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カフェイン抜きコーヒーは大腸がんのリスクを下げる

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カフェイン抜きのコーヒーを摂取すると、直腸がんのリスクが下がると分かったそうです。カフェイン入りの場合は、コーヒー・紅茶ともリスクを上げも下げもしませんでした。

Coffee, tea, and caffeine consumption and incidence of colon and rectal cancer.
Michels KB, Willett WC, Fuchs CS, Giovannucci E.
J Natl Cancer Inst. 2005 Feb 16;97(4):282-92.
PMID:15713963[PubMed - indexed for MEDLINE] PMCID:PMC1909914

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 数々の疫学的研究結果は、コーヒーの摂取が大腸がんリスクと関連があるのかどうかを解き明かしてはいない。コーヒーの摂取と大腸がんリスクに関するメタ解析でも、症例対照研究とコホート研究とで結果はまちまちであった。12の症例対照研究を統合したところ、コーヒーの摂取は大腸がんリスク低減と関連があった(高摂取群対低摂取群のオッズ比は0.72 信頼区間95% 0.61~0.84)。一方で、五つのコホート研究の統合結果では関連なしだった(相対危険度0.97 信頼区間95% 0.73~1.29)。

 コーヒーの成分は、遺伝毒性、変異原性、抗変異原性を有しているかもしれず、これらはいずれも大腸がんリスクに影響を及ぼすものである。例えば、カフェインは化学発がんやUVB光誘発性発がんを抑えると報告されている。逆に、カフェインには変異原性があることも分かっている。また、コーヒーは直腸S状部における大腸運動性を高め、腸内物と結腸上皮との接触を低下させ粘膜損傷を抑えるので、コーヒーの摂取は大腸がんリスクを低減すると推測される。また、コーヒーは胆汁酸とステロールの腸内への排泄を抑えるため、粘膜損傷予防につながる。さらには、カフェインはインスリン感受性を低下させると報告されており、高インスリン血症が結腸がんリスクを高めるとの仮説もある。もう一つのカフェイン飲料である紅茶は、抗酸化作用のあるフラボノイドによって抗腫瘍形成性を有しているとされている。

 本研究においては、Nurses' Health Study(NHS、*1)とHealth Professionals' Follow-up Study(HPFS、*2)対象者でのカフェイン入りコーヒー、カフェイン抜きコーヒー、カフェイン入り紅茶の摂取、総カフェイン摂取量と結腸がん、直腸がんとの関係を検証した。

●方法

(1)対象者
 本研究の分析対象者は、1980年にがん・クローン病・潰瘍性大腸炎にかかっておらず、同年の食物摂取頻度調査票に回答して、1日あたりのカロリー摂取量が500~3,500カロリーと報告したすべての女性(87,794人)と1986年にがんにかかっておらず、同年の食物摂取頻度調査票に回答して、1日あたりのカロリー摂取量が800~4,200カロリーと報告したすべての男性(46,099人)となった。

(2)症例確認および追跡調査
 それぞれのコホートにおいて2年に1度の各アンケートにより、過去2年間に結腸または直腸のがん診断を受けたかどうか尋ねた。死亡に関しては、主に家族を通じて報告がされた。さらに、National Death IndexとU.S. Postal Serviceを利用し、郵送アンケートに回答しなかった対象者中の死亡者特定を行った。

 対象者や近親者ががん診断を報告した際には、相当する医療記録や病理報告の入手に対する許可を求めた。すべてのアンケートデータを伏せたうえで、研究医が医療記録を調べ、そこから組織学的タイプ、解剖場所、がんのステージに関する情報を取り出した。浸潤腺がんのみを含めることとし、上皮内がん症例は考慮に入れなかった。この分析のために、対象者は1998年まで追跡調査を受けた。

(3)食事評価
 NHSでは1980、1984、1986、1990、1994年に、HPFSでは1986、1990、1994年に食事評価が行われた。NHSで1980年に使用された食品摂取頻度調査は61品目からなっており、カフェイン入りコーヒー(カップ何杯か)、カフェイン入り紅茶(カップ何杯か)、コーラなど他のカフェイン入りソーダ(グラス何杯か)、チョコレート(1オンス単位)の摂取量が含まれていた。1984年の調査ではカフェイン抜きコーヒー(カップ何杯か)が追加され、ソーダの単位がグラス・ビン・缶に、チョコレートの単位が板チョコ枚数・切れ数に改められた。1986、1990、1994年の調査は1984年実施のものと同様であった。HPFSでの1986、1990、1994年に行われた食品摂取頻度調査はNHS1984年版と同様であった。

 相互排他的九つの選択肢が頻度回答に用意された。
1 全く摂取しなかったか月に1回未満
2 月に1~3回
3 週に1回
4 週に2~4回
5 週に5~6回
6 日に1回
7 日に2~3回
8 日に4~5回
9 日に6回以上

