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HPVワクチン接種は性行為を助長しない

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 子宮頸がんを予防すると性行為開始以前の接種を望まれているヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンには、接種で安心感が生まれ性行為を助長するとの見方もあります。しかし、HPVワクチンを接種したグループとしなかったグループで比較をしたところ、接種後に性行為が増えることはなかったそうです。

Sexual Activity-Related Outcomes After Human Papillomavirus Vaccination of 11- to 12-Year-Olds
Robert A. Bednarczyk, PhD, Robert Davis, MD, MPH, Kevin Ault, MD, Walter Orenstein, MD and Saad B. Omer, MBBS, PhD, MPH
Pediatrics; originally published online October 15, 2012;
DOI: 10.1542/peds.2012-1516


川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 2006年に、米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices)は、11歳から12歳までのすべての米国少女がヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種を受け、機会を逸した場合は26歳までの間にキャッチアップ接種を受けるべきであり、投与年齢は9歳でも認められるべきであるとの勧告をした。10歳前の少女に性感染症(STI)に対するワクチン接種を実施すべきとの勧めは、HPV曝露以前に免疫を獲得する必要があるからだ。

 性行為の開始時期が早いことと複数の交渉相手を有することはHPV感染への危険因子となる。15~17歳での性行為割合は近年減少しており、1995年には39%であったものが2006年から2010年の間においては27%になっている。性行為を経験している少女のうちの約半数は、交渉相手が2人を超えるとのことであり、女子高生のうち3%は13歳以前に性行為を開始したと言っているのだ。このように早い時期での性行為開始に伴って若い生殖器へのHPV感染傾向も高まり、14~19歳の少女のうち、33%はHPV亜種のうち少なくとも1種に感染しており、12%は4価ワクチン株であるHPV6・11・16・18のうちの一つに感染しているのである。

 国家的に見ると、13~17歳の間にHVPワクチン3回接種のうちの初回を始める少女の割合は、2007年の25%から2010年の49%へと上昇した。しかし、近年推奨されている13~17歳までの他の男女共通青少年対象ワクチン、例えば破傷風ジフテリア百日咳混合ワクチン(Tdap)が2010年に69%、髄膜炎菌4価結合ワクチン(MCV4)が2010年に63%の接種率であったのと比較すると、HPVワクチンの適用は低いものとなっている。HPVワクチンへの障壁は、費用・複数回接種・医師が接種を奨励しないといった構造的レベル、およびワクチンの安全性への懸念や針が怖いといった個人的レベルにおいて存在している。

 査読を受けた論文もマスメディアも、10歳前の少女にHPVワクチンを接種することは、リスク補償と脱行動抑止性を生じ性行為助長につながるのではないかとの懸念を論じてきた。一方、HPVワクチン接種に関する知識・姿勢・実践について調査を受けたほとんどの10代少女は、HPVワクチン接種後に性的行動が変わることはないだろうと申告している。

 性行為研究において起こりがちな反応バイアス(*1)の危険性を避けたうえで、HPVワクチン接種後の性行為関連結果の変化における評価をしたことは現在までない。本研究においては、ジョージア州アトランタ都市部の大規模マネジドケア組織(MCO)であるカイザーパーマネンテに登録している少女たちを対象に、性感染症検査・感染診断・妊娠検査・妊娠診断・避妊相談といった性交渉結果を直接的に検証した。特に、HPVワクチン接種推奨年齢11~12歳の少女を対象に、接種可能当初18カ月間と、結果識別のための追跡調査期間3年間において検証した。

●方法

 保険制度登録、ワクチン接種歴、対象の性行為関連結果(性感染症検査または診断、妊娠検査または診断、ホルモン不妊法相談)に関するデータは、MCO管理の臨床および検査室データベースから入手した。コホートは2006年7月1日から2007年12月31日までの間に推奨年齢11~12歳でHPVワクチン接種を受ける機会があり、2010年12月31日まで結果追跡調査を受ける少女で構成された。本研究では、既に性行為を行っている可能性の少ない少女たちを分析することで、活発に性行為を行う少女たちの方が潜在的にHPVワクチン接種を求めることに関連する混乱要素を取り除こうとした。

 1993年7月2日から1996年12月31日の間に生まれ、2006年7月1日現在でMCOに登録している少女を特定し、以下に該当する場合は対象から除外した。
1 2007年12月31日より前にMCOの登録から外れた
2 2007年12月31日を過ぎてから、または米国での使用推奨前(HPV・2006年7月、MCV4・2005年1月、Tdap・2005年5月)に対象ワクチン接種を受けた
3 ワクチン接種時に11歳未満または13歳以上であった
4 2007年12月31日以前に対象結果歴を有した
5 研究期間にどのワクチン接種も受けなかった

 他のワクチン接種の有無にかかわらず、HPVワクチンを一度でも受ければHPVワクチン接種群、HPVワクチン接種がなければTdapやMCV4ワクチンを接種していてもHPVワクチン未接種群とした。最終コホートの追跡調査は2008年1月1日に開始された。対象ワクチン接種年齢は、HPVワクチン接種群においては第1回目のHPVワクチン接種日、HPVワクチン未接種群においてはTdapまたはMCV4接種の中で最も早い日により決定した。

