒をまき散らしちゃいけないに決まってます。確かに加熱式タバコは、従来の紙巻煙草よりも空気を汚染しないかもしれませんが、ゼロではないわけで。「ちょっとなら平気だし、仕方ないでしょ」みたいなのは、本来は嗜好品には許されない言い草のはずですよね。

でも、なぜかそういう話にはなりません。それどころか、法改正が見送られたのも、某与党が、厚労省案は厳しすぎて「飲食店が廃業に追い込まれかねない」と反発したためだったとか。飲食店はいつからみんながみんなタバコを吸いに行くところになったのかなあ、と思いました。だって成人喫煙率は、男性32.2%、女性8.2%で、平均でも2割以下。その2割弱の人たちだって、飲み食いしながら吸う人たちばかりじゃなくて、普通に食べて、食後に吸うだけの人もきっと大勢いますよね。

そもそも厚労省案でも、30平米以下の小さなバーやスナック、居酒屋などは例外を認めていました。30平米と言うと、10坪くらい。調理場を考えるとテーブルを置く余裕はなくて、ほぼカウンターのみのお店のはずです。そういった飲食店は、食事目的の通りすがりのお客さんより、お酒を飲みながらそこで何時間も話して過ごす常連客でもっているようなところが多そうです。愛煙家や、自分は吸わなくても煙を厭わない人が、夜な夜な集まっているのでしょうか。よく知り合った人同士なら、タバコの好き嫌いくらい、率直に言い合ったり気を使ったり出来そうです。だったら、禁煙を免除してあげてもよいかな、という気にもなります。あるいはその規模だとラーメン屋というのもあり得ますが、こだわりのラーメン屋さんはそもそも禁煙だったりしますよね。

そう考えると、本当は全面禁止であるべきと思いながらも、厚労省案はよく考えられた線引きがされていたんだなあ、と今更ちょっと感心。それに対して某与党は「100平米以下」を免除するよう主張してきたと言います。100平米、つまり30坪超って...。それを認めたら、都心の駅近くのほとんどの飲食店が含まれるんじゃないでしょうか。あの餃子の王将だって、通常の店舗は20坪から展開してるようです。その代替案じゃ決裂して当然ですが、そもそもそんな風に公然と法改正を骨抜きにしようとしてくるって、ある意味すごいなと思うのでした。選挙を経てどうなるのか、再び動きが出てくるのか、見守りたいと思います。

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