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2型糖尿病患者の余暇身体活動は、総死亡率と脳卒中低下に関連

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 日本において、2型糖尿病患者での余暇身体活動が、冠動脈疾患・脳卒中・総死亡率とどのような関係にあるかを全国レベルで調べたところ、余暇身体活動量が高いほど総死亡率が低下すること、脳卒中リスク低下には関連あるものの、冠動脈疾患リスク低下に対する有意性はないという結果が出ました。


Leisure-time physical activity is a significant predictor of stroke and total mortality in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis from the Japan Diabetes Complications Study (JDCS)
Sone H, Tanaka S, Tanaka S, Suzuki S, Seino H, Hanyu O, Sato A, Toyonaga T, Okita K, Ishibashi S, Kodama S, Akanuma Y, Yamada N; on behalf of the Japan Diabetes Complications Study Group.
Diabetologia
DOI 10.1007/s00125-012-2810-z

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 本研究の目的は、日本人の糖尿病患者の全国的コホートにおける、余暇身体活動と心血管事故および総死亡率との関連を明らかにすることである。

 平均年齢が58.5歳で女性が47%を占める2型糖尿病適格患者1,702人を59機関から抽出し、中央値8.05年にわたる追跡調査を実施した。余暇身体活動や職業を含め、包括的な生活様式調査が標準的質問表を用いて実施された。アウトカムは、冠動脈心疾患(CHD)発生・脳卒中発生・総死亡率とした。比例ハザードモデルにより、信頼区間95%でのハザード比を算出した。

 年齢・性別・糖尿病期間で補正を加え、余暇身体活動の最低三分位群(3.7代謝当量=MET h/week以下)との比較において、最高三分位群(15.4MET h/week以上)の患者では有意にハザード比が減少し、脳卒中のハザード比0.55(信頼区間95% 0.32~0.94、P=0.03)、総死亡率のハザード比0.49(信頼区間95% 0.26~0.91、P=0.02)となったが、CHDのハザード比は0.77(信頼区間95% 0.48~1.25、P=0.29)と有意にはならなかった。脳卒中のハザード比は、食事や血清脂質を含む、生活様式ないしは臨床的変数での補正を加えた後では、境界域で有意または有意ではないという結果になった。余暇身体活動によって有意に低下される総死亡率は、これらの変数とは独立しており、少なくとも主として、心血管疾患の低下に帰するものではないようであった。

 2型糖尿病の日本人においては、余暇身体活動15.4MET h/week以上が、部分的に心血管危険因子の組み合わせを改善することを通じて、有意により低い脳卒中リスクとの関連があった。総死亡率が優位に低下することとも関連があったが、心血管危険因子や心血管事故とは独立していた。これらの結果は、欧米の糖尿病患者との違いを示しており、糖尿病を抱える東アジア地域の人々の臨床管理において検討されるべきである。

●背景

 2型糖尿病は、特に心血管疾患に関連する若年死亡率および罹患率の重大な原因である。定期的な運動が、糖尿病に関係するいくつかの変数管理改善を通して、糖尿病の合併症を予防するために推奨されてきている。すべてではないが、多くのコホート研究は、身体活動が総死亡率および心血管死亡率低下と前向きに関連あることを示してきている。4研究のみにおいてであっても、CHDと脳卒中という心血管事故が、糖尿病を有する人において、身体活動の増大に従って減少することも証明されてきている。しかしながら、それらの研究のうち二つのみが、心血管事故と死亡率を同時に分析し、死亡率に関して相反する結果を生み出した。さらに、それらの研究のうち三つのみが、CHDと脳卒中を別々に識別し、脳卒中に対する結果は相争うものとなった。それ故に、身体活動がその効果をどのように糖尿病患者における死亡率低下に及ぼすか、糖尿病の大血管性合併症が身体活動の増大に従って減じられるのかどうかは、依然として明らかではない。

 ほとんどの先行研究は、身体活動を、運動が定期的にされているかどうか、ないしはウォーキングに関してのみに対する自己申告回答のような、非数値的変数または二変数としてのみ評価してきた。特に、代謝当量(MET)単位で測定される、身体活動量に関する用量効果関係についてのデータは豊富ではない。この単位は、身体活動の定量化のために広く使用されており、リスク低減のために必要とされる運動量の境界点決定、異なる種類の運動に対する数値交換、糖尿病患者における合併症や死亡率に対して有用である。

