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足関節・上腕血圧指数は認知症リスクに関連

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 今回もホノルル・アジア加齢研究からのた報告です。足関節・上腕血圧指数が低く、末梢動脈硬化と考えられる場合、認知症全体および血管性認知症リスクが高まること、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者では、アルツハイマー病リスクも高まることが分かりました。

Ankle-to-Brachial Index and Dementia
The Honolulu-Asia Aging Study
Danielle Laurin, PhD; Kamal H. Masaki, MD; Lon R. White, MD, MPH; Lenore J. Launer, PhD
Circulation.2007; 116: 2269-2274 Published online before print October 22, 2007, doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.106.686477

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 (足首の収縮期血圧)/(上腕の収縮期血圧)で算出される「足関節・上腕血圧指数」は血管の詰まり具合の指標であり、その測定は、末梢動脈疾患評価のための非観血的検査である。足関節・上腕血圧指数が低いことは、心血管疾患および引き続く死亡と強い相関関係がある。エビデンスが、認知症の病因に血管構成要素が存在することを示している。本研究では、足関節・上腕血圧指数と認知症およびその型との関連を調査するものである。

 1991~1993年のベースライン時に71~93歳だった日系アメリカ人3,734人を対象とする、前向き地域密着型研究、ホノルル・アジア加齢研究(*1)からのデータを用いている。最初の評価時に認知症ではなく、足関節・上腕血圧指数測定を実施し、1994~1999年の間にもう2回認知症に対する検査を受けた2,588人が分析対象となった。全体で240人の認知症発症があり、144人はアルツハイマー病、46人は血管性認知症、50人は他の型の認知症と診断された。教育水準・生年・高血圧・BMI・糖尿病・コレステロール濃度・喫煙状況・アルコール摂取量・アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子で補正を加え、年齢を時間尺度とした比例ハザードモデルによって、信頼区間95%でのハザード比を算出した。足関節・上腕血圧指数が低いことは、認知症および血管性認知症のリスクを高めることに関連があり、認知症のハザード比は1.66(信頼区間95% 1.16~2.37)、血管性認知症のハザード比は2.25(信頼区間95% 1.07~4.73)となった。アルツハイマー病とは弱い関連となり、ハザード比1.57(信頼区間95% 0.98~2.53)となったが、アポリポ蛋白Eε4保有者におけるハザード比は1.43(信頼区間95% 1.02~1.96)となった。

 これらの結果から、アテローム性動脈硬化の尺度である足関節・上腕血圧指数は、認知症全体・血管性認知症・アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者におけるアルツハイマー病の発症と関連あることが示される。

●背景

 足関節・上腕血圧指数が、臨床的認知症と関連あるのかどうかは知られていない。アテローム生成的損傷や脳卒中関連損傷を含む血管危険因子は、血管性認知症における有力な役割を担うことが知られているが、アルツハイマー病との関わりにも有意なエビデンスが存在するのである。それ故に、本研究では、足関節・上腕血圧指数は認知症全体・血管性認知症・アルツハイマー病と関連があるとの仮定をした。さらに、アポリポ蛋白Eε4と関連するリスクの潜在的効果修飾も評価した。

●方法

(1)対象者
 ホノルル・アジア加齢研究は、1991~1993年に、前身であるホノルル心臓プログラムの検査4と同時に始まった。ホノルル心臓プログラムコホートのうち、生存者の80%にあたる71~93歳の3,734人が、最初に認知症評価が実施された時にホノルル・アジア加齢研究への参加に同意した。対象者は、1994~1996年の検査5、1997~1999年の検査6でも認知症評価を受けた。

(2)認知症例調査
 症例発見は、多段階手順を用いて実施した。ホノルル・アジア加齢研究のベースライン時検査4、および引き続いての検査において、対象者は、まず100点法のCognitive Abilities Screening Instrument(CASI)によってふるい分けをされ、その得点によって認知症評価のサブグループ識別を行った。認知症評価には、神経学的検査・神経心理学的組み合わせ検査・認知機能と行動の変化に関する情報提供者面談が含まれた。認知症の疑いがある場合は、脳画像が撮影され、血液検査が実施された。これらのデータに基づいて、「精神障害の診断と統計の手引き-改訂第3版」基準に従い、研究担当神経科医と、認知症に関する専門知識を有する2人の本研究担当医の総意によって認知症診断がされた。

 検査4を受けた3,734人中1,095人がふるい分けで陽性となり、そのうち20.1%が認知症傾向ありと診断された。検査5では2,693人中751人が陽性、そのうち19%が認知症発症と診断され、検査6では1,982人中307人が陽性、そのうち35%が認知症発症と診断された。

