全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

腹部脂肪と炎症・酸化ストレス指標の関係

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 腹部脂肪組織の大きさと炎症指標・酸化ストレス指標の関係を調べたところ、脂肪が大きいほど指標の値も高くなる傾向のあることが分かりました。

Visceral and Subcutaneous Adipose Tissue Volumes Are Cross-Sectionally Related to Markers of Inflammation and Oxidative Stress
The Framingham Heart Study
Karla M. Pou, MD; Joseph M. Massaro, PhD; Udo Hoffmann, MD, MPH; Ramachandran S. Vasan, MD; Pal Maurovich-Horvat, MD; Martin G. Larson, ScD; John F. Keaney Jr, MD, PhD; James B. Meigs, MD, MPH; Izabella Lipinska, PhD; Sekar Kathiresan, MD; Joanne M. Murabito, MD, ScM; Christopher J. O'Donnell, MD, MPH; Emelia J. Benjamin, MD, ScM*; Caroline S. Fox, MD, MPH*
Circulation. 2007 Sep 11;116(11):1234-41. Published online before print August 20, 2007, doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.107.710509

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 肥満は、血中炎症マーカー濃度の高まりによって特徴づけられる、慢性的な低度炎症状態である。前向き研究は、C反応性蛋白(CRP)とインターロイキン6(IL-6)が、糖尿病と心血管疾患のリスク増大と関連あることを示してきている。それ故に、炎症は、肥満とインスリン抵抗性・糖尿病・高血圧・脂質異常症のような肥満関連障害との重要な関連となるかもしれないのである。

 本研究では、容積測定多検出器CT(MDCT)法により測定された皮下脂肪組織と内臓脂肪組織と一群の全身炎症マーカーとの関連を調べた。先行する文献に基づき、内臓脂肪組織と全身炎症マーカーとの関連が、皮下脂肪組織との関連よりも強いとの仮説を立てた。さらに、CTに基づく皮下脂肪組織や内臓脂肪組織測定が、BMIや腹囲といった単純な臨床的人体測定的尺度によって説明される以上に、生物指標濃度における付加的な個体相互の変動性を説明することになるのかどうかも評価しようとした。

●方法

(1)対象者
2002年6月から2005年4月の間に、Framingham Offspring Study(*1)からの1,418人がMDCTにより胸部と腹部撮影を受けた。男性は35歳以上、女性は40歳以上で妊娠していないこと、すべての参加者は体重320ポンド未満である必要があった。判読可能なCT走査画像が1,377人、1998~2001年実施のOffspring7回目検査参加者が1,355人、共変数の情報が揃った人が1,253人、少なくとも一つの炎症マーカー測定値があることを考慮した結果、最終標本規模は1,250人となった。標本規模は、個々のマーカーにより多少異なった。腫瘍壊死因子α(TNF-α)測定値は920人、イソプロスタン測定値は1,010人のサブセットからのみ入手可能となった。CT走査は、7回目検査の平均4.2年後に実施された。共変数および炎症マーカーは、7回目検査時のものを使用した。

(2)共変数および危険因子評価
 以下のような共変数および危険因子を考慮した。
1 BMIは、キログラム体重÷メートル身長の二乗と定義した。
2 腹囲は、へその位置で熟練技師が測定した。
3 血糖値・総コレステロール値・HDL-C値・トリグリセリド値は、1晩絶食後の朝に採取した血液サンプルで測定した。
4 糖尿病は、空腹時血糖値126mg/dLの場合、または血糖降下薬治療を受けている場合と定義した。
5 高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上の場合、または拡張期血圧90 mmHg以上の場合、または高血圧治療を受けている場合と定義した。
6 心血管疾患有病者は、冠動脈性心疾患・脳卒中・心不全・間欠性跛行がある場合と定義した。
7 現在喫煙は、7回目検査時前年に、1日に1本以上のタバコを吸っていた場合と定義した。
8 アルコール摂取は自己申告によって、男性は1週間に14杯超と14杯以下、女性は7杯超と7杯以下に二分した。
9 身体活動は、質問票から判断し、睡眠・座っての身体活動・軽度身体活動・中程度身体活動・強度身体活動の1日での時間割合から算出した加重値合計で表した。
10 閉経後状態は、1年以上月経のない場合と定義した。
11 慢性的アスピリン使用は、自己申告により1週間に3回以上アスピリンを使用している場合と定義した。

(3)腹部脂肪組織測定
 MDCT走査による画像撮影を行い、手作業でたどった腹壁によって皮下脂肪組織と内臓脂肪組織区画を測定した。

(4)生物指標評価
 7回目検査時に、1晩絶食後の朝に採取したサンプルで測定した。サンプルは-80℃で保存され、分析時に解凍した。以下のマーカー測定を実施した。
1 血清C反応性蛋白(CRP)
2 CD40リガンド
3 フィブリノゲン
4 細胞接着分子-1(ICAM-1)
5 インターロイキン6(IL-6)
6 イソプロスタン
7 リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)
8 単球走化性タンパク質-1(MCP-1)
9 ミエロペルオキシダーゼ
10 オステオプロテゲリン
11 Pセレクチン
12 高感度腫瘍壊死因子α(TNF-α)
13 腫瘍壊死因子Ⅱ型受容体(TNFR2)

