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果糖とブドウ糖、空腹感を抑えるのはどっち?

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「大西睦子の健康論文ピックアップ」、年明け最初は、昨年から注目している「糖」について。天然の糖類でも、その種類を正しく選ぶだけでダイエットにつながりそうな目からウロコのお話です。お正月太りで悩む人には朗報ですね。さっそく、大西医師からの報告をどうぞ!

大西睦子の健康論文ピックアップ23

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

あけましておめでとうございます!2013年も、ホットな健康情報をみなさんと共有していきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします!新年第1回目は、『The Journal of the American Medical Association』1月2日号に掲載されたイェール大学の研究、「果糖※1とブドウ糖※2を摂取した後の空腹感や満腹感の違い」についてご報告させていただきます。

まず、みなさんに質問です。果糖とブドウ糖の違いは何でしょうか?だいたいのイメージで「果糖は果物の糖で、ブドウ糖はグラニュー糖や上白糖のことです」と回答された方、残念ながら答えは「ノー」です。

果物には果糖だけではなく、ブドウ糖、二糖類※3、多糖類※4なども含まれています。また、グラニュー糖や上白糖の主成分であるショ糖は、果糖とブドウ糖が結合した二糖類です。果糖とブドウ糖はどちらも単糖類※5ですが、私たちの体への働きは両者で大きく異なります。

ブドウ糖を摂取すると、インスリン※6や血糖値※7を上昇させ、食欲を抑えるグルカゴン様ペプチド1 (glucagon-like peptide-1, GLP−1)※8の分泌が増加して、食欲を刺激するグレリン※9というホルモンの分泌を抑えます。ですから、ブドウ糖を摂取すると満足感を得て、それ以上は食べ物を欲しません。ところが果糖は、インスリン分泌の刺激が弱く、血糖値も直接的には上げません。さらに、GLP−1の分泌も増えず、グレリンの産生が抑制できません。結果、果糖を摂っても満腹感が得られず、また空腹感が減らず、まだ食べ物を欲したり食べ過ぎたりする可能性があると考えられるのです。

こうした食欲をコントロールしているのが、摂食中枢と満腹中枢が存在する脳の視床下部です。視床下部と、さらに脳内報酬系※10(線条体※11、眼窩前頭皮質※12、扁桃体※13や島皮質※14など)が連携して、空腹感や満腹感を調節しているのです。これまでにラットの実験で、果糖を脳に注入すると食べ物を探し始め、ブドウ糖を注入すると食べ物の摂取が減ることが証明されてきました。ところが、ブドウ糖と果糖を摂ったときになぜ摂食行動が違ってくるのか、私たちヒトの脳の各領域との関係が、完全には分かっていませんでした。今回、イェール大学の研究者たちは、新しい脳機能イメージング法(Functional magnetic resonance imaging;fMRI)※15を利用して、ブドウ糖と果糖の摂取後の脳の活性化の違いを調べました。

Page KA, Chan O, Arora J, Belfort-Deaguiar R, Dzuira J, Roehmholdt B, Cline GW, Naik S, Sinha R, Constable RT, Sherwin RS.
Effects of fructose vs glucose on regional cerebral blood flow in brain regions involved with appetite and reward pathways.
JAMA. 2013 Jan 2;309(1):63-70. doi: 10.1001/jama.2012.116975.

対象は、健康な成人ボランティア20人(平均年齢31歳)です。対象者は、チェリー味の果糖液かブドウ糖液(75g=300kcal)をそれぞれ別の日に飲み(先入観や思い込みを防ぐために、飲む順序も無作為に割り当てられています)、各糖液摂取の前後にfMRI 画像検査で視床下部の局所的な血流量の変化を測定しました。さらに、血糖やインスリン、レプチン、GLP−1、グレリンなどのホルモンの変化を調べるために、糖液を飲む前と、飲んだ後10分おきに65分後まで、血液検査を行いました。また、それぞれの糖液摂取後の空腹感、満足感について、研究者から対象者に対して質問が行われました。

その結果、視床下部の血流は、ブドウ糖の摂取後15分以内に減少したのに対し、果糖では減少が認められませんでした。しかも糖摂取65分後まで10分おきに調べたすべてのポイントにおいて、果糖に比べてブドウ糖は、視床下部の血流が減少したのです。これは、ブドウ糖の摂取後は食欲が減少したのに対して、果糖を摂取した後は食欲が減少しなかったことを意味します。

さらに、ブドウ糖の摂取後には、線条体や島皮質など、食欲や動機づけ、報酬系を制御する脳領域の活性化も減少しました。その一方、視床下部・線条体ネットワークの機能的な結合が増加し、満腹感は増加しました。ところが、果糖ではこのような反応は起こりませんでした。果糖ではブドウ糖に比べて摂取後の血糖、インスリンとGLP-1の増加が低く、満腹感は得られず空腹感は減らなかったのです。

今回の報告で、ブドウ糖摂取後は空腹感が減り、満足感を得たのに対して、果糖はブドウ糖に比べて、空腹感を減らすことができず、満腹感を得にくいということが明らかになりました。ただ、私たちは普段、果物や野菜などに含まれる自然な果糖と、加工食品や清涼飲料水に含まれる果糖、2種類の果糖を摂取しています。後者はたいてい、「異性化糖」※16(果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖など)という形で摂取することが多いのですが、以前もこちらで取り上げたように、大量の果糖を一気に摂取する心配があります(こちらこちらをご参照ください)。これに対し、果物や野菜に含まれる果糖は、食物繊維などの作用でゆっくり吸収されます。さらに、果物や野菜にはビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富に含まれていますので、私たちの健康にとってメリットがあります。

ですから結論としては、果物や野菜などの自然な果糖を適量摂取するのはお薦めできる一方、異性化糖入りの飲み物や加工食品の摂り過ぎには注意する必要がある、ということになります。そして何より、果糖よりもブドウ糖を適量摂るほうが、空腹感を減らしてくれてダイエットには有効ということですネ。

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