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生薬・漢方薬 あなたの腸内細菌で毒にも薬にもなる?!

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安倍首相が自ら罹患を公表して知名度が高まった「潰瘍性大腸炎」。このほど、中国由来の生薬に治療効果があることが、科学的に認められたそうです(ネットニュースはこちら)。でも、素人判断で飛びつくのはちょっと待って。効き目が穏やかそうなイメージのある生薬にも、やはり副作用はありますし、個人差も大きいもの。そこには腸内細菌も大きく関わっているって、ご存じでしたか?

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

今回、潰瘍性大腸炎への効果が認められたのは、「青黛」(せいたい)という章薬。慶應義塾大学IBD(炎症性腸疾患)センターに詳しい解説がありました。それによると青黛は、「植物から抽出したインジゴを含有する生薬」とのこと。「インジゴ」って、あの藍染やジーンズの青い染料(色素成分)として知られる「インディゴ」のことですよね? それが薬として使われてきたなんて知りませんでした。

同センターによれば、

当院では、青黛が含有するインジゴが、近年、粘膜治癒を促進する物質として世界的にも注目を集めているインドール化合物であるという点に着目し、その有効性と安全性を科学的に検証するため、世界で初めて潰瘍性大腸炎の患者さんに対する前向き臨床試験を行いました。従来の治療薬に反応しなかった難治例を含めて約7割の患者さんに有効で、内視鏡において劇的な改善を認めた例もあり、有望な代替治療薬の候補になりうると考えられました。

とのこと。(論文はこちら

ただ一方で、

肝機能障害などの副作用もみられ、投与容量の設定を含む更なる検証のため、次の段階の試験が必要と考えられました。この研究成果は厚生労働省科学研究班でも注目を集め、現在、全国30施設以上にわたる多施設共同研究を行っています。

としており、素人判断では手を出さない方がよさそうです。

実はこうした副作用について、昨年末には厚労省から、日本医師会や日本薬剤師会、さらに13の学会に対し、「植物由来製品による健康被害(疑い)について」という緊急情報が出されていました。「今般、青黛(せいたい)を摂取した潰瘍性大腸炎患者において、肺動脈性肺高血圧症が発現した症例が複数存在することが判明しましたので、お知らせします」として注意喚起しています。

確かに、東洋医学で用いられる生薬(植物や動物、鉱物などの天然産物由来の薬物で、精製を経ずに用いられる)あるいは漢方薬(詳しくはこちら)は、その人の体質や状態によって、処方も効き目も大きく違ってきます。西洋医学で使われる化合物を主要成分とした薬が、病気ごとに処方され、誰に対しても同じ効果を期待されるのとは大きく違いますね。ですから、その人の状態や体質(東洋医学ではこの分類を「証」と言います)を正しく見極めずに薬を選んでしまうと、治るどころか体に負担になったり、逆効果になることさえあるのです。

さらに、今回の青黛のように科学的な有効性や効く仕組みが解明されつつあるものもあそうした研究の中で分かってきたことの一つが、腸内細菌との密接な関わりです。ざっくり言えば、ある生薬もしくは漢方薬が有効性を発揮するには、腸内で細菌の助けを借りる必要があるのです(詳しくはこちら)。「漢方薬は食前または食間に飲め」と言われるのもそのためなんですね。食べ物に邪魔されずに腸内細菌と結びつくため、ということです。

要するに、漢方で患者一人ひとりの体質や状態を見ることは、ある意味、漢方薬と腸内細菌の相性を見極めることでもあるのです。慣れない人が勝手に判断するのが危険なのも納得です。市販薬で手軽に使えるものも増えましたが、「使ったことがないけれど使ってみたい」といった場合は、できる限りまず知識と経験を豊富に積んだ医師の診断を受け、希望を伝えた方がよさそうですね。どうしても市販薬から入る場合は、薬剤師に相談しましょう。

そう考えると、腸内細菌てすごいです。ヒトの体質の何割かは、「内なる外」(詳しくはこちら)に棲みついた腸内細菌で決まってしまうのです。腸内を健全に保つことがいかに全身の健康維持に直結するかも分かります。

腸内の健康を保つために、できることがいろいろあります。まずはそのエサとなる水溶性食物繊維を意識して摂ることが、手軽でお勧めです。納豆やアボカド、ゴボウなどに多いようですよ!

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