 民族間での運動に対する回答は異なるため、運動に対する民族に依存した異なった調査手段が必要とされる一方で、ほんの少しの例外を除いて、これまでの先行コホート研究は欧米の糖尿病患者において実施されてきた。しかしながら、欧米の糖尿病患者からの結果が、糖尿病を有する東アジアの人々に対して、外挿法によって推測できるのかどうかは不明確である。日本人の2型糖尿病患者を長期間追跡調査したデータに関する本分析において、糖尿病の人に対する運動療法の重要な部分を占める余暇身体活動と、CHD・脳卒中・総死亡率リスクとの関連を分析した。

●方法

(1)対象者
 本分析は、Japan Diabetes Complications Study(JDCS=日本糖尿病合併症研究)(*1)の一部として実施された。2,033人の対象者中、研究プロトコルで事前に明記された除外基準を考慮のもと、男性940人(平均年齢57.8歳±標準偏差7.1歳)と女性831人(平均年齢58.7歳±標準偏差6.8歳)が、大血管性合併症分析に抽出された。除外基準は以下の通りである。
1 耐糖能障害
2 狭心症歴
3 心筋梗塞歴
4 脳卒中歴
5 末梢動脈疾患歴
6 家族性高コレステロール血症歴
7 Ⅲ型高脂血症歴(電気泳動法でのブロードβにより診断)
8 ネフローゼ症候群歴(1日あたりの尿蛋白が3.5g超で血清総蛋白が60g/L未満)
9 血清クレアチニン値が120μmol/L(1.3mg/dL)超

 身体活動に関する本分析には、ベースライン時での身体活動調査に回答した男性901人(平均年齢58.2±7.0歳)と女性801人(平均年齢58.9±6.8歳)、合計1,702人の患者データが使用された。2003年3月まで追跡調査データを分析した。

 糖尿病および耐糖能障害は、世界保健機関(WHO)の血糖しきい値とほぼ同一となる、日本糖尿病学会の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」に従って診断された。

(2)余暇身体活動の評価
 余暇身体活動は、Health Professionals' Follow-up Study(*2)において使用され確証されたものとほぼ同一となる自己記入式調査票により、ベースライン時に分析された。患者たちは、普通のウォーキング・早歩き・ジョギング・ゴルフ・テニス・スイミング・エアロビダンス・サイクリング・各患者によって明記されるその他雑多の運動に関して、週あたり何回かという平均的頻度と1回あたり何分かという平均的継続時間を尋ねられた。1回あたりの分単位による各運動に取り組んだ継続時間は、MET で表される各運動独自のエネルギー消費で乗じ、1週間あたりの運動量MET h/weekを出すために、すべての運動が加算された。

(3)他の生活様式変数
1 日本において確証され広く用いられている食事調査がベースライン時に実施された。食物記録と食物摂取頻度調査票から成り、アルコール摂取に関する質問も含まれていた。
2 自己記入式調査票を用いて喫煙に関する情報が収集され、現在喫煙・過去に喫煙・喫煙経験なしに3分類された。
3 自己記入式調査票によって職業が調査された。日本標準職業分類に基づくもので、国民健康・栄養調査にも用いられている。職業分類は以下の通りである。
(1) 専門的・技術的職業従事者
(2) 管理的職業従事者
(3) 事務従事者
(4) 販売従事者
(5) サービス職業従事者
(6) 保安職業従事者
(7) 農林漁業従事者
(8) 運輸・通信従事者
(9) 生産工程・労務作業者
(10)分類不能の職業
 (1)・(2)・(3)・(10)は座業として分類され、残りは身体的に活動的として定義された。

(4)臨床的および実験室的測定
患者たちは、ベースライン時評価後に毎年検査を受けた。HbA1c・空腹時血糖値・空腹時血清脂質に関して、少なくとも各年の2回の測定値平均が入手された。血清LDL-C値は、計算式によって算出されたが、トリアシルグリセロール値が4.52mmol/L(400mg/dL)を超えた場合には、LDL-C値は不明として処理した。体重・血圧・12誘導心電図を含む他のすべての測定が、少なくとも年に1回実施された。

