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睡眠のリテラシー33

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

テレビドラマの主人公をどのような職業にするかは、そのドラマが当たるかどうかを決める第一の条件かもしれません。なかでも、主役が医師、弁護士、教師、そして刑事(警察官)のものは、いつの時代も記憶に残るドラマがたくさんあります。印象に残っているタイトルを挙げてもらえば、その方の年代がおおよそ分かりますし、どういうわけか、その場もとても盛り上がります。

 刑事ものと言えば、今でもそうでしょうけれども、張り込みのシーンが必ずありました。しかも、その多くは夜の設定であったように思います。車の中に先輩と後輩が身を潜め、あんぱんと牛乳瓶を片手に、容疑者の動きをうかがっている。あるいは、怪しい人物の帰宅を物陰より見張っていて、その足下には吸い殻がたくさん落ちている。このような夜の捜査は、かなり眠いものであったはずです。にもかかわらず、ウトウトしている刑事の姿は描かれなかったような気がします。

 事件は何時に起きるか、全く分かりません。そのため、他の業種の夜勤者と同じように、警察官も「夜」との闘いがあります。その上、一般市民や関係のない方々に一切危害を加えることなく、容疑者を確保しなければならないという特殊な任務があります。

 時々刻々と変化する夜の現場で、絶えず適切な判断と行動をとるのは並大抵のことではありません。まして、容疑者が武装していると、警察官の身にも危険が生じます。

 張り込みではなく、逃走する容疑者をパトカーで追跡しなければならないこともあります。これが夜であれば、夜間運転業務と言えるでしょう。ただ貨物を運ぶトラックなどとは違って、スピードを上げて逃げる容疑者の車を同じく高速で追いかけるのは、ある意味、とても危険な運転にならざるを得ません。

 警察署の中での仕事として、取り調べがあります。限られた時間で重要な情報を集めるには、頭がハッキリしていなければなりません。容疑者の中には当然ながらウソをついたり、あわよくば警察署から逃げようとする者もいます。実際、日頃の疲れが出てしまい、ちょっとうつらうつらした間に、容疑者に取調室から逃げられてしまったという事件がないわけではありません。

 警察官はきちんと訓練を受けているとはいえ、日々の厳しい勤務や夜勤ゆえ、睡眠がうまくとれないことも多々あります。それに伴う問題は彼ら自身の健康と安全だけではなく、周辺住民や他の関係者の生活にも関わります。米国では、このような点を重視して、警察官や睡眠研究者が協力して、調査研究を進めています。ある調査によれば、警察官の40%以上に睡眠に関わる何らかの病気が認められています。

 真夜中に「ウーー、ファンファンファン」いうサイレンで目が覚めてしまうこともたまにありますが、睡魔に負けずに頑張っている警察官を思うと、ぜひ無事一件落着をという気持ちになります。

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