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禁煙アルコール摂取なら肺がんリスクは上がらない

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 米国でのコホート研究で、アルコール摂取と肺がんリスクとの関連を調べたところ、適度なアルコール摂取と肺がんリスクとの間に有意な関連はないことが分かりました。

Alcohol Consumption and Risk of Lung Cancer: The Framingham Study
Djoussé L, Dorgan JF, Zhang Y, Schatzkin A, Hood M, D'Agostino RB, Copenhafer DL, Kreger BE, Ellison RC.
J Natl Cancer Inst. 2002 Dec 18;94(24):1877-82.
PMID:12488481

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

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●背景

 疫学研究は、アルコール摂取と肺がんリスクとの関連について相反する研究成果を報告してきている。ある前向き研究においては、男性喫煙者においては、アルコール摂取と肺がんとの間には関連がないということを見出した。初期のFramingham研究において、1950~1954年で実施した第2回目隔年検査からのアルコール摂取量情報を用いたところ、アルコールは胃がんのリスクを高めることとは関連があったが、他のタイプのがんとの関連はなかった。しかしながら、別の研究では、週に21杯以上摂取する男性群においてはアルコール摂取量が肺がんリスクを高めることと関連があった。いくつかの症例対照研究では、アルコール摂取は肺がんリスクを高めることと関連があると報告している。アルコール摂取と肺がんリスクとの関連を評価した研究間において相反する結果が出ているのは、いくつかの研究においては肺がんの大きな危険因子である喫煙による交絡因子が残っていることで部分的には説明されるかもしれない。アルコール摂取は、喫煙との関連があることは明確なので、肺がんリスクに対するアルコールの影響を評価する研究においては、喫煙による影響を取り除くことが重要である。さらに、アルコール摂取と肺がんの病理組織タイプとの関連については、ほとんど知られていない。本研究は、総アルコール摂取量と肺がんリスクとの関連を、Framingham研究に参加した男女において評価したものである。

●方法

(1)対象者
 Framingham Heart Study(オリジナルコホート)(*1)は第1回目検査時に、28~62歳までの5,209人が含まれていた。生存者は、2年に1回検査を受け続けた。1971年にオリジナルコホートの子どもと配偶者5,124人がFramingham Offspring Study(オフスプリングコホート)(*1)という前向きコホート研究に加わった。オフスプリングコホートの対象者は、第1回目の検査8年後に検査を受け、その後は4年に1回受け続けた。それぞれのクリニック訪問時に、二つの研究対象者は、詳細な病歴・医師による検診・血液パラメータ評価・心肺機能評価を含む一連の検査・非侵襲的心血管テスト・ラボテストを受けた。本研究には、オリジナルコホートからの4,265人、オフスプリングコホートからの4,973人が含まれた。

(2)肺がんの確認
 Framingham研究のクリニック訪問時の自己申告、Framinghamにある唯一の地方病院での入院監視、National Death Index(*2)検索により肺がんが識別された。肺がんの疑いがある場合は、病院や医院からの病理組織学的報告書が求められ、カルテとともに診断日とInternational Classification of Diseases for Oncology(国際疾病分類:腫瘍学)による分類決定のために検討された。病理組織学に基づいて、肺がんはさらに、扁平上皮癌、腺癌、それ以外のタイプという三つの主要グループに分けられた。何度も肺がんが発生した場合には、初回診断のみを分析対象とした。

(3)アルコール摂取量
 オリジナルコホートとオフスプリングコホート両方からアルコール摂取量に関する情報が繰り返し収集された。オリジナルコホートの第2回目と第7回目の検査では、2オンスのカクテル、8オンスグラスのビール、4オンスグラスのワインを1カ月にどのくらい摂取したかを尋ねられた。第12~15回目、第17~23回目のオリジナルコホート検査、および第1~6回目のオフスプリングコホート検査では、1.5オンスのカクテル、12オンスグラスまたは缶のビール、5オンスグラスのワインを1週間にどのくらい摂取したかが尋ねられた。総アルコール摂取量(g/日)は、ビール・ワイン・カクテルの平均アルコール含有量×摂取杯数で計算された。一般的に摂取されるアルコール飲料のアルコール含有量(100プルーフから80プルーフへ)とよく摂取されるワインのタイプ(強化ワインからテーブルワインへ)の経年変化、および平均的提供サイズの変化を考慮し、データが収集された時に合わせて総エタノール含有量計算のため、二つの変換式を用い計算した。

(4)他の変数
 喫煙に関する情報は、毎検査時に、医師によって実施されるアンケートにより収集された。喫煙するかどうかを尋ねられ、喫煙すると答えた場合は1日あたりの平均本数が記録され、喫煙していないと答えた場合は過去に喫煙したことがあるかどうかを尋ねられ、あると答えた場合は、過去に喫煙というグループに入れられた。パックイヤーは、1日あたりの平均本数÷20×喫煙年数で計算された。

(5)統計分析
 オリジナルコホート5,209人のうち、534人がパックイヤーデータ不備、50人が喫煙状況データ不備、360人がアルコール摂取量データ不備により除外され(総数944人)、オフスプリングコホート5,124人のうち、42人がパックイヤーデータ不備、109人がアルコール摂取量データ不備により除外された(総数151人)。分析は、コホートごとに実施され、オリジナルコホートとオフスプリングコホートにおける成果が同様であることを確認したうえで、統合した。

