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カルシウムのサプリメント、かえって体に悪い!?

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骨粗しょう症の予防や治療のために、多くの人が利用しているカルシウムサプリメント。しかし実は健康を害するリスクがあること、ご存知ですか? このほど、食事由来のカルシウムは心臓の血管(冠動脈)が石灰化するリスクを下げ、逆に、カルシウムサプリメントはリスクを高めるという研究結果が発表されました。

大西睦子の健康論文ピックアップ 120 【最終回】

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートと編集は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

サプリと食事由来で真逆の結果

冠動脈は、心臓に酸素を豊富に含んだ血液を供給する血管で、それがリン酸カルシウムによって骨のように硬くもろく変質してしまう現象が、「冠動脈石灰化」です。冠動脈石灰化スコアは、冠動脈に沈着したカルシウムの量を、低放射線量CT検査によって数値化したもので、アテローム性動脈硬化(動脈の内側に粥状の隆起が発生)のマーカーとして利用され、心血管病のリスクを簡便に予測する指標となります。つまりスコアが高いほど、心血管病の発症リスクは高くなります。

ただ、これまでカルシウム摂取量と冠動脈石灰化スコアの関係はほとんど知られていませんでした。そこで今回、ジョンズ•ホプキンス大学の研究者たちは、食事とサプリメントからのカルシウム摂取量と、冠動脈石灰化スコアの関係を調査し、2016年10月10日付の米国心臓協会誌に報告しました。

John J.B. Anderson, et al.
Calcium Intake From Diet and Supplements and the Risk of Coronary Artery Calcification and its Progression Among Older Adults: 10‐Year Follow‐up of the Multi‐Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA).
J Am Heart Assoc. 2016; 5: e003815
originally published October 11, 2016
doi: 10.1161/JAHA.116.003815

研究の対象者2742人は、米政府の支援するMESA研究(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis:アテローム性動脈硬化症の多民族研究)という疫学研究に参加した6814人から絞り込まれました。MESA研究の参加者は、年齢が45〜84歳(平均59.7歳)、男性49%に女性51%、人種は白人40.5%、黒人25.6%、ヒスパニック21.7%、中国人12.3%です。そのうち、食事アンケートを提出し、カルシウム摂取過剰でなく、カルシウム排泄に関わる腎機能も正常、エネルギー摂取量が適切で、さらに調査開始時と10年後にCTスキャンを実施した人が分析の対象となりました。

食事アンケートでは120項目からなる食物摂取頻度調査票を使い、食事アンケートが行われました。対象者のカルシウム摂取量は、乳製品や緑色野菜、ナッツ類、魚など、カルシウムが豊富な食品と、サプリメントの摂取量から解析されました。また、心臓CTスキャンでは、冠動脈石灰化スコアが測定されました。調査開始時の冠動脈石灰化スコアは、1567人は「石灰化なし」でしたが、1175人は「石灰化あり」でした。

研究者はまず、サプリメントと食事由来の両方を含む総カルシウム摂取量に基づいて、対象者を5つのグループに分割しました。カルシウム摂取量は、性別や人種、教育、収入、身体活動、現在の喫煙、血圧、コレステロール、糖尿病、腎機能などによってバラつきが出ましたが、やはり、摂取量の上位グループでは、サプリメントの使用が大きく摂取量に影響していました。

次に研究者らは、年齢、性別、人種、身体活動、喫煙、収入、教育などでデータを調整しました。すると、調査開始時に冠動脈石灰化が見られなかった対象者で、カルシウムを1日1453mg以上摂取している人は、カルシウムの摂取量が434mg未満の人に比べて、冠動脈石灰化リスクが27%低くなりました。この結果はカルシウムの心臓保護作用を示唆するようにも見えますが、この解析では、カルシウムの摂取源として食事もサプリメントも含まれます。

そこで研究者は、さらに一歩踏み込んで、カルシウムの摂取法による違いを解析しました。総カルシウム摂取量の多いグループほど、カルシウムのサプリメントの利用者も多く、最も多く摂取しているグループ(1022㎎以上)では約75%が、次に多いグループ(680.9-1022㎎)では約60%が利用していました。カルシウムサプリメントを利用している対象者は、利用していない対象者に比べて、10年間で冠動脈石灰化スコアが22%上昇しました。一方、1日1022mg以上のカルシウムを食事から摂取している対象者は、10年間に心臓病を発症するリスクは高まりませんでした。最も冠動脈石灰化リスクが高いのは、総カルシウム摂取量が最も少ないグループのサプリメント利用者で、最もリスクが低いのが、総カルシウム摂取量の最も多いグループのサプリメント非利用者でした。

つまり、カルシウムが豊富な食事は心臓を保護し、逆に、カルシウムサプリメントは心臓血管系疾患のリスクを高めることになります。


サプリで一気に摂取するリスク

実は、これまでにもカルシウムのサプリメントの問題は指摘されてきていました。食事から摂取するカルシウムとは異なり、サプリメントは、カルシウムを一気に摂取することになります。余分なカルシウムは、体にとってどんな作用をするのでしょうか?

カルシウムサプリメントの摂取により、心血管病のリスクが高まります。2011年、ニュージーランドのオークランド大学の研究者たちが、ランダム化対照試験の結果、警告しています。2013年のスウェーデンのウプサラ大学の研究者たちの報告によると、1日1400mg以上のカルシウムの大量摂取は、心血管疾患を含む全ての原因による死亡率の増加に関与しています。ただし、今回の研究同様、カルシウム摂取による心血管疾患のリスクは、摂取の方法によっても違い、食事からカルシウムを摂取しても心血管疾患のリスクは高まらない一方、サプリメントは、心筋梗塞のリスクを高めることが報告されています。


また、正常な腎機能の成人では、サプリメント摂取後に、尿中のカルシウム排泄量が増えます。ネブラスカ大学医療センターのギャラガー博士たちの報告によると、カルシウムサプリメントを服用している女性の9%に高カルシウム血症、31%に高カルシウム尿症が見られます。カルシウムサプリメントは腎結石のリスクを高め、他方、食事からのカルシウムの摂取は、そのリスクを減らすことも報告されています。



そのサプリ、本当に必要?

米国立衛生研究所によると、アメリカの成人男女約43%が、カルシウムを含むサプリメントを摂取しています。日本でも、カルシウムサプリメントの利用状況は分かりませんが、2012年に内閣府が実施した健康食品(サプリメント含む)の利用に関するアンケート調査では、約6割の消費者が健康食品を現在利用しており、約4分の1がほぼ毎日利用、また、50 代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用している、と回答しています。このような状況において、今回の報告は重要な警告になると思います。

以前のコラムで、カルシウムと老化にまつわる話をご紹介しました。何と言っても、日々のバランスのよい食事が、ヘルシーなカルシウム摂取の鍵です。一方、カルシウムサプリメントについては、意図しない健康への害を避けるため、自己判断で使用する前に、本当に摂取する必要があるかどうか、信頼のできる医師に相談してくださいね。使っている人も同様に、今からでも必要性を見直しましょう。
http://robust-health.jp/article/cat29/mohnishi/000375.php

さて、「大西睦子の健康論文ピックアップ」ですが、今回120号で最終回となります。長い間お付き合いして下さって、本当にありがとうございました。

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