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隠れた国民病 肝炎にご注意
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肝臓が炎症を起こすとは、要するに肝臓の細胞が破壊されているということです。肝臓の細胞が破壊される原因には、大きく分けて2つの流れがあります。
一つは、外的な原因によって直接細胞が破壊されるもので、酒の飲みすぎなどによるアルコール性肝炎や、抗がん剤など肝毒性を持つ薬剤による肝炎がこれにあたります。
もう一つが、外的な原因に対して免疫が働き、細胞内に潜む外的な原因を排除しようとして、細胞まで壊してしまうというものです。ウイルス性肝炎が、こちらにあたります。
日本人の場合、多くがウイルス性肝炎なので、ここからはウイルス性肝炎に絞って説明していきます。
一口にウイルス性肝炎といっても、肝臓に取り付くウイルスの種類によって、それぞれ違った経過をたどります。
ウイルス性肝炎の中で、急性症状が激しく、たまに劇症になるのがA型肝炎です。ただし急性期を切り抜ければ完治して、特に後遺症は残りません。
大人になってB型肝炎ウイルスに感染して発症した急性肝炎も症状が激しく、一方で慢性化することは稀です。しかし、最近になって大人で感染しても慢性肝炎になるタイプのB型肝炎ウイルスがわが国にも入ってきました。
急性期症状は激しくない代わりに慢性化しやすく、肝硬変や肝臓がんといったより恐ろしい疾病へとつながりやすいのがC型肝炎です。特に何の自覚症状もないまま、気づいたら手遅れだったということがあります(次頁コラム参照)。
ほかにもD型やE型などのウイルスが見つかっています。D型の日本人の感染は多くありませんが、E型は最近増えています。
ウイルスが、どうやって感染するかの経路も大きく分けて二通りです。
まずは、ウイルスに汚染された食べ物や飲み物を介して口から感染するもので、A型肝炎やE型肝炎が代表的です。海外へ旅行した時、生モノを滅多やたらに口にするなと言われる一つの理由です。
もう一つが血液などの体液を通じて感染するもので、B型とC型がそれにあたります。同じような体液感染のHIVエイズ(06年5月号参照)と似た感染経路ですが、肝炎ウイルスの方がはるかに感染力は強いという特徴があります。
感染経路として、かつては、ウイルスに汚染された血液の輸血を受けることによって、感染するケースが非常に多く見られました。現在では、献血用血液から感染血液を除く方法が採用されたため、輸血感染を大幅に減らすことができました。しかし完全になくなったわけではありません。
また、血液から作られた血液製剤を介しても感染するため、血液製剤をよく使用する血友病患者や透析者などが肝炎に感染する例も多くみられました。こちらも現在では、ほとんど起こらなくなりました。
薬物乱用者が同じ注射器を使って「回し打ち」をすることによって感染するケースが多いのは、HIVと全く同じです。
母親がB型ウイルスに感染している場合、出産時に子どもにかなりの高率で感染し、この出生時感染は慢性肝炎の原因になります。また性行為による感染も多く見られます。
「薬害肝炎」として係争中です。 かつて医療機関では、血中に含まれ血液を固まらせる作用のあるたんぱく「フィブリノゲン」の製剤を止血剤として用いることがよくありました。 ところが、この製剤の原料となった血液の中に肝炎ウイルスに汚染されたものが含まれており、特にC型肝炎ウイルスについて対策が不十分であったため、製剤経由でウイルス感染したと思われる肝炎患者が多数出ました。いわゆる「薬害肝炎」です。患者数では「薬害エイズ」をはるかにしのぎます。 これに関して、各地で国と製薬会社を相手取った訴訟が起き、大阪地裁や福岡地裁の一審段階で06年に、製剤と肝炎との因果関係を認める判決が出ています。(訴訟に関して詳しくは、薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページをご覧ください)