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検査の現場から1
東京大学教授(検査部部長) 矢冨 裕
患者さまが病院を受診し、医師の問診・診察を受けられた場合、それだけの情報で十分に診療方針が確定できる場合もありますが、さらに診断に関する情報が必要になる場合もあります。
後者において、検査は非常に重要です。検査には実に多くのものがあり、X線を使う画像検査、胃カメラなどの内視鏡検査も含まれますが、ここでは、病院の検査部門(臨床検査部など、病院によって多少名称が異なります)において行っている臨床検査(以下、検査)についてご紹介します。
検査には多くの種類がありますが、大きく二分することができます。
一つは検体検査といって、血液、尿、胸水、腹水などの患者さまから得られた検体の分析を行う検査です。もう一つは生理機能検査(単に生理検査ともいいます)といって、患者さまの生体活動を直接検知する検査であり、心電図、超音波検査、呼吸機能検査、脳波、筋電図などが含まれます。前者に関しては、患者さまの検体をいただければ、後は、検査部門で結果を出すことができます。一方、後者については、原則として、患者さまご自身に検査を行う場所までお越しいただきます。
検査の結果は様々な要因で変動します。食事、飲酒、運動、喫煙、年齢、性別などです。例えば、糖尿病の診断で最も基本的な検査である血糖の値は食事によって大きく上昇し、食事の情報がないと正確な判定は不能です。血中の中性脂肪、尿素窒素(腎機能検査)の値も食事で上昇します。また、過度の緊張により、心電図検査で心拍数が本来より増加する状況もありえると思います。
主治医から検査結果に関して説明を受けられる時には、必要に応じ、検査を受けた際の状況をお話しされることが重要です。また、ご自身の検査結果がいわゆる正常値(基準値)から外れたと一喜一憂されるのではなく、この際も主治医にご相談ください。
次回からは、検体検査、生理検査のうちの代表的なものを順次、ご紹介いたします。