(5)統計分析
 すべての生物指標は指数変換された。CRPは性別との相互関連が有意だったため男女別々に、それ以外は男女一緒の分析とした。

 皮下脂肪組織および内臓脂肪組織と生物指標との相関評価のため、年齢と性別で補正を加え、部分相関係数を用いた。

主要モデルでは、年齢・性別・喫煙(現在あり・過去にあり・なし)・慢性的アスピリン使用・アルコール摂取・閉経後状況・ホルモン補充療法・身体活動指数で補正を加え、それぞれの生物指標(独立変数)と皮下脂肪組織および内臓脂肪組織それぞれとの多変量線形回帰モデルを組み立てた。皮下脂肪組織および内臓脂肪組織の生物指標それぞれにおける分散説明に対する相対寄与評価のため、決定係数R²を算出した。皮下脂肪組織および内臓脂肪組織両方と有意に相関のあった生物指標に対しては、内臓脂肪組織が存在する中での皮下脂肪組織と生物指標との関連有意性、その反対に皮下脂肪組織が存在する中での内臓脂肪組織と生物指標との関連有意性を多変量回帰分析により評価した。

 皮下脂肪組織および内臓脂肪組織とそれぞれの生物指標との関連程度報告のため、皮下脂肪組織と内臓脂肪組織別々に、標準偏差1増加に対するログ変換生物指標の変化を推量し、それを本来の生物指標測定単位に変換した。

 皮下脂肪組織と内臓脂肪組織の両方を独立変数として含む多変量線形回帰において、それぞれの生物指標とのβ係数比較を行った。さらに、BMIと腹囲を加えたモデルで、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織のそれぞれの生物指標に対する効果量を調べた。また、皮下脂肪組織と内臓脂肪組織を加えた多変量補正モデルで、BMIと腹囲の重要性を調べた。

 追加二次分析として以下の内容を実施した。

 皮下脂肪組織および内臓脂肪組織と、性別・年齢(中央値60歳より上か下か)・喫煙(現在あり・過去にあり・なし)・肥満(あり・なし)との相互関係をBMIと腹囲を除いた多変量モデルで調べた。

 7回目検査時に糖尿病だった人、または心血管疾患であった人を除外して分析を実施した。

 収縮期血圧・拡張期血圧・高血圧治療・脂質異常症治療・総コレステロール値のHDL-Cに対する比率・トリグリセリド値・糖尿病・心血管疾患で補正を加えたモデルで分析を実施した。

 急性炎症状態を考慮し、7回目検査時にCRPが10mg/dL超であった人を除外し、探査分析を実施した。

●結果

(1)対象者特性
 1,250人中女性が52%、平均年齢は60歳±標準偏差9となった。平均皮下脂肪組織は3,023cm³±標準偏差1,329、平均内臓脂肪組織は2,126cm³±1,112であった。

(2)皮下脂肪組織および内臓脂肪組織との相関
 皮下脂肪組織および内臓脂肪組織は、ほとんどの血中炎症生物指標と正方向にどちらも同様な相関があったが、どちらもCD40リガンド・Lp-PLA2・オステオプロテゲリン・TNF-αとは相関がなかった。BMIと腹囲は、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織と同じ生物指標と相関が見られ、加えてTNF-αとの相関もあった。

(3)皮下脂肪組織および内臓脂肪組織との多変量補正回帰
1 CRP・フィブリノゲン・ICAM-1・IL-6・イソプロスタン・MCP-1・Pセレクチン・TNFR2と皮下脂肪組織および内臓脂肪組織両方との関連があった。ミエロペルオキシダーゼは皮下脂肪組織と有意な関連があり、内臓脂肪組織とは境界域関連となった。
2 CRPは性別との相互作用が有意で、皮下脂肪組織とはP=0.02、内臓脂肪組織とはP<0.0001となったが、他の生物指標においては性別による皮下脂肪組織または内臓脂肪組織との有意な効果修飾は存在しなかった。
3 CRPとの関連は以下の通りとなった。
女性においては、皮下脂肪組織の標準偏差が1増加するごとに平均1.7mg/L高くなり、内臓脂肪組織の標準偏差が1増加するごとに1.8 mg/L高くなった。男性においてはより弱い関連で、皮下脂肪組織の標準偏差が1増加するごとに平均0.6mg/L高くなり、内臓脂肪組織の標準偏差が1増加するごとに0.7mg/L高くなった。
4 ほとんどのマーカーにおいて、皮下脂肪組織の標準偏差1増加に伴う推定濃度増加は、内臓脂肪組織の標準偏差1増加に伴う推定濃度増加に相当し、差異に統計的有意性は見られなかったが、二つの例外が存在した。
5 イソプロスタンとの関連が以下の通りとなった。
内臓脂肪組織との関連の大きさが、皮下脂肪組織との関連の大きさのほぼ2倍となり、効果差異における有意性はP=0.002となった。
6 MCP-1との関連も以下の通りとなった。
内臓脂肪組織との関連の大きさが皮下脂肪組織との関連より大きく、効果差異における有意性はP=0.04となった。

(4)皮下脂肪組織と内臓脂肪組織両方との多変量補正回帰
皮下脂肪組織と内臓脂肪組織の両方を多変量補正モデルに加えると以下の通りとなった。
1 皮下脂肪組織と内臓脂肪組織両方が、CRP・フィブリノゲン・IL-6と有意に相関した。
2 内臓脂肪組織のみが、イソプロスタン・MCP-1・Pセレクチンと有意に関連した。
3 皮下脂肪組織のみが、ICAM-1・ミエロペルオキシダーゼ・TNFR2と有意に関連した。

(5)BMIと腹囲を含む多変量モデルへの皮下脂肪組織と内臓脂肪組織の