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睡眠のリテラシー32

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 睡眠は毎晩とるものです。もちろん、夜勤などであれば、昼間に眠らなければならない時もあります。ですが、ほとんどの人は1日に少なくとも1回は布団に入ります。

 日々の眠りがどのようであるかについて、普段はあまり気にしません。気にし過ぎるとかえって寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするので、案配は難しいところです。ただ、確実に言えるのは、睡眠の良し悪しはその後の起きている時に必ず影響を与えるということです。

 第20回で、徹夜の後では普通に睡眠をとった後と比べて、私たちの脳は不快な感情をより強く感じるようになることをご紹介しました。その後、徹夜より日常的な状況--短い睡眠が数日間続く状況--であっても、やはり不快な感情が脳の中で「誇張」されてしまうことが、我が国の研究から明らかになりました。

 実験の参加者(20~32歳の男性)は睡眠充分条件として、8時間の睡眠を5日間にわたってとります。一方、短時間睡眠条件では4時間の睡眠を同じく5日間続けます。両条件とも5日目の昼間に、色々な表情の映っている顔写真を見ます。その時の脳の状態を検査したところ、恐怖におののくような顔の写真を見た時だけ、条件の差が現れました。

 短時間睡眠条件では睡眠充分条件より、感情を司る脳の部位が興奮していました。しかも、興奮を和らげる働きも弱まっていました。見ている写真に違いはないのに、睡眠が慢性的に短いと、そこに映るネガティブな感情を必要以上に強く受け止めてしまうと言えます。

 皆さんご経験のように、日々の生活では嬉しくて楽しいことよりも、悲しくてつらい出来事のほうがどうしても多くなります。どちらの出来事も恐らく自分の成長につながるはずなので、どちらにもしっかり対応することが望まれます。

 実際には、イヤな事態への対応の方がはるかに難しいでしょう。例えば、仲の良くない同僚と一緒に同じ仕事をしなければならない、苦手なお客さんに新商品を分かりやすく説明しなければならない、失礼なことばかりを言う親戚と次の会合で会わなければならないなど、想像しただけで逃げたくなります。しかし、このような場面でしくじってしまうと、自分の成長どころか、取り返しのつかない結末になることもあります。

 その心(脳)の準備として、しっかり眠っておくことがあるのかもしれません。苦難をうまく乗り越えれば、自分も相手も楽になるはずです。

 今回ご紹介した実験について、もう少し知りたいことがあります。例えば、5日間の何日目から、脳の中で「誇張」が始まるのでしょう。もしそれが分かれば、その日を超えないうちに睡眠を確保できるようになるかもしれません。また、若年者と比べて、中高年の人では何か別の特徴があるでしょうか。働く世代として、とても興味があります。

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