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ごく少量でも取るべき"ミネラル"の凄い力

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 近年は9月になっても残暑が厳しく、熱中症対策が必要です。汗をたくさんかく時に水分補給する大切さは皆さんもご存じと思いますが、水やスポーツドリンクだけ飲んでいるとミネラルが足りなくなって、頭痛や吐き気、食欲不振などが起き、場合によっては、死に至ることもあるのはご存じでしょうか。運動関連低ナトリウム血症(EAH)と呼ばれる状態です。スポーツドリンクにも、ナトリウムは含まれますが、それでもやはり水分量が多過ぎて、血液が薄まってしまうのです。わずかな量で、人の命をもコントロールする"ミネラル"の力、ご紹介します。

元看護師ライター 葛西みゆき

脳卒中の予防にミネラル摂取が有効!?

 米国栄養学会が発行する専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション」のオンライン版で、2015年5月6日に米国ハーバード大学とブリガム・アンド・ウィメンズ病院を中心とした研究チームが"ミネラルに脳卒中を防ぐ効果がある"という研究結果を発表しました。

 研究チームは、米国で看護師18万人以上のデータを元に、3つのミネラル(マグネシウム、カリウム、カルシウム)の摂取量により5つのグループに分け、脳卒中との関連について調べました。

 すると、22~30年の追跡調査の期間中、3780人が脳卒中を発症。それぞれのグループを比較してみると、次のようなことが分かりました。
・マグネシウムの摂取量が最も多かったグループは、最も少なかったグループよりも、発症リスクが13%低かった
・カリウム摂取が最も多いグループでは11%、カルシウムが最も多かったグループでは3%、脳卒中の発症リスクが低かった
・3種類全部の摂取量が最も多いグループは、最も少なかったグループよりも、脳卒中全体の発症リスクが28%低かった

 この研究結果からは、特にマグネシウムとカリウムの摂取量が多くなるほど、脳卒中のリスクを下げることが実証されたといえます。

 さらにデータを分析すると、マグネシウムとカリウムの摂取量が1日100mg増える度に脳卒中のリスクはそれぞれ17%と9%低下し、カルシウム摂取量が1日300mg増加する度に2%低下していました。

ミネラル不足は、死亡率と関係する!?

 スウェーデン、リンショーピング大学のアーバン・アレハーゲン氏らの研究チームが、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション誌で2015年6月24日に公表した研究結果によると、スウェーデン人は"セレン"の摂取量が少ないことが、問題のようです。セレンは、ウニやしらす干し、カツオなどの魚介類や、鶏卵・鶏肉・豚肉などに多く含まれます。日本人が好む食材ですが、スウェーデンではあまり受け入れられないのでしょうか。

 研究チームは、スウェーデンの高齢者668人を対象に、体内のセレン値を検査して、セレン値の状態と死亡率との関係性について調査しました。6.8年間の追跡調査を行い、4年後に98人のセレン値の変化を調べました。

 スウェーデンでは、10年ほど前から"セレンの摂取を促す"啓蒙活動を行っているそうですが、少なくともこの研究に参加した人たちは、平均的なセレンの摂取量が少ないままだったそうです。さらに詳しく調べると、男性、喫煙者、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、虚血性心疾患、心臓機能障害などの要因で検討した結果、セレン値が低かった上位4分の1グループは、下位4分の1グループより全死因での死亡率が43%、心臓や血管の疾患でも56%高かったことが分かりました。

 また、2015年3月には、がん専門の国際誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー誌」で、アイルランド王立外科医学院のデビッド・ヒューズ氏らの研究チームが、"セレン不足は大腸がんのリスクを高める"という研究を発表しました。この研究では、セレンとセレンを含むタンパク質の血中濃度を測定し、大腸がんとの関係を調べました。すると、セレンの血中濃度が高い人ほど、結腸がん・直腸がんのリスクが8%程度低い傾向があったそうです。特に女性ではその傾向が高く、セレンの血中濃度が高いほど結腸がん・直腸がんのリスクは低くなり、17%も低くなる人たちもいたそうです。

日本は"ミネラルを大事にする"文化?

 さて、日本救急医学会が公表している"熱中症ガイドライン2015"では、熱中症の予防に"みそ汁"や"梅こぶ茶"が良いと書かれています。その理由は"ミネラルの補給に役立つ"から。みそ汁や梅こぶ茶はミネラル、特にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったものを多く含んでおり、微量ながらセレンも含んでいます。熱中症予防だけではなく、脳卒中や大腸がんなどの病気を予防する効果も、少しはあるのかもしれません。

 ここ数年、9月以降でも"猛烈な残暑"という言葉を耳にします。急な気温の変化などに注意し、意識してミネラルをとるように、心がけましょう。

参考資料

熱中症ガイドライン2015

マグネシウム、カリウム、カルシウムの摂取量と脳卒中リスクとの関連

欧州における癌と栄養コホートの結果は、大腸がんリスクと関連している

アスリートは潜在的に致命的な水分過剰に陥りやすい

食品成分表の結果(みそとセレン)

国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報 セレン解説


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