(5)アウトカム測定
 狭心症または心筋梗塞としてのCHDの致命的兆候あるいは致命的ではない最初の兆候が、WHO/MONICA(*3)プロジェクトによって定義された基準に従い診断された。最初の経皮的冠動脈介入または冠動脈バイパス移植も、CHD事故があったものとして数に含まれた。各人に対しての主要アウトカムおよび他の臨床的変数に関する情報は、患者に対する診療を提供している各糖尿病専門医からの事故時の詳細所見を含めた年間報告によって収集された。エンドポイントの裁定は、余暇身体活動に関する情報を含めて、危険因子状況を伏せられた心臓学や糖尿病学専門家で構成される中央委員会によるもので、詳細な病歴・心電図の連続的変化・血清心臓バイオマーカー・冠動脈撮影結果に基づいた。生命状態や死因に関する情報は、年間報告書式を通じても入手され、死因は、国際疾病分類第9版(ICD-9)によって分類された。

(6)統計分析
 余暇身体活動の最低三分位群との比較における最高三分位群でのそれぞれのアウトカムに対する発生率のハザード比を、比例ハザードモデルにおいて推定するとともに、余暇身体活動とCHDまたは脳卒中との関連分析における非心血管死亡率の影響を説明することになる競合リスク回帰(*4)によっても推定した。分析モデルの交絡因子として、年齢・性別・糖尿病期間・喫煙・エネルギー/エタノール摂取量・職業(身体的に活動的/座職)・BMI・収縮期血圧・HbA1c値・LDL-C値・HDL-C値・トリアシルグリセロール値を含めた。

 三分位群による各アウトカムに対する生存曲線は、Kaplan-Meier法により推定した。

●結果

 追跡調査期間中央値8.05年の間に、1,000患者年あたりの粗発生率は、CHDが9.56(信頼区間95% 7.95~11.48、11,928人年中114件)、脳卒中が7.40(信頼区間95% 6.01~9.11、12,022人年中89件)、死亡が5.60(信頼区間95% 4.42~7.09、12,314人年中69件)となった。

 死因に関しては、がんが36件で52.2%、心血管死および突然死が16件で23.2%、他の既知の死因によるものが12件で17.4%、特定できない死因によるものが5件で7.2%であった。

 余暇身体活動の三分位は以下のように分類した。
1 最低三分位群 3.7MET h/week以下、平均は1MET h/week未満
2 中間三分位群 3.8~15.3MET h/week、平均はほぼ10MET h/week
3 最高三分位群 15.4MET h/week以上、平均は中間三分位群の約4倍
 三分位群間において、年齢差はわずかなものであり、性別・血圧・LDL-C値・薬物治療・エネルギー摂取量に関する有意傾向は存在しなかった。肥満と糖血症に関しては群間での有意な負の傾向、トリアシルグリセロール値に関しては境界域で有意な負の傾向が見られた一方で、HDL-C値では有意に正の傾向が見られた。より低い余暇身体活動三分位群との比較において、より高い三分位群では、座職に就いている人・適度なエタノール摂取をしている人の割合がより高くなっており、喫煙率はより低くなっていた。

 余暇身体活動三分位によるCHD・脳卒中・総死亡率に対するハザード比は、以下のような多変量比例ハザードモデルによって決定した。
1 モデル1 年齢・性別・糖尿病期間で補正
2 モデル2 モデル1+喫煙・職業・アルコール摂取量・エネルギー摂取量・飽和脂肪酸摂取量・食物繊維摂取量に関する生活様式因子で補正
3 モデル3 モデル2+BMI・収縮期血圧・HbA1c値・血清脂質値での臨床的変数で補正
4 モデル4 モデル3+糖血症薬・高血圧症薬・脂質異常症薬による薬物治療で補正
 これらの補正は、余暇身体活動以外の生活様式因子が結果を混乱させるのかどうか、既知の心血管危険因子の改善によって運動がその効果を及ぼすのかどうかを明確にするために実施された。

 余暇身体活動の増大に伴ってより低いCHDハザード比となる傾向があったが、統計的に有意とはならなかった。対照的に、脳卒中と総死亡率のリスクにおいては有意な低下が見られ、最高三分位群でのハザード比は、脳卒中および総死亡率ともに、最低三分位群の約半分となった。総死亡率における有意性は、生活様式因子、臨床的変数、薬物治療による補正によって影響を受けることはなかった。最高三分位群での脳卒中リスクは、モデル1では有意であったが、モデル2でのハザード比は境界域で有意となり、それでもP=0.0495と有意性は保たれた。しかしながら、モデル3においては、P=0.1となり、有意性は存在しなくなった。一方で、余暇身体活動とCHDまたは脳卒中との関連評価において死亡症例の影響を除外するための競合リスクモデルでも、分析結果は基本的に変わることがなかった。