 アルコール摂取量は以下のように分類した(1杯は約12gのアルコール)。
1 0g/日(全く摂取なし)
2 0.1~12 g/日
3 12.1~24 g/日
4 24g超/日

●結果

 平均32.8年(17.0~48.2年)の追跡期間中、オリジナルコホートからは男性123人、女性71人、合計194人の肺がん症例患者が識別された。これらのうち、52が腺癌、56が扁平上皮癌、86は他の病理組織タイプだった。オフスプリングコホートからは、平均16.2年(0.8~24.6年)の追跡調査期間中、男性37人、女性38人、合計75人の肺がん症例患者が識別された。これらのうち、25が腺癌、21が扁平上皮癌、29が他のタイプだった。総計は269件の肺がん症例となった。

 オリジナルコホートの194人の肺がん症例患者は、対照群と比較して、ベースライン時により多くのタバコを吸い、より多くのアルコール摂取をしていた。また、男性、ヘビースモーカー、低教育レベルという傾向が強く、対照群よりも若干年齢が低かった。オリジナルコホート同様、オフスプリングコホートの症例患者も、対照群と比較して、より喫煙をし、より多くのアルコールを摂取し、より低い教育レベルであった。オリジナルコホートと異なったのは、症例患者の年齢が対照群よりも約5歳高かったことである。

 初回検査時のアルコール摂取量は、両コホートともに、全体としては軽度から中度であったが、摂取量と喫煙および男性との間に強くはっきりとした関連が見られた。アルコール摂取量と肺がんリスクが高まることとの間には、両コホートともに粗分析では関連があった。オリジナルコホートおよびオフスプリングコホートでの、粗分析によるアルコール摂取量と肺がんの関連は以下の通りであった。
オリジナルコホート
1 0g/日(全く摂取なし) 7.4/10,000人年
2 0.1~12 g/日     13.6/10,000人年
3 12.1~24 g/日     16.4/10,000人年
4 24g超/日       25.2/10,000人年

オフスプリングコホート
1 0g/日(全く摂取なし) 6.6/10,000人年
2 0.1~12 g/日      4.3/10,000人年
3 12.1~24 g/日      7.9/10,000人年
4 24g超/日       12.3/10,000人年

 しかしながら、年齢・性別・パックイヤー・喫煙状況・生年で補正を加えると、アルコール摂取量と肺がんリスクとの間には統計的に有意な関連は見られなくなった。オリジナルコホートおよびオフスプリングコホートでの、アルコール摂取量と肺がんの相対危険度は以下の通りであった。
オリジナルコホート
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      1.0(信頼区間 95% 0.5~2.1)
3 12.1~24 g/日      1.0(信頼区間 95% 0.5~2.3)
4 24g超/日        1.1(信頼区間 95% 0.5~2.3)

オフスプリングコホート
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      1.4(信頼区間 95% 0.5~3.6)
3 12.1~24 g/日      1.1(信頼区間 95% 0.3~3.6)
4 24g超/日       2.0(信頼区間 95% 0.7~5.7)
最大摂取群では、リスクは上がっているが、信頼区間が広いため関連が統計的に有意とはならなかった。

両コホートを統合しての相対危険度は以下の通りであった。
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      1.2(信頼区間 95% 0.7~2.1)
3 12.1~24 g/日      1.1(信頼区間 95% 0.6~2.1)
4 24g超/日       1.3(信頼区間 95% 0.7~2.4)

 アルコール摂取量と肺がんリスクとの関連が、病理組織タイプによって異なるのかどうかを調べたところ、粗分析においては、すべてのがん腫(腺癌・扁平上皮癌・その他)においてアルコール摂取量が多いことと肺がんリスクが高くなることの間には関連が見られたが、補正相対危険度は以下の通りであった。

腺癌
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      2.9(信頼区間 95% 0.8~10.9)
3 12.1~24 g/日      1.5(信頼区間 95% 0.3~8.1)
4 24g超/日       2.3(信頼区間 95% 0.5~10.5)

扁平上皮癌
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      0.4(信頼区間 95% 0.1~2.0)
3 12.1~24 g/日      0.4(信頼区間 95% 0.1~2.6)
4 24g超/日       0.3(信頼区間 95% 0.1~1.7)

その他
1 0g/日(全く摂取なし) 1.0(比較基準)
2 0.1~12 g/日      0.7(信頼区間 95% 0.2~2.3)
3 12.1~24 g/日      0.8(信頼区間 95% 0.2~2.9)
4 24g超/日       0.8(信頼区間 95% 0.2~2.7)

●考察

 本研究では、喫煙や他の主要な肺がん危険因子による交絡を制御するために厳重なる分類基準を用いた。アルコール摂取量に関しては、何回か情報収集がなされ、曝露評価に用いられた。また、前向きな研究設定、長期にわたる追跡調査、症例患者特定における完全性、対象者の幅広い年齢層というものも、本研究の強みである。

 本対象群では、89%が1日あたり3杯未満のアルコール摂取者であったことから、本研究結果は軽度から中度のアルコール摂取量との関連に限定され、大量にアルコール摂取をすることの肺がんリスクへの影響については評価できなかった。過去大量にアルコール摂取をしていた人が、初回のアルコール摂取評価時までに摂取をやめたり量を減らしたりしたことも考えられ、そういう人たちに対する摂取量を過小評価している可能性もある。結論としては、Framingham研究の対象者においては、軽度から中度のアルコール摂取と肺がんリスクとの間には、統計的に有意な関連はなかったということである。

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