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診療報酬改定に関するニュースの見方
私たちが受ける医療の値段、「診療報酬」の改定を巡る熾烈な戦いが始まっている。
医療サービスは健康保険によって支払われる公的なものなので、2年に一度、「診療報酬改定」という呼び名で国が値段を決めている。時期の情勢、政治、医療提供側や患者の動向、国民の疾病など様々な要素が影響する。
議論が盛り上がってくるのが大体改定前年の夏~秋頃だ。もちろん改定に関する議論は毎月厚労省で開かれているが、具体的な方針が出てきて、改定の全体像が浮かび上がってくる今頃に盛り上がりを見せ出す。
例えば、こんな記事が出始める。
新聞記事だから一般向けとして載ってはいるが、「意味が分からない」と思う人が多いだろう。
専門用語はもちろんのことだが、『そもそもなんでインタビューが「日本医師会」と「健保連」という組み合わせなの?』と思う人も多いのではないか。
これには、中医協のしくみを知る必要がある。
ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵
中医協(中央社会保険医療協議会)とは、厚労省が診療報酬を決めている会議のこと。
勘違いされがちだが、中医協は値段そのものを決めるのではなく、診療報酬の大元になる医療政策について話し合う。具体的な値段は、厚労省が決めて2月に一気に示す。
詳しくは、ぜひこちらを
「検査や手術の値段を決めています。「中医協」って知ってる?」(ロハス・メディカル2009年7月号)
個人的に、中医協の裏側を書いたこれも面白くて好き。
「あなたの知らない世界へようこそ 中医協の真実」(ロハス・メディカル2010年11月号)
この中医協だが、委員構成が①診療側②支払い側③公益委員④専門委員-に分かれていて、重要なのは①②③。
①は医療提供者側で、医師代表や歯科医師代表、薬剤師代表から成る。日本医師会はここにいる。つまり、診療報酬を受け取る側。様々な意味で、診療報酬を上げてほしい人たちだ。
②は医療機関にお金を支払う側で、健康保険組合などの保険者代表、労働組合や経団連がいる。こちらはあまりお金を出したくないので、診療報酬を下げてほしい側。経済情勢、年々高まる医療費、労働者や事業者の払う保険料抑制など、様々な理由がある。
つまり、中医協とは①と②の戦いなのだ。1点(10円)を巡って上げるか下げるか現状維持かの凄まじい攻防が繰り広げられる。たかだか1点と思うかもしれないが、内容によっては医療費何十億円と変わってくる大きい話なのだ。
彼らのやり取りを中立の立場で見るのが、③の公益委員で大学教授など。座長も公益委員。
上記の朝日の記事をこうして見てみると、日本医師会は①で「診療報酬を上げろ」という側、健保連は②で「診療報酬を下げろ」という側。つまり診療報酬をめぐる対立する立場へのインタビューになっているわけだ。そう思って読んでみたら、どういう理由でそれぞれが「上げろ、下げろ」と言ってるのか分かるので、面白くなるのではと思う。
この中医協、もっと知りたくなった方は書籍「行列のできる審議会~中医協の真実」をどうぞ。業界の裏事情含めて中医協について書かれた書籍は、今のところこれ以外に読んだことがありません。