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睡眠のリテラシー31

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 快適に働きたいというのはみんなの願いです。より多くの人にこの願いが叶えば良いのですが、現実はなかなかそうなりません。職場には悩みの種がたくさんあります。その中でも一番大きな種と言えば、やはり上司ではないでしょうか。

 もう一つの悩みの種は家庭かもしれません。「仕事と家庭の調和」が今のキーワードであるのも、その証拠のように見えます。仕事が忙し過ぎると家庭を顧みられないため、配偶者がイライラしたり、子供が寂しく感じたりします。そうなると、働き手自身もストレスがたまります。これでは何のために家族と暮らしているか、分からなくなります。また、これからは親の介護も家庭にとってますます大きな問題になっていくでしょう。

 かねてより、仕事のストレスを和らげるには上司からの支援が不可欠と言われてきました。最近は、仕事と家庭のバランスを保つのも上司の振る舞い次第であることが分かってきています。興味深いのは、仕事と家庭のバランスに関して、上司がどう考え行動するかが部下の睡眠や健康にも関連するということです。

 米国の調査で、仕事と家庭のバランスをどのようにとらえているかについて上司にインタビューしました。そして、部下の家庭の状況に応じて勤務時間を調整する、仕事と家庭のバランスに関する職場の方針を適宜見直すなどを積極的に行っているほど、「仕事と家庭の調和」に理解があるとみなしました。

 この理解の程度を高い、中間、低いの三群に分け、それぞれの上司の下で働いている部下の睡眠や健康を調べました。その結果、仕事と家庭のバランスに理解の高い上司を持つ労働者に比べて、低い上司を持つ労働者は睡眠が30分ほど短くなっていました。さらに、心臓病につながるような行動や不健康な状態(喫煙、肥満、高血圧など)も約2倍多いことが分かりました。

 自分の望む上司の下で働くことは普通は無理です。配属された部署の上司がたまたま仕事と家庭のバランスに理解があれば嬉しいのですが、さもなければ不運を嘆く他ありません。この場合、部下が自身の努力でもって睡眠や健康に気をつけることはできます。であっても、上司の影響力はたいてい強く、結局は上司のあり方が生産性だけでなく、部下の睡眠や健康にまで左右しがちになります。

 もしそうであれば、上司あるいはその候補の人々には、仕事の進め方と共に、部下の仕事と家庭のバランスも上手に扱えるような教育や訓練が必要になります。しかし、実際にはそうした教育や訓練をほとんど受けないまま昇進したり、仮に受けたとしても、上司自身も仕事の成果を厳しく評価されるため、部下を慮れないことも少なくないようです。

 会社から見れば、上司とて従業員の1人です。とすれば、職位に関わらず、仕事も家庭も、そして睡眠も幸せになるような対策は一考の価値があると思われます。

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