 Kaplan-Meier生命表分析で決定される余暇身体活動三分位群によるそれぞれのアウトカムにおける可能性では、最高三分位群において、脳卒中と総死亡率の一貫してより低いリスクが見られた。

 下位群での分析では、以下のようなことが分かった。
1 脳卒中に対するハザード比は、男性または非喫煙者において、余暇身体活動最低三分位群よりも最高三分位群の属する者が有意に低くなった。
2 総死亡率に対するハザード比は、60歳以上、非喫煙者、座職者、BMI25kg/m²未満の非肥満者、収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧80mmHg以上または高血圧薬物治療を受けている高血圧者、LDL-C値3.10mmol/L(120mg/dL)未満・トリアシルグリセロール値1.69mmol/L(150mg/dL)未満・HDL-C値1.03mmol/L(40mg/dL)以上で脂質異常症薬物治療を受けていない非脂質異常症の者において、余暇身体活動最低三分位群よりも最高三分位群の属する者がより低くなった。
 しかしながら、これらの因子間における有意な相互作用は存在せず、アウトカムに対しての余暇身体活動効果に関する不均質の明らかなエビデンスは不足していることを示している。

●考察

 本コホートにおいては、余暇身体活動の三分位にわたってCHDのハザード比低下に対しては弱い傾向となり、統計的に有意ではなかったが、CHDと余暇身体活動との関係は、より長期の観察を伴えば有意となるであろう。2型糖尿病患者での身体活動による脳卒中予防に対する生物学的な仕組みは部分的にしか理解されておらず、運動が、CHDリスクよりも脳卒中リスクにより強い影響を与える、生活の質ないしは他の健康的行動のような未確定の心血管危険因子を改善する可能性は存在している。この可能性については、将来調査されるべきである。

 余暇身体活動による脳卒中での有意なリスク低下は、生活様式因子や臨床的変数での段階的補正により弱められ、このことは、含まれている要素のいくつかが関連を混乱させたことを示しているが、これらの補正が余暇身体活動の有益効果を危うくするものではなかった。しかしながら、これらの結果は、関連の背後にある仕組みを理解するうえで役に立つ可能性がある。

 すべての生活様式因子で同時に補正する代わりに個々の因子で補正をすると、エネルギー摂取量・飽和脂肪摂取量・食物繊維摂取量での食事因子が、他の因子との比較で比較的大きな影響を有しており、より多く運動する人は食事の量や内容にもより多く気を配る傾向にあることを示している。一方で、すべての臨床的変数で同時に補正する代わりに個々の因子で補正をすると、他の臨床的変数よりもトリアシルグリセロール値とLDL-Cがより大きな影響を有することが示され、余暇身体活動は、部分的には血清脂質を改善することを通じて、脳卒中リスク低下に対する効果を及ぼすかもしれないことを表している。統計的に有意とはならなかったものの、年齢・性別・糖尿病期間のみで補正を加えた場合との比較において、すべての交絡因子で補正を加えた場合の脳卒中に対するハザード比と有意性が、劇的に変化することはなかったのである。このことは、身体活動と関連する過小評価された危険因子が存在するはずであることを示している。脳卒中と総死亡率リスクの下位群分析結果によっても部分的に支持されるもので、より高い余暇身体活動は、典型的な心血管危険因子を抱える人においては、必ずしもより低いリスクには関連しないことを示したのである。

 日本人の2型糖尿病患者から成る本研究コホートにおいては、15.4MET h/week以上の余暇身体活動が、少なくとも部分的に既知の心血管危険因子を改善することを通じて、有意により低い脳卒中リスクとの関連があった。より高い余暇身体活動は、有意に総死亡率を下げることとも関連があったが、心血管危険因子または心血管事故とは独立したものであった。これらの研究結果は、欧米の糖尿病者とは異なることを意味するもので、糖尿病を抱える東アジア地域の人々の臨床管理において考慮されるべきである。

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