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シフト勤務の脳への悪影響 回復には最低5年かかる
「頻繁に昼夜逆転→死亡率高く きついシフトをマウス実験」というネットニュースを読みました。まだ動物レベルの話とはいえ、シフトが短いサイクルで変わる仕事の人にはかなりショックな研究結果ですね。泣き面に蜂ではありませんが、無事にそのシフト勤務を卒業して、例えば日勤になったとしても、記憶や情報処理など脳の働きへのダメージが回復するには、最低5年間かかるそうです。
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
今回の研究の詳細はこちら(京都府立医大、八木田和弘教授たちのチーム)。
ポイントは、体内時計が頻繁に乱されることで、「慢性炎症」が引き起こされている、という点。「死亡率上昇」というのはあくまでも慢性炎症によって体中がダメージを受けた結果なのです。
慢性炎症は、体中のあちこちで、ほとんど認識されない程度のボヤが起きたり、火種がずっとくすぶっているような状態。炎症は本来、免疫システムによる防御反応なのですが、八木田教授たちの説明によれば、睡眠時間帯が体内時計が乱されることで「免疫機能の恒常性破綻」が起きてしまうとのこと。要するに、免疫システムの正常なコントロールが失われてしまって、些細な刺激に対してダラダラと過剰防衛あるいは誤爆を繰り返している感じでしょうか。
そうして、全身の血管や組織・臓器はじわじわ傷んでいきます。脳も例外ではありません。ロハス・メディカルに連載中の「睡眠のリテラシー」によれば、
フランスの労働者三千名程に対して記憶や情報処理の能力などを測る検査を実施したところ、交代勤務で働いたことのない群に比べて、今働いているまたは過去に働いていた群の検査成績は良くありませんでした。ただし、交代勤務を離れてから5年を超えた群では交代勤務経験なし群とほぼ同じ成績であることが分かりました。
とのこと。つまり、シフト勤務を離れても、最低5年たたないと記憶や情報処理などの脳機能が回復しないのです。
「そんなこと言っても、仕事のシフトは自由が利かないし」と雇われている側としては思いますよね。そうなんです。ぜひ経営側の方々には、シフトのサイクルの再検討も視野に入れてもらえたら、と思います。従業員の健康管理は、きっと経営上の利益にもつながるはずです!