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米国業界団体はクロ! でも「砂糖の有害性」は本当に"正しい"のか?
昨夜配信の「砂糖の有害性、業界団体が50年隠す? 米研究者が調査」というネット記事、内容は論文を確認して納得したのですが、改めて記事のタイトルの方が気になっています。「砂糖の有害性」って...。世の中にはこうした些細なことから誤解が広まることも、多いのではないでしょうか。
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
記事は、一昨日発表された論文(こちら)に基づくもの。「でんぷんの炭水化物に比べ、砂糖は心臓に有害だ」とする研究発表が出始めた1960年代、これを懸念した米国の業界団体「糖類研究財団」(現・砂糖協会)の幹部が、英バーミンガム大の研究者に資金提供して否定的な研究を隠し、業界の利益を守るために長期間にわたり消費者をだましてきた、と説明しています。
改めて論文を確認すると、確かに同記事のようなことが書いてあります。この論文の通りだとすると、「糖類研究財団」は完全にクロですね。厳密に言えば、この財団は当時「でんぷんの炭水化物に比べ、砂糖は心臓に有害だ」とする研究が盛り上がってきたのを何とかしたいと、自ら資金提供してそれを検証させる研究を行わせたものの、やはり旗色の悪い結果が出始めたため、資金提供を途中で打ち切って、それまでの成果も論文にさせなかった、ということのようです。
さらに、この論文の著者たちは昨年にも、「糖類研究財団」から研究者への資金提供が行われてきたことを指摘しています(論文はこちらhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5099084/)。
それによると、1967年には、世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つ、「The New England Journal of Medicine」(NEJM)にも同財団の資金提供を受けた論文が発表され、冠状動脈性心疾患を引き起こす栄養成分として脂質とコレステロールが強調され、砂糖摂取もリスク要因であることは控えめに扱われた、というのです。
というわけで、「糖類研究財団」はやはり真っ黒だったようです。
ただ、冒頭に書いた通り、私は「砂糖の有害性」という表現には疑問を感じます。厳密には、砂糖の摂り過ぎが問題なのであって、砂糖は毒ではないからです。
それを言うなら、摂り過ぎて体に何の悪影響も出ない食品や栄養素の方が少ないでしょう。「食塩は体に悪い」「リンは体に悪い」「コレステロールは体に悪い」「動物性脂肪は体に悪い」と単純に言い切ることが、いずれも間違っているのと同様に、「砂糖は体に悪い」というのは間違いです。
「有害性」と「有害」は確かに違います。「性」がつくと、「傾向」「おそれ」といった意味が付加されます。でも、「危険性」「有毒性」と聞けば、人は「危険なんだ」「有毒なんだ」と思うものです。だったらやっぱり「有害性」も「有害」と聞こえるのではないでしょうか。
短い言葉で「砂糖の有害性」と言い切った方が、たしかにキャッチーですし、インパクトも強い。伝わりやすいからこそ、もっと厳密で慎重であるべきだと思うのです。
なお、個人的には、砂糖よりも「異性化糖」の方が問題が多いと認識しています(詳しくはこちら)。それを言い訳に、砂糖たっぷりのお菓子についつい手を伸ばしてしまう(摂取過剰で結局「有害」になってる)のは、単に私の弱さなんですが......。