 カフェイン摂取量については、次のように計算した。
1 コーヒー1杯        137mg
2 紅茶1杯           47mg
3 コーラ飲料1缶または1ビン 46mg
4 チョコレート1人前      7mg

(4)統計分析
 最も摂取量の少ない群を比較基準に設定した。
カフェイン入りコーヒー摂取に関しては1日あたりの量で次のように分類した。
1 摂取なし
2 1/2カップ
3 1カップ
4 2~3カップ
5 4~5カップ
6 5カップ超

 カフェイン抜きコーヒー摂取に関しては1日あたりの量で次のように分類した。
1 摂取なし
2 1/4カップ
3 1/2カップ
4 1~1.9カップ
5 2カップ以上

 紅茶の摂取に関しては1日あたりの量で次のように分類した。
1 摂取なし
2 1/4カップ
3 1/2カップ
4 1カップ
5 2カップ以上

 カフェイン摂取量に関しては、5群に分類した。

 大腸がんとコーヒー、紅茶、カフェインの蓄積平均摂取量との関係調査モデルを用意した。

 NHSでは次のように設定した。1980から1984年までの間での大腸がん診断分析には1980年の食事調査データを使用。1984から1986年までの間での分析には1980、1984年の食事調査データ。1986から1990年までの間での分析には1980、1984、1986年の食事調査データを使用。以降同様。

 同様にHPFSでは、次のように設定した。1986から1990年までの間での大腸がん診断分析には1986年の食事調査データを使用。1990から1994年までの間での分析には1986、1990年の食事調査データ。1994から1998年までの間での分析には1986、1990、1994年の食事調査データを使用。

 結腸がんと直腸がんは別々に分析し、新たな症例を追跡期間中の人年で除して算出した。回帰モデルは、年齢・家族における大腸がん歴・S状結腸鏡検査歴または大腸内視鏡検査歴・身長・BMI・中強度から強度での運動時間、定期的なアスピリン使用・喫煙パックイヤー・ビタミンサプリメントの使用、アルコール摂取、総カロリー摂取量・赤身肉摂取量で調整を加え、女性については閉経状態・閉経後ホルモン剤の使用も含めた。

●結果

 1980年から1994年の間で、NHSの女性は、徐々にカフェイン入りコーヒーの摂取量が減少し、また、コーヒーを飲まないという人の数も減少した。1980年では、22.5%がコーヒーを摂取しておらず、25.0%が1日あたり4杯以上のカフェイン入りコーヒーを摂取していたが、1994年では、摂取なしが13.2%、1日あたり4杯以上が14.2%となった。HPFSの男性においても同様の傾向があり、1986年では、29.9%がカフェイン入りコーヒーの摂取をせず、10.8%が1日4杯以上の摂取をしていたが、1994年では、22.3%が摂取なし、1日4杯以上摂取が8.8%となった。それゆえ、平均カフェイン摂取量も減少し、女性では1980年で1日あたり391mgが1994年には1日あたり242mgに、男性では1986年で1日あたり227mgが1994年には1日あたり221mgとなった。カフェイン抜きのコーヒーを摂取すると回答した対象者は年とともに増加しており、女性では1984年で49.3%が定期的にカフェイン抜きコーヒーを摂取していたものが、1994年には71.5%に、男性では1986年で48.8%だったものが1994年には62.5%となった。

 女性では、1,479,804人年の追跡調査期間中に結腸がん731件、直腸がん155件が、男性では、511,801人年の追跡調査期間中に結腸がん446件、直腸がん106件を記録した。

 どちらのコホートにおいても、カフェイン入りコーヒーの摂取、カフェイン入り紅茶の摂取、カフェインの摂取量については、結腸がんおよび直腸がんとの関連はなかった。両コホートを統合すると、カフェイン入りコーヒーの摂取量が1杯増えることと大腸がんとの関連は、共変数による調整ハザード比が0.99(信頼区間95% 0.96~1.03)となった。しかしながら、1日あたり2杯以上のカフェイン抜きコーヒーを摂取している対象者においては、全く摂取しない対象者と比較して、直腸がんの発症が52%低くなった(信頼区間95% 19%~71%)。

●考察

 カフェイン抜きのコーヒーの場合、カフェインのような潜在的に有害な成分を含んでおらず、コーヒーがホモシステインレベルを増やすという作用もなくなる。カフェイン入りでも抜きでも、コーヒーは直腸S状部の運動性を高め便秘を予防すると言われているが、NHSの女性においては、コーヒーの摂取量と腸の動きとはU型の関係となり、適度な摂取は便秘リスク軽減と関連あったが、摂取頻度が高いと脱水につながる可能性があるため、便秘リスクを高めることに関連していた。本研究においては、カフェイン抜きコーヒーの摂取と直腸がん発症とは負の相関にあったが、他の研究において確証を得る必要がある。

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