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イギリス、アメリカで認知症の有病率下がる

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京大医学部人間健康科学科の木下彩栄教授の記者セミナーでの解説の続き。

英国、米国で認知症の有病率が下がっているという報告が出ているそうだ。まさかと驚く話だが、高齢者数の増加と共に認知症の患者数も増えているため分かりにくいものの、有病率自体は下がっているという。木下教授によると、教育歴の変化や認知症に関連する薬の影響などが考えられるという。


ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

以下は木下教授の解説。(画像のスライドは木下教授作成のもの)

・諸外国の報告では、認知症の有病率は下がっている。
・意外に思われるかもしれないが、同じ地域で似た高齢者で調べたところ有病率が下がっていると、イギリスで報告が出た。これは有名な研究だが、私たちも最初は何かの間違いではと思ったほど。

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アメリカでも今年似た内容の報告が出ている。

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・有病率が下がっていても、数そのものが多いために認知症患者数は激増しているということ。

・これは私たちにとって非常に勇気を与えてくれるデータ。生活習慣にうまく介入すれば認知症の有病率を下げられるのではと思った。

・メタ解析の疫学データを解析すると、2011年の論文では7つの危険因子にうまく介入することでアルツハイマー病を減らせる可能性があるということだった。

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・また今年の春に出たデータ。アルツハイマー病の危険因子として、モディファイアブルファクターとノンモディファイアブルファクターに分けられる。モディファイアブルファクターは35%を占めている。(注:モディファイアブルファクター...改善可能な因子、ノンモディファイアブルファクター...改善できない因子)

・その中で注目されているのが幼少期からの教育歴、中年期の難聴、あとは生活習慣病、そういったものが非常に重要と言われている。

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・発症前からの介入を考えた場合、副作用の大きい薬、効果のはっきりしないものは使いにくい。発症前から長く介入するには非薬物療法を第一に考える必要がある。

・2017年に認知症診療ガイドラインが改定。かなりの部分に非薬物療法や生活への介入について項目が増えている。こういったものがずっと挙げられているが、一番のエビデンスがあるのが運動。抹消から中枢に行くルートがあるのではないかと考えている。

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実際にアルツハイマー病のモデルマウスの老人班の量を調べると、運動したマウスの老人斑の量が減っている。運動による中枢への影響がこれまでの想像以上にあるのではないかと思っている。有病率を下げて患者数を減らすためには、生活習慣の改善が一番副作用なくできることだと思っている。


 
 
 
 
 
 
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