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甘くてカロリーゼロ、のおかしさを自分で体感しよう。
一昨日配信の「カロリーゼロの"甘い罠"専門家が指摘」というネットニュース、ロハス・メディカルでは5年前に同じ内容について取り上げています。米国でその頃から人工甘味料に対する疑問や渓谷の裏付けとなるような論文が次々に発表され始めたのです。でも、普通に考えれば、甘いのにカロリーがゼロなんて、体に「良い」はずはなさそう(「悪い」かどうかは分かりませんが)。ヒトという生命体が築き上げてきた体の仕組みにとっては想定外の代物で、多かれ少なかれ脳を混乱させるに決まってるからです。そのことを、自分でも簡単に実感できる方法がありますよ!
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
人工甘味料の問題点について指摘したのは、ロハス・メディカル2012年10月号。後に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』という本を出された大西睦子医師の連載です。そこでは既に、今回のネットニュースで指摘されている「人工甘味料が脳の錯覚をもたらし、食べすぎを促す可能性」「糖尿病リスク」といった問題点が指摘されています。
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その記事にしても、今回のニュースにしても、専門家が難しい実験や手のかかった調査などに基づいて、人工甘味料のどこに同問題があるか、きっちり示してくれています。だからこそ我々素人も耳を傾け、「なるほど」と納得するのですし、利害関係者も安易には「単なる誹謗中傷だ」「非科学的な風評だ」と反発して済ませらず、これが記事として成立しているんですよね。
ただ、人を説得するのでなければ、そんな面倒なプロセスがなくても、人工甘味料の不自然さに自分で気づける方法もあります。これは私自身が度々経験して実感していることなので、ぜひ皆さんも自分自身で試してみていただきたいのですが、とにかくものすごく空腹で空腹で仕方がない時に(ここが大事です!)、カロリーゼロのコーラと、通常のコーラ、同じ銘柄で飲み比べてみるのです。美味しさの違いがはっきりするはずです。目隠しをしていても分かるのではないでしょうか。あるいはカロリーゼロの方だけでも構いません。どれだけ美味しく感じられるかどうか......普段から両者の違いを感じている人も少なくないかと思いますが、いつもは違いをあまり気にかけていない、という人にとっては面白い結果が出るのではと思います。
でも、その結果は決して不思議ではありません。ヒトは(おそらく他の多くの動物も)、生命活動にとって必要な栄養素を「美味しい」と感じるように出来ているからです。つまり、カロリーゼロだと不味い、とは言い切れず、感じ方に違いが出るとすれば、それは感じる側の問題なのです。早い話、「空腹が最高のスパイス」を実感しているにすぎません。
私たちの舌は、必要な栄養素を積極的に摂取し、毒を回避するために、5つの味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)の刺激をとらえる能力を発達させました。ですから本来、糖分の多い飲み物が美味しく感じられるのは、甘いから、と言うより、本質的には糖分が多いから、なんですよね。それを美味しさの本体である糖分なしに、人工物によって甘さという刺激だけを与え続けられたらどうでしょうか? 体や脳が混乱するのは目に見えていますよね。もし例えばそこに何もないのに、別の刺激によって本当にあるように見えたり、何かが聞こえたり、触れたように感じたりしたら、気味悪いですし、頭が混乱するのと同じです。
人類は長らく栄養の「欠乏」と闘ってきました。糖分や脂肪分は、本当に美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまいますが、それもかつては人類が生き延びるための戦略だったと考えれば当たり前のこと。でも、飢餓を経験しないで済む私たちは、今度は生き延びるために(つまり生活習慣病のリスクを下げるために)、食べたい「欲望」と闘って打ち勝たないといけません。う~ん、贅沢な悩みですね。