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大気汚染は認知機能低下を助長する

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 米国で、大気汚染と認知機能低下の関連を調査したところ、粒子状汚染物質への長期間曝露が老齢者の認知機能低下を早めることが分かりました。

Exposure to Particulate Air Pollution and Cognitive Decline in Older Women
Jennifer Weuve, MPH, ScD; Robin C. Puett, MPH, PhD; Joel Schwartz, PhD; Jeff D. Yanosky, MS, ScD; Francine Laden, MS, ScD; Francine Grodstein, ScD
Arch Intern Med. 2012;172(3):219-227. doi:10.1001/archinternmed.2011.683.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

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●背景

 微粒子の大気汚染への慢性的曝露は、関連データに限りはあるのだが、老齢者の認知機能低下を早めるかもしれない。本研究では、長期間の粒子状物質による大気汚染への曝露と認知機能低下との関係を、粗い粒子である直径2.5~10ミクロンの粒子状物質(PM2.5-10)と細かい粒子である直径2.5ミクロン未満の粒子状物質(PM2.5)により調査することを目的とした。

●方法

 研究対象者は、19,409人の70~81歳までの米国女性によるNurses' Health Study Cognitive Cohort(認知機能コホート)を構成した。地理情報システム(GIS)に基づく空間時間的スムージングモデルを用い、1995~2001年のベースライン認知機能試験に先立ち、連続して米国に居住している対象者の最近(1カ月)および長期間(7~14年間)のPM2.5-10とPM2.5への曝露を推定した。一般化推定方程式による回帰分析を実施し、PM2.5-10とPM2.5への曝露の程度に応じての認知機能低下割合における差異を推定した。主たる評価項目は、一般的認知機能・言語記憶・単語想起・作業記憶・注意力のテストを含め、約2年間の間隔をおいて3回実施された電話による認知機能評価であった。

●結果

 PM2.5-10とPM2.5ともに、長期にわたるより高いレベルでの曝露は、認知機能低下を早めることと有意な関連があった。全体スコアでの2年間の低下は、以下の通りであった。
1 PM2.5-10 曝露が1立方メートルあたり10マイクログラム増加するごとに、0.020標準単位低下(信頼区間95% -0.032~-0.008)
2 PM2.5   曝露が1立方メートルあたり10マイクログラム増加するごとに、0.018標準単位低下(信頼区間95% -0.035~-0.002)

 認知機能の軌跡におけるこのような差異は、本コホートのおける年齢が約2年離れている女性の差異と同等であり、長期間にわたる1立方メートルあたり10マイクログラムの粒子状汚染物質への曝露増加は、認知力に関して約2年加齢することに相当することを示している。

●考察

 米国の人々によって一般的に体験されるレベルでPM2.5-10やPM2.5への長期間曝露があることは、老齢者において認知機能低下をいっそうひどくさせることと有意な関連があった。

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