全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

高脂肪・高ショ糖食 認知機能に悪影響

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

大西睦子

ハーバード大学リサーチフェロー
医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンに。

 ファストフードや加工食品は、飽和脂肪酸や精製された炭水化物を多く含むため、「高脂肪・高ショ糖食」とも呼ばれます。

 この高脂肪・高ショ糖食を摂取し続けると、糖尿病など生活習慣病になりやすいことは、既に常識かと思いますが、近年それだけでなく脳にも悪影響を与えることが確定的になってきました。

 この1月、オーストラリア・マッコーリー大学のフランシス博士とスティーブンソン博士が雑誌『Appetite』に、過去の論文をまとめた形のレビューを報告しましたので、ご紹介させていただきます。

確認された機能低下

 2011年のホロウェイ博士らの研究では、19~28歳の健康な男性を、脂肪70%の高脂肪食グループと脂肪24%の標準的な脂肪食グループに分けランダム化比較試験を行った結果、5日間の摂取後に高脂肪食グループでは注意力や処理能力が低下しました。精製された炭水化物でも、認知機能に対し同様の悪影響が見られました。

 2009年のアクバラリー博士らの研究では、脳卒中の既往歴がない35~55歳の成人において、加工食品の摂取が、語彙や言葉の流暢さのパフォーマンス低下に関与すると報告されました。高脂肪・高ショ糖食の摂取を減らすことで認知機能が改善したことも確認されています。

 子どもたちへの影響も同様です。2007年、ベントン博士らによる研究では、6~7歳の子どもに血糖値を急上昇させる食事(いわゆる高GI食)を摂取させた後、注意力や記憶力の低下が認められたことを報告しています。高脂肪・高ショ糖食が、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の病因の一つでないかという説もあります。

 なぜ脳に影響が出るのでしょうか。

脳を壊す流れ

 これには、以下のものが絡み合っていると考えられています。

①脳由来神経栄養因子
 脳には千億とも言われる神経細胞があり、これら神経細胞はシナプスと呼ばれるつなぎ目を介してネットワークを作り、膨大な情報の処理・記憶を行っています。私たちの脳は、発育期に、あるいは成熟した大人でも、この神経ネットワークが組み替え可能になっています。これをシナプスの可塑性と言います。シナプスに可塑性があるため、次々と入ってくる情報に対して、状況に応じた判断ができるのです。
 さて、このシナプスの可塑性にとって、重要な栄養となるのが脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質です。記憶や学習能力を司る海馬や大脳皮質に豊富に存在し、脳内の神経細胞の成長を促したり維持したりする作用を持ちます。さらにこのBDNFは、食欲を抑え、エネルギーの代謝を亢進する作用を持つことも分かってきました。
 ところが高脂肪・高ショ糖食は、動物モデルにおいて海馬のBDNFを減らすことが報告されています。人間でも同じか確認されていませんが、今後の研究が注目されます。

②酸化ストレス
 呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は不安定で、活性酵素やフリーラジカル※注になります。その強い酸化力で、体内に侵入したウイルスや細菌を退治する際に免疫系に重要な働きをする一方、過剰になると酸化ストレスとなり、健康な細胞まで酸化させて老化やがん、動脈硬化などの引き金となります。
 そして、いくつかの動物実験で、糖質や脂質の多い食事は酸化ストレスを増加させることが報告されています。酸化ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病など神経変性疾患の病因とも考えられています。実際、高脂肪・高ショ糖食による酸化ストレスの増加や認知障害との関連が、複数の動物実験から報告されています。
※注 呼吸によって体内に取り入れた酸素のうちごく微量が、反応しやすい不安定な形に変わることがある。この不安定な酸素種を総称して活性酸素と呼ぶ。活性酸素は他の物質と反応して安定になろうとする性質があり、タンパク質・脂質・核酸などと反応し、酸化して変性してしまうことがある。またフリーラジカルは、電子が不安定な状態になっていて、他の分子から電子を奪い取る力が高まっている原子や分子の総称。なお、一般に活性酸素とフリーラジカルは混同されることが多いが、活性酸素にはフリーラジカルとそうでないものがある。

③神経炎症
 動物実験で、飽和脂肪の多い食事が、体や脳の炎症反応を増やすことが証明されています。炎症作用の強い食品を摂り続けると、徐々に脳などの組織を傷つけると考えられています。実際、肥満の人は痩せている人に比べて、炎症性マーカーが上昇しています。また、食事による炎症反応は、大脳皮質のBDNFの低下とも関連づけられています。

④血液脳関門
 血液と脳の間には「血液脳関門」と呼ばれる関所があり、血液中の物質を脳へ簡単に通さないようにして、脳を毒物から守っています。ところが例えば、中年期にBMIの高い(体重過多~肥満)人たちは、24年後に血液脳関門の障害が生じると報告されています。ラットの実験でも、高脂肪•高コレステロール食を6カ月間与えると、海馬の血液脳関門の機能が低下しました。

91-o.jpg⑤食欲
 一般に食事の量の調節には、いつ、どのくらい食べたかという記憶が、大切な役割を果たしています。ですから例えば、海馬や前頭葉に障害のある認知症の患者さんでは、摂食量の増加がよく見られます。

 以上のことから、図のような悪循環が起こると考えられています。

 これは、2005年にデビッドソンらによって提案された、肥満の悪循環のモデルと一致しています。

 脳の健康を守るため、食事を改善してみませんか?

  • ロハスな商品を厳選してお届け! HAPPY GRIN
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索