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コリン摂取が認知機能維持に役立つ

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 米国で、卵や肉などに豊富に含まれるコリンという物質と認知機能との関連を調べたところ、コリン摂取量が多いことは記憶機能維持に役立ち、過去に摂取したコリンの量が多いことは脳の白質病変を予防することが分かりました。

The relation of dietary choline to cognitive performance and white-matter hyperintensity in the Framingham Offspring Cohort1-4
Coreyann Poly, Joseph M Massaro, Sudha Seshadri, Philip A Wolf, Eunyoung Cho, Elizabeth Krall, Paul F Jacques, and Rhoda Au
Am J Clin Nutr. 2011 December; 94(6): 1584-1591.
Published online 2011 November 9. doi: 10.3945/ajcn.110.008938

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 全世界的なアルツハイマー病有病率は、2050年までに4倍になり、1億人を超えると予測されている。40%を超える症例はアルツハイマー病後期段階で、この認知障害のある集団においては日常生活動作の減退により介護者への重要な負担が生じる。先行する疫学的研究は、汎発性脳萎縮および白質病変の認知障害およびアルツハイマー病との強い関連を示してきている。アルツハイマー病発現の前段階として起きる認知障害は、主にコリン作動性欠損である、脳神経伝達系での変化に関係づけられてきている。これら形態変化の原因は、認知機能低下につながり認知症と関連あるのだが、よく分からないままである。

 コリンは、人体におけるいくつかの生物的機能に必要となる欠くことのできない栄養素である。神経伝達物質アセチルコリンの前駆物質であり、コリン作動性神経細胞の損失は、認知機能障害と関連がある。脳萎縮と白質病変も、認知機能障害およびアルツハイマー病との関連がある。

 脳機能においてコリンが果たす役割や加齢性認知障害に対して動物モデルで示されたコリンによる防御効果を考慮すると、食事からのコリン摂取が低いことが、他の食事因子とは独立して、神経心理学的検査の実行欠乏や脳構造に関連あるかもしれない。知る限りにおいては、認知障害のない人における食事からのコリン摂取、認知機能、脳形態の関係は調査されてきていない。

●方法

(1)対象者
 1999~2001年に、Framingham Offspring Study(*1)コホートの生存者たちは、認知力と脳画像診断に関する再調査研究に誘われた。研究への登録に同意した2,187人のうち、1,889人に神経心理学の組み合わせ検査と脳のMRI走査が実施された。さらに、分析対象となるためには、1991~1995年の第5回検査および1998~2001年の第7回検査において実施された食物摂取頻度調査票への記入が求められた。除外されたのは、認知症・脳卒中・多発性硬化症・他の神経症状がある69人、7回目検査時の食物摂取頻度調査票が完全に記入され信頼できるものとならなかった429人、神経心理学の組み合わせ検査と脳のMRI走査両方は受けなかった298人となった。食物摂取頻度調査票に記入し、神経心理学の組み合わせ検査を受け、脳のMRI走査を受けた対象者標本は、男性647人、女性744人、合計1,391人、年齢幅は36~83歳、平均年齢60.9歳±標準偏差9.29となった。

(2)食事からのコリン測定
 対象者は、食物摂取頻度調査票において、過去12カ月間に標準食物リストからそれぞれ特定の食物をどのくらい頻繁に摂取したか回答するように求められた。食物摂取頻度調査票への回答から栄養素データベースが導き出され、コリン提供化合物の構成が、遊離コリン・グリセロリン酸コリン・ホスホコリン・ホスファチジルコリン・スフィンゴミエリン
とされた。総コリン摂取量は、これら化合物の合計により算出された。

 エネルギー摂取量が、2.51MJ/日(600 kcal/日)未満の場合、女性で16.74 MJ/日(4000kcal /日)超、男性で17.57 MJ/日(4200kcal/日)超の場合、調査票の食品目が12以上空白の場合は除外された。エネルギー摂取量区分を満たし、空欄が12品目未満の場合は分析対象に含まれ、空欄の品目に関する摂取はないと見なされた。総コリン摂取量に大きく貢献する一般品目には、卵・肉・パン・乳製品が含まれていた。7回目検査における食事によるコリン摂取量を使い、同時発生的コリン摂取量・認知機能・脳形態の関連を、5回目検査におけるコリン摂取量を使い、間接的コリン摂取量の認知機能および脳形態に関する関連を調査した。

(3)神経心理学的検査
 数多くの試験を含むことから、領域特定因子識別のための固有値のような基準を用い、因子分析を実施した。以下の4因子を構成した。
1 言語記憶
2 視覚記憶
3 言語学習
4 実行機能