 アルツハイマー病の可能性大または可能性ありは、「国立神経疾患・伝達障害研究所、および脳卒中/アルツハイマー疾患・関連疾病協会」基準に従い診断された。アルツハイマー病を主因として含む混合型認知症は、アルツハイマー病の可能性ありと定義した。確定的なアルツハイマー病は、神経病理学的データを用いてのみ診断可能となる。血管性認知症は、「カリフォルニア州アルツハイマー病診断・治療センター」基準に従い診断された。他の型の認知症は、アルコール・脳腫瘍・くも膜下血腫・パーキンソン病・レビー小体病・ピック病・外傷・ビタミンB12欠乏・甲状腺機能低下症・進行性核上性麻痺・原因不明によるものを含んだ。

(3)足関節・上腕血圧指数測定
 足関節・上腕血圧指数は、1991~1993年のホノルル・アジア加齢研究ベースライン時に測定された。上腕血圧は右腕で2回測定され、足関節(後脛骨神経)血圧は背臥位にてそれぞれの足首で2回測定された。上腕とそれぞれの足首の2回の測定値平均が、左右での足関節・上腕血圧指数算出に使われた。比率1未満は、比較的低い足首血圧に起因し、下肢動脈における潜在性アテローム性動脈硬化を表すかもしれない。

(4)共変数および潜在的交絡因子
 共変数および潜在的交絡因子は、ホノルル・アジア加齢研究ベースライン時に測定された。
1 喫煙 一度もない・過去に喫煙・現在喫煙
2 アルコール摂取量 1日に1杯未満・1日に1~2杯・1日に3杯以上
3 血圧 収縮期血圧・拡張期血圧値は、座位による左腕での3回測定平均値とした。高血圧は、収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧95mmHg以上、または降圧剤使用と定義した。

 コレステロール値・トリグリセリド値・血糖値・インスリン値・2時間後経口ブドウ糖負荷試験値は、絶食状態で採取された試料から測定された。
4 空腹時血糖異常と耐糖能障害を含む血糖異常は、空腹時血糖値100~126mg/dLまたは2時間後ブドウ糖値140~200mg/dLと定義した。糖尿病は、空腹時血糖値126mg/dL以上、または2時間後ブドウ糖値200mg/dL以上、または血糖降下剤使用と定義した。
5 BMIは、キログラム体重÷メートル身長の二乗で算出した。
6 アポリポ蛋白Eε4は、保有者と非保有者の2値変数とした。
7 ホノルル・アジア加齢研究ベースライン時に関連する心血管疾患歴変数は、オアフ島の退院記録および死亡記録の継続的監視により作成された。歴ありは、検査4以前であっても、脳卒中または冠動脈心疾患がある場合を含めた。

(5)統計分析
 足関節・上腕血圧指数を二つの方法で分析した。
1 足関節・上腕血圧指数によって3分類した。
①0.90未満群  末梢動脈疾患を反映している群
②0.90~1.20群 比較基準
③1.20以上群

2 足関節・上腕血圧指数の認知症に対する直線関係を調べるため、足関節・上腕血圧指数をzスコア(*2)換算した。

 交絡因子で補正を加えた比例ハザードモデルを用いて分析した。認知症発症年齢は、認知症ではなかった最後の検査と、認知症診断がされた最初の追跡調査検査との間隔の中間点とした。死亡者または追跡調査検査への不参加者は、それぞれの最終評価時点で削除された。分析には3モデルを使用した。
1 生年と教育水準で補正
2 モデル1に加えて、高血圧・糖尿病・喫煙状況・アルコール摂取量・五分位でのコレステロール値・BMI・アポリポ蛋白Eε4状態で補正
3 モデル2に加えて、心血管疾患歴で補正を加えた。

●結果
 3,734人中、226人は最初に認知症傾向があったため除外された。適格者のうち、死亡による418人、さらなる認知症検査を拒否した462人、足関節・上腕血圧指数データのない40人、合計920人を除外し、残った2,588人が最終標本となった。

