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これが霞が関の手口だ
先月28日の中医協総会の模様を新井裕充氏がweb上再現してくれたのは、もうご覧いただいただろうか。メチャクチャ面白いのだが、ちょっと長いのと、読みこなすのに若干の予備知識が必要なのとで、今イチ面白さが広まってないようなので、私の眼に映ったツボを書くことにする。(川口恭)
今回の議論は、「総会」の下に設置された「診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会」の報告をどう取り扱うかで大モメにモメたわけだが、揉めた中身そのものは大した問題でないので意味が分からなくても気にせず読み飛ばして構わないと思う。面白いのは議事運営だ。で、予備知識として「総会」と「分科会」の関係を押さえておきたい。
分科会の委員構成は「公益」4(うち総会メンバー1=分科会会長代理、総会メンバーでない分科会会長も)、「支払側」6(うち総会メンバー5)、「診療側」6(うち総会メンバー3)、「医薬品、材料関係団体」2という構成になっている。「総会」の方の委員構成は「公益」6、「支払側」7、「診療側」7である。
中医協は、そもそも天下国家のため立場を捨てて委員が集まるというような性質のものではなく、支払側と診療側が互いの立場を主張して利害をブツけ合い、公益委員(厚労省とほぼ一心同体)が調停するという仕組みになっている。
さてweb上の再現を眺めていくと、どうやら分科会は紛糾して、最終的にどのように報告を取りまとめるか分科会会長に一任したようだ。が、その取りまとめ内容について、分科会に参加していた特に診療側委員が不満を漏らしたのに対して、森田朗会長がこんな言葉を放った。
「分科会委員の間で意見が分かれているのは理解できるが、分科会が出した結論について、総会で、分科会に参加している委員が異なる意見を述べるということになると、何のために分科会をやっているのかということになりかねない。(中略)分科会委員は、分科会で決定したのだから、その分科会の案についてディフェンドしてもらわないと、会議体として前に進まない」
企業のように目的が明確な組織であれば、「いったん決まったことには不満を漏らすな。でないと組織は動かん」という、この発言はもっともだ。しかし、そもそも利害調整が最大の役割という中医協の性格を考えると、素直には首肯できなくなる。
分科会に参加していた総会メンバーは全部で9人。この9人が、公益委員作成(つまり厚労省作成)の報告書から外れるような意見を述べられないとすると、分科会に参加していなかった公益委員(しつこいが厚労省と一心同体)の5人を加えた14人で、分科会報告書は必ず承認されることになる。要するに、分科会で「分科会会長に一任」まで持っていけば、厚労省の言い分が必ず通ることになる。診療側と支払側の利害が対立するような議事運営をして紛糾させれば、最後はどうやっても「分科会会長に一任」になるので、目的は達成される。
というような前提を念頭に置きながら、改めて議事の模様を追っていくと、今回はたまたまボロが出てしまったけれど、普段はもっと上手にやってるんだろうなあと思わざるを得ない。この分科会は珍しく公開なのだが、普通の分科会は非公開でどういう議論があったのか外からは分からないし、そもそも国の審議会委員を務めるような人たちは、お行儀がよいのでね。