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認知症を知る11 家族にも役立つパーソン・センタード・ケア

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

91-1-1.jpg今回ご紹介するのは、施設での認知症介護の標準となりつつある考え方です。認知症の人の家族にとっても、大いに参考になると思われます。
監修/小阪憲司 メディカルケアコートクリニック院長

 タイトルになっているパーソン・センタード・ケア(以下PCCと略します)という理念は、イギリスの社会心理学者だったブラッドフォード大学のトム・キットウッド教授によって1990年代に提唱されました。

 当時のイギリスでは、認知症の人に対して、ケア提供者側が一方的に食事・排泄・清潔などのスケジュールを管理していました。介護側は熱心に取り組んでいましたが、認知症の人々が幸せに過ごせているとは言えない状況でした。

 治療という目的のある医療の現場ならスケジュール管理も必要でしょう。しかし、ケアの現場で一方的にスケジュール管理するのは、業務の効率性を上げるなど、提供側の都合以外に意味はありません。むしろ押し付けが認知症の人を混乱させ、BPSD(行動・心理症状)や状況を悪くさせているということに、キットウッド教授は気づいたのです。

 そして、その反省から生まれたのがPCCです。直訳すると「人を中心としたケア」となりますが、認知症という病気ではなく、尊厳を持ち一人ひとり異なる個人そのものに目を向け、その人がどのように感じ、何を求めているのか理解し、その人らしい暮らしを支えようするものです。

 言葉を換えると、症状のコントロールではなく、暮らしを支えるのを目的としたケアということになります。考え方自体は当たり前ですが、実現は意外と難しいもののようです。

掛け替えのない個人

 私たちの誰もが、自分は掛け替えのない個人として他者に受け入れられ、自らの人生を自分でコントロールしたいという基本的な心理的欲求を持っています。

91-1.1.jpg 認知症の人の場合、認知機能の障害によって、自らの人生をコントロールできるか不安を抱え、尊厳を持った個人として存在できるか不安を抱えるため、より根源的な欲求を持つようになります。これについてキットウッド教授は、5弁の花のような図を提唱しています(図参照)。これら欲求を満たし、心安らかに過ごしてもらうためには、他者による個別的な関わりが不可欠となります。

 ただし、そのスタート地点は、介護者側の都合や思い込みにあるのではなく、あくまでも認知症の人の側にあります。相手の人となりをよく知り、よく観察し、よくコミュニケーションを取り、自分がその立場だったらどうしてほしいかという想像力を働かせて敬意を持って行うケア、それがPCCなのです。マニュアルではありません。

認知症ケアマッピング  PCCを実践するための方法論として普及しつつあるのが、認知症ケアマッピング(DCM)です。トレーニングを受けた記録員(マッパー)が、ケアされる人の様子を5分おきに連続6時間、どんな時にどんな様子が見られるか記録します。簡単に言うと、嬉しそうな様子なら良く、不愉快そうだったり無感情だったりするのは良くありません。その記録をケアする職員と共に振り返って、隠れていたニーズの発見やケアの方法改善に役立てます。
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