 ベースライン時での平均年齢および標準偏差は、76.9±4.1歳であった。足関節・上腕血圧指数0.9未満で定義された末梢動脈疾患は、271人に影響を及ぼしていた。平均5.1年の追跡調査期間で、2,348人は認知機能正常のままで、240人が認知症発現となった。このうち、144人がアルツハイマー病(可能性大103人・脳血管疾患に起因する可能性あり41人)、血管性認知症が46人、その他の原因によるものが50人となった。アルツハイマー病発症者のベースライン時平均年齢は79.6歳(標準偏差4.8年)、血管性認知症発症者は78.6歳(標準偏差5.2歳)となったが、有意差はなかった。追跡調査期間で認知症にふるい分けられた対象者は、ベースライン時での年齢が有意により高く79.3歳対76.6歳、1990~1912年生まれの割合がより高く46.3%対23.4%、教育水準がより低く10.2年対10.9年、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有率がより高く22.5%対18.0%、コレステロール・トリグリセリド・BMIの平均値はより低かった。

 モデル1において、足関節・上腕血圧指数は、有意に認知症全体および血管性認知症に対するリスクとの関連があったが、モデル2においては、認知症全体に対するリスクは有意とはならなかった。血管性認知症リスクは、足関節・上腕血圧指数の標準偏差1低下に伴い有意に高まり、モデル2でのハザード比は1.47(信頼区間95% 1.07~2.00)となった。モデル3においてはリスクが低下し、ハザード比は1.28(信頼区間95% 0.93~1.75)となった。

足関節・上腕血圧指数分布を3分類した分析でも、認知症全体および血管性認知症に関しては、同じような結果となった。モデル2において、末梢動脈疾患対象者(足関節・上腕血圧指数0.90未満)は、認知症全体に対するリスク増加が66%となりハザード比は1.66(信頼区間95% 1.16~2.37)、血管性認知症リスク増加は2倍を超え、ハザード比は2.25(信頼区間95% 1.07~4.73)となった。モデル3においても、認知症全体に対するリスクは有意なままで、ハザード比は1.62(信頼区間95% 1.13~2.32)となった。末梢動脈疾患は、モデル1においてはアルツハイマー病リスクと関連があり、ハザード比は1.60(信頼区間95% 1.01~2.53)となった。硬化した血管存在となる足関節・上腕血圧指数1.20以上の群は、認知症全体および亜型との関連はなかった。

 アポリポ蛋白Eε4による効果修飾は、モデル1を使い足関節・上腕血圧指数を連続変数として、認知症全体およびアルツハイマー病に関して調べた。アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者が7人しかいないことを考慮し、血管性認知症における効果修飾調査は実施しなかった。アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者は、足関節・上腕血圧指数の標準偏差1低下に伴うアルツハイマー病リスクが有意に高まり、ハザード比は1.43(信頼区間95% 1.02~1.96)となった。アルツハイマー病リスクは、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子非保有者とは関係がなかった。また、認知症全体に関しては、足関節・上腕血圧指数とアポリポ蛋白Eε4との相互作用は観察されなかった。

●考察

 本研究は、足関節・上腕血圧指数が低いことが、認知症全体および血管性認知症リスク増大と関連あることを示している。さらに、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者においては、アルツハイマー病リスク増大とも関連があった。これらの結果は、血管危険因子に関しては30年を超えて、また認知症に関しては10年を超えて追跡調査をされている日系アメリカ人男性を対象とする、大規模地域密着型研究に基づくものである。

 本研究で適格者となった対象者のうち、11.9%が死亡、13.2%が追跡調査拒否となり、全体の25%以上が除外されてしまった。除外された対象者は、ベースライン時に、どちらも認知症の危険因子となるところの年齢が若干より高く、教育水準がより低かったうえに、足関節・上腕血圧指数平均値も1.9%低かった。除外された死亡者と非回答者が、リスクの過小評価につながったかもしれない。さらに、本コホートの対象者は、ベースライン時に大変高齢であったことから、生き残りバイアス(*3)が結果を歪め、リスクに対するさらなる過小評価につながった可能性もある。末梢動脈疾患のより重症患者は、認知症発現以前に冠動脈心疾患により死亡したかもしれないからである。また、血管性認知症と他の型の認知症に関する結果は、小症例数に基づくものであり、注意深く解釈すべきである。

 認知症の治療法はまだ存在しないことから、変更可能な危険因子が発症や進行を遅らせるために識別されなければならない。足関節・上腕血圧指数は、非常に貴重な手段で、冠動脈心疾患や脳卒中に対する予測因子として高い有効性を示している。本研究では、足関節・上腕血圧指数の低いことが、血管性認知症および認知症全体と関連あると分かった。喫煙を減らし、糖尿病を防ぎ、血圧を正常に保つことを含め、中年期での予防戦略が、血管性認知症リスクを低下させることにつながる可能性がある。

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