(4)脳のMRI測定
1 脳容積の頭蓋容積に対する割合である全脳容積(TCBV)を使用
2 白質病変容積(WMHV)が大きいか大きくないかにより二分した

(5)統計分析
 7回目検査で測定された神経心理学的因子、WMHV、TCBVと5回目および7回目検査で測定されたコリン摂取量との関係評価に焦点を当てた。多変量線形回帰モデルにおいて、コリン摂取量は自然対数変換数値を用いた。最初に、年齢と性別で補正された線形回帰モデルでそれぞれの神経心理学的因子と対数変換された食事からのコリン摂取量との関係を調べ、その後多変量補正線形回帰分析を実施した。認知機能・脳形態(および/または)体内でのコリンの代謝機能に影響を与える変数を用いた。具体的には、年齢・性別・教育水準・BMI・ホモシスチン濃度・アポリポ蛋白E・Framingham Stroke Risk Profile(10年間の脳卒中リスクを予測する心血管疾患危険因子のスコア)・総エネルギー摂取量・飽和脂肪摂取量・ビタミンB‐12摂取量、ビタミンB‐6摂取量とした。

 同様の多変量補正線形傾向をTCBVと対数変換されたWMHVのそれぞれと、対数変換された食事からのコリン摂取量四分位との間で分析した。二次分析として、同様の多変量補正線形回帰を個々の神経心理学的因子とコリン摂取量四分位との間で分析した。別の多変量ロジスティックモデルにおいて、WMHVの2変数(大きな白質病変容積があるかどうか)について、コリン摂取量四分位との傾向分析を実施した。

●結果
(1)神経心理学的因子とコリン摂取量
 年齢と性別で補正を加えたモデルにおいて、7回目検査時の食事からのコリン摂取量は、言語記憶・視覚記憶・言語学習と正方向に関連があり、コリンにおける1単位の変化ごとに神経心理学的因子が変化する平均は、言語記憶では0.55(信頼区間95% 0.25~0.85 P<0.01)、視覚記憶では0.35(信頼区間95% 0.05~0.64 P=0.02)、言語学習では0.51(信頼区間95% 0.21~0.80 P<0.01)となったが、実行機能においては関連が見られなかった(P=0.23)。多変量補正モデルにおいて、7回目検査時のコリン摂取量は言語記憶および視覚記憶とは有意な関係のままで、言語記憶が0.60(信頼区間95% 0.29~0.91 P<0.01)、視覚記憶が0.66(信頼区間95% 0.19~1.13 P<0.01)となったのに対し、言語学習(P=0.48)、実行機能(P=0.27)は関連が見られなかった。5回目検査時の間接的コリン摂取量と神経心理学的因子との間には、有意な関連は見られなかった。

 さらに、7回目検査時の神経心理学的因子と7回目検査時のコリン摂取量との関連を調査するため、多変量補正線形回帰分析により、コリン摂取量の四分位における個々の神経心理学的項目との傾向評価を実施した。より高いコリン摂取量は、即時想起においても遅延想起においても言語記憶と有意に正方向に関係があり、即時想起の四分位ごとの平均変化は0.28(信頼区間95% 0.05~0.51 p=0.02)、遅延想起は0.30(信頼区間95% 0.13~0.46 P<0.01)となった。視覚記憶に関しても即時想起・遅延想起ともに有意に正方向の関係があり、即時想起0.25(信頼区間95% 0.05~0.45 P=0.01)、遅延想起0.26(信頼区間95% 0.05~0.47 P=0.01)となった。

(2)脳のMRI走査
 全脳容積(TCBV)は、5回目検査時(P=0.82)、7回目検査時(P=0.32)のコリン摂取量と有意な関連は見られなかった。

 白質病変容積(WMHV)は、多変量補正モデルにおいて、5回目検査時のコリン摂取量と有意に負の方向に関係があった。コリン摂取量の四分位ごとの平均変化は、-0.05(信頼区間95% -0.10~-0.01 P=0.02)となったが、7回目検査時のコリン摂取量とはそのような有意な関係は見られなかった(P=0.29)。

 大きなWMHVと5回目検査時のコリン摂取量の高さとの間には、有意に負の関係が見られ、大きなWMHVに対する多変量補正オッズ比をコリン摂取量の最高四分位と最低四分位で比較すると、最低四分位を比較基準1とした場合に、最高四分位オッズ比は0.56(信頼区間95% 0.34~0.92 P=0.01)となった。他には、脳測定結果と5回目および7回目検査時コリン摂取量との間に有意な関係は見られなかった。

●考察

 本研究における主な結果は、より優れた記憶特性はより高い同時発生的コリン摂取量(7回目検査時)と関係があり、一方で間接的コリン摂取量(5回目検査時)は大きなWMHVと有意に負の関係にあることが、認知障害のない大規模地域密着型集団において示されたことである。

 言語記憶と視覚記憶はコリン摂取量と有意に正方向の関連があることが見られた。記憶障害は、アルツハイマー病の特徴的兆候であり、記憶に関連する神経経路の維持が、アルツハイマー病へとつながる脳における有害な形態変化を予防する鍵となるかもしれない。

 認知機能と脳容積を維持することは、アルツハイマー病リスク低下と関係がある。本研究の目的は、認知機能低下を予防するために変更可能な危険因子である食事因子を潜在的に見極め、認知症のリスク低下のための潜在的仕組みを確認することであった。コリンの食事からの適切な摂取が生涯を通じて認知機能改善に関係あるのかどうかを、そしてコリンが脳の健康維持に果たす役割を決定するためには、さらなる研究が必要となる。

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