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睡眠を科学的に捉え 生活をデザインしよう

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大人が受けたい今どきの保健理科19

吉田のりまき

薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰

 1日に8時間眠る人の場合、人生の約3分の1は寝ていることになります。わざわざそれだけの時間を費やして残りの3分の2を生きているのですから、睡眠は間違いなく大切です。しかし、眠ることに関する研究は今も発展途上で、未知の領域だらけです。

 今年の3月末、11年ぶりに厚生労働省から、「健康づくりのための睡眠指針」が出されました。データに基づいて睡眠12箇条も作られています。これまで巷で言われていたことの中には、間違った説もあったようです。間違えて覚えていたことがないか、ぜひサイトをご覧になってみてください。

経験則がほとんど

 さて、保健の教科書で睡眠が最初に登場するのは、「健康とは?」「健康には何が関係しているのか?」という小学4年生の単元で、食事(栄養)、運動と共に取り上げられています。

 皆さんは、睡眠が大切な理由を、どのように教わりましたか?

 以前とある会合で質問してみたところ、寝ている間に成長ホルモンが出るから寝なければならない、ぐっすり寝て休養しないと次の日に集中できない、体内時計があるので夜に寝ないとリズムが狂う、寝不足になると運動中にケガしやすくなる、などといった答えが次々と出てきました。

 でも、これらが、どのような科学的データに基づいて言われていることなのか、ほとんど学習しなかったと思います。日常経験則に基づいた内容が多く、自分の経験と照らし合わせて、確かにそうだなと納得しながら重要性を学習していたのではないでしょうか。それもそのはず、睡眠が科学的に解明されていなかったからです。そもそも、なぜ眠らないといけないのか、その究極の解すらまだ見つかっていません。

脳との関係で考える

 保健では、睡眠は休養という言葉と一緒に並べられています。休養の意味を「体を休める」と捉える人もいれば、「脳を休める」と考える人もいます。どちらも正しいのですが、そもそも脳について理科で学習するのは中学2年生からです。脳を休めると言われても、脳のどのような機能を休めるのか、起きている時とどう違うのかといった内容は高校レベルになってしまいます。

 しかし、睡眠は成長過程でとても重要です。高校生になるまで学習を待っていられません。また、睡眠に限らず、体と脳の関係は健康を考える上で重要です。そのため、保健では理科よりも早い段階で脳が登場します。脳から出される「ホルモン」といった用語も、理科では高校生物の範疇ですが、小学校の保健で出てきています。

 とはいえ、まだまだ脳に関する記述は、ほんの少しです。記憶や学習といったことと脳の仕組みについては保健でも理科でもほとんど学習しません。完全に科学で解明されたわけではなく仮説の部分が多々あるので、教科書的に記載できないこともあるのでしょう。ですが、私たちは大人です。解明されていることだけでなく、解明されつつある内容も含めて学習し、そこから物事の本質を捉えて健康に活かすように心がければよいのです。

 例えば、脳は、新しく得た知識や感情を睡眠中に整理し、これまでの情報と関連づけながら脳内に記憶保存させていくと言われており、その整理過程で夢を見ているのではないかと考えられています。このことは、科学的に完全に確かめられているわけではありませんが、「脳は、睡眠中にしかできない、やるべき仕事を持っている」と捉えることは、間違いにならないでしょう。

 つまり、私たちが眠らない限り、脳はやるべき仕事をできないのです。そう考えれば、私たちは一日の終わりに、脳が仕事をできるように必ず睡眠をとるべきであり、どのような時間シフトを組めば、脳に十分な作業時間を与えることができるのか、といったことを意識するようになります。

 小さな健康情報を一つひとつ覚えて、その都度実践していくことは大変ですが、このように、まずは大きな概念で捉えて必要なことを理解していくと、健康のために知識を活かしやすくなります。

 結局、脳は一人ひとり異なっているのですから、脳に必要な睡眠のとり方も一人ひとり微妙に違ってくるはずです。だからこそ、睡眠を単なる休養と考えず、脳の機能と密接に関係があるものとして捉えてみてはいかがでしょう。

 そして、事例や統計データをヒントにしながら、人生設計を立てるように自分の睡眠生活をデザインしていくとよいのではないかと思います。

 冒頭にご紹介したサイトには、資料が多く付いているので、ぜひ参考になさってください。

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