 2010年12月31日までの間の結果データは、妊娠検査、クラミジア・トラコマチス検査、妊娠診断、クラミジア・トラコマチス診断・トリコモナス症診断、子宮頸管炎診断、不特定性感染症診断、医師への避妊相談に適合するICD-9(*2)とCPT(*3)コードを用いて入手した。トリコモナス症診断、子宮頸管炎診断、不特定性感染症診断に関する結果は、特定不能な性病(VD-NOS)としてひとまとめにした。妊娠調整以外の症状、例えば月経困難やニキビなどの症状に対しても不妊ホルモン剤が処方される可能性があるため、月経困難やニキビ症状を以前かかえていたり現在かかえていての避妊相談は、その分類から除外した。対象の少女たちがそれぞれの受診において抱える可能性のある他の結果は分析に含めた。ICD-9とCPTコードに対応する診断コードがついておらず、ICD-9のV74.5性病のふるい分け検査というようなコードが記録されている場合は、臨床検査記録を参考に対象の診断を確定した。ベースライン時の健康管理探索行動評価のため、対象ワクチン接種前年における総受診数を拾い上げた。

 本研究では、二つ結果の定義づけを行った。一つは、検査・診断・相談をまとめたもので、性行為関連の医療結果を組み込み、すべての妊娠検査、クラミジア・トラコマチス検査、妊娠診断、クラミジア・トラコマチス診断、特定不可な性病診断、避妊相談を含めた。もう一つは、診断に特化した結果で、実際の性感染症や妊娠所見を把握するため、妊娠診断、クラミジア・トラコマチス診断、特定不能な性病診断のみを含めた。これらの混成結果の発生は、どれかが最初に起こった時と定義し、その時の年齢を発生年齢と定めた。2次分析は、それぞれの要素別々に実施した。同一結果の再発は考慮に入れなかった。

●結果

 出生データ分類に適合し、2006年7月1日にMCOに登録されたのは6,795人の少女であった。5,393人が除外され、最終分析対象は1,398人となった。本コホートにおいては、93%がTdapワクチンを、91%がMCV4ワクチンを接種したが、HPVワクチン接種開始者は35%だった。493人がHPVワクチン接種群、905人がHPVワクチン未接種群となった。HPVワクチン接種群では、ほとんどの対象者が少なくとも一つは他の対象ワクチンも接種した。

 検査・診断・相談に関する結果と診断に特化した結果比較では、137人 9.8%対8人 0.6%となった。107人が妊娠検査を、55人がクラミジア・トラコマチス検査を受けたが、妊娠は4人、クラミジア・トラコマチス症は4人に留まった。

 検査・診断・相談分類で、接種群(5.5/100人年 発生率比1.29 信頼区間95% 0.92~1.80)を未接種群(3.9/100人年 発生率差1.6/100人年 信頼区間95% 0.03~3.24)と比較すると、有意な高い発生率とはならなかった。診断特化分類では、接種群0.26/100人年対未接種群0.25/100人年(発生率比1.11 信頼区間95% 0.26~4.64)と、発生率は低かった。検査・診断・相談分類での平均初年齢は、接種群が14.4歳で未接種群は14.6歳(P=0.33)、最初の診断平均年齢においても、接種群が14.8歳で未接種群は14.6歳(P=0.82)と同様の結果となった。

 2次分析である妊娠検査・クラミジア・トラコマチス検査、妊娠診断、クラミジア・トラコマチス診断・特定不能な性病診断、避妊相談それぞれに関する結果では、避妊相談の発生率差において接種群の方が若干高くなっているが、発生率比が有意に上がっているということではなく、また、他の要素に関しては、接種群を未接種群と比較した際に、有意に高い発生率比は見られなかった。

●考察

 本研究は、推奨年齢11~12歳におけるHPVワクチン接種後の性行為関連結果を、初めて臨床結果に基づいて検証したもので、HPVワクチン接種は性行為を助長するものではないことを示している。大規模MCOの管理データを使用していることから、自己申告調査による限界ある結果ではない。臨床妥当性検証のあるもので、数多くの研究が若い女性の大部分がHPVワクチン接種後に性行動における変化は起こさないと報告していることへの理解を広げるものである。仮にHPVワクチン接種が性交渉へのライセンスだとするなら、より多くの有害事象が接種後すぐ現れたはずである。

 本研究において有意ではないまでも若干HPVワクチン接種群の少女たちの避妊相談割合が高かったことは、HPVワクチン接種女性の方がより安全な性行動に対する姿勢を強く持っているという最近の別の研究結果を支持するもので、長期にわたり少女たちが医師との関係を保つことによって、青少年の予防医療に対してよい影響をもたらすものかもしれない。

 11~12歳のほとんどの少女においては、医療に関する決定は両親か保護者によってなされるので、この年齢では性行為に対する理解によってHPVワクチン接種を決断するということは起こりにくい。もしこの種の決定に関する交絡因子が存在するなら、性行為関連結果のリスクは過大評価という結果になるのであり、潜在的に過大評価が存在する中で有意な関連がないことは、本研究結果をさらに支持するものとなる。

 結論としては、11~12歳までにHPVワクチン接種を受けることと、性感染症や妊娠といった性行為に関する臨床的結果増加との間に関連はなかったということである。

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