全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

人工甘味料とがん 米国で大論争に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

大西睦子

ハーバード大学リサーチフェロー
医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンに。

 2012年10月24日にハーバード大学関連病院の研究者たちが、雑誌The American Journal of Clinical Nutritionに掲載した論文で、ダイエットソーダの摂取によって血液がん(リンパ腫や白血病)のリスクが上がる可能性を指摘しました。

 リスクが本当に上がるかはともかく、その論文に数多くの批判が寄せられ、非常に珍しいことに病院側が「エビデンスの弱いデータ」と認めて「研究の推進は早まったものだった」と謝罪したので、驚きました。

アスパルテーム

 問題となったのはアスパルテームです。多くの低カロリー飲食料品に使用されている人工甘味料で、米国では1981年に制限付き使用が承認され、83年に炭酸飲料、96年に一般的な食品への使用が承認されました。今日では、世界中で約6000の食品に甘味料や調味料として使用されているそうです。ダイエットコーラ1ℓには平均560mgのアスパルテームが含まれます。

 アスパルテームは、食品添加物の歴史の中で最も広範囲にテストされ、これまで多くの実験的な研究により安全性を確認、評価されてきました。にもかかわらず、健康関連の懸念が議論され続けています。例えばラットで、アスパルテームによって脳腫瘍を起こす疑いが示唆され、再試験で否定されています。

 懸念を呼ぶのは、その化学的性質ゆえです。特に液体中で、すぐメタノール、アスパラギン酸、フェニルアラニンに分解されます。このうちメタノールがヒトの体内で代謝を経て生じるホルムアルデヒドは、ヒト発がん性物質と報告されています。

 アスパルテーム由来のメタノールは、問題にならない量と言われていますが、2005年に結果が公表された1800匹のラットによる大型実験では、ヒトの1日摂取許容量換算よりはるかに低い量でも、アスパルテームの用量が増えるほど、特に雌の白血病が増えると報告されました。この報告の後、ヨーロッパでも欧州食品安全衛生機関(EFSA)が審査し「以前に確立された40mg/kg体重のアスパルテームの1日摂取許容量を改定する理由はない」と結論づけました。その後も、マウスを使った発がん性試験の結果やソフトドリンクの摂取と早産との関係を示す疫学研究結果などが示される度、EFSAが審査していますが、結論は変わらず、2013年5月に再評価が行われる予定です。ちなみに米国では、アスパルテームの1日摂取許容量は50mg/kg体重に設定されています。

 今回の論文は、アスパルテームあるいは糖類を使用した炭酸飲料が、血液がん(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病)のリスクに関与するかどうかという疫学調査の報告です。

 調査には、医療従事者を追いかけた二つの大規模コホート研究、76年に始まった女性看護師を対象とする(Nurses'Health Study:NHS)と、86年に始まった男性医療従事者を対象とする(Health Professionals Follow-Up Study:HPFS)が採用されました。両コホート研究ともアンケートを実施して、がんやその他の健康上の問題に関わるライフスタイルと病歴の情報を被験者から提供されます。

 解析した結果、以下のことが言えました。

●男女の研究データを合算してみると、炭酸飲料全般の摂取量と非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫のリスクとの間に特段の関連は認められませんでした。
●男性については、ダイエット炭酸飲料を全く飲まない人に比べ、ダイエット炭酸飲料を日に1瓶・缶(355ml)以上飲む人では、非ホジキンリンパ腫と多発性骨髄腫のリスク上昇が認められました。女性では、こうした関連は認められませんでした。
●男性では、糖類を使った炭酸飲料でも、飲む量が増えるほどに非ホジキンリンパ腫のリスクが上昇する関係を認めました。女性ではこれは確認されませんでした。
●白血病リスクについては、男女のコホート研究それぞれから特段の関連が認められなかったのですが、男女の研究データを合算してみると、ダイエット炭酸飲料を日に1瓶・缶以上飲む人でリスクの増加を認めました。

 なお性差は、男性は女性に比べてADH(アルコール脱水素酵素)の活性が高く、体内でホルムアルデヒドが発生しやすいため、高いリスクとなるのでないかと著者らは考察しています。

多種多様な批判

 この報告に対して以下の批判がありました。

●統計を誤解している。今回のデータでも、アスパルテームの消費とがんの関係は極めて弱いものである。
●米国国立がん研究所の研究と対照的である。米国国立がん研究所の研究では50万人の男女を調査対象とし、アスパルテームを摂取しなかった人と比較して、アスパルテームを使用する人々の間で白血病およびリンパ腫のリスク増加は見られなかった。
●その他の要因が調査結果に影響を及ぼしている可能性がある。例えば、炭酸飲料中の他の成分を比較対照した実験が行われていない。
●この研究は疫学的だったので、原因と結果を関連づけることはできない。複数あるアスパルテームの所見のうち、いずれかのみが原因であった場合に確認することは不可能である。
●アスパルテーム摂取量は自己申告で、評価が不完全であり多くの制限がある。
●米国食品医薬品局(FDA)、EFSAと、世界中の規制当局が、既にその安全性を検討している。アスパルテームは、食品の中で最も徹底的に研究されたものの一つである。実際、200以上の研究において30年間テストされ、アスパルテームは安全と確認されている。

 これらの批判に対して、論文の共同執筆者で世界トップレベルの栄養学者かつ疫学者のウォルター・ウィレット博士は、「この知見は、アスパルテームとがんリスクに関する研究をさらに推し進めることを正当化するだけの十分な強さがあると思います」と述べています。

 アスパルテームの安全性に関する論争は、いつ、どのように決着がつくのでしょう。目が離せません。

↓↓↓当サイトを広く知っていただくため、ブログランキングに参加しました。応援クリックよろしくお願いします。

  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索