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隠れた国民病 肝炎にご注意
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急性肝炎ならば医師にかからない人はまずいないと思われますが、困るのは特にC型肝炎などで自覚症状のないまま慢性肝炎が進行している場合です。
慢性肝炎とは、絶え間なく肝細胞の破壊と再生が繰り返されている状態です。破壊と再生のスピードが釣り合っているうちは良いのですが、破壊の方が勝る場合、どんどん細胞が失われていきます。そして脱落した細胞の隙間を埋めるように線維成分が増え、肝臓は硬くなります。この状態が肝硬変です。
いったん肝硬変になると、肝臓内の血液の流れがかわり、さらに再生力が弱くなって肝細胞が破壊される悪循環に入り、生命に関わるところまで進んでしまいます。また、肝臓がんも発生しやすくなります。
肝硬変や肝臓がんに発展させないためにも、また知らないうちに他人に感染させないためにも、自覚症状のない段階で慢性肝炎を見つけ、早く治療を始めることが大変重要になります。
では、どうやって慢性肝炎を見つけるのでしょう。
最も簡便で、よく行われるのは血液検査です。普段の健康診断でも肝臓に関する項目は必ず入っているはずです(表参照)。
AST(GOT)、ALT(GPT)が高ければ、その原因が肝炎ウイルスなのかどうかを検査します。AST、ALTが基準内だからといって、絶対に感染していないというわけではありませんので、肝炎ウイルス検診を受けることが必要です。この検診には費用補助の出る自治体が多くあります。
ウイルスに感染して慢性肝炎を起こしているということになると、今度は治療方針を立てるために、肝臓がどの程度傷んでいるか調べることになります。
血液検査でもかなりのことが分かりますが、最も確実なのは、肝臓に針を刺して組織の一部を採取、その細胞を顕微鏡で観察する「肝生検」です。
なお次項で説明するインターフェロン治療を受ける前には、必ず肝生検を行います。肝生検は患者への負担が大きくすべての患者に実施できる検査法ではありません。肝臓の表面を肉眼で見る腹腔鏡検査を行う場合もあります。
C型肝炎患者はまだまだ埋もれています。 国内のC型慢性肝炎患者は、症状のない持続感染者(キャリア)を含めると200万人程度いると推測されています。しかし医療機関で何らかの治療を受けている人は100万人に届かず、自分がウイルス感染していることにすら気づいていない人が相当数いると考えられています。 C型慢性肝炎の人が全員、致命的な疾病に至るわけではありませんが、約7割は徐々に病気が進行します。 治療しないと10~30年でその3~4割が肝硬変、さらに肝臓がんに移行すると言われています。肝臓がんの原因のおよそ8割がC型肝炎です。肝臓がん以外にも、肝硬変は食道静脈瘤破裂やアンモニア脳症の原因になります。早期発見・早期治療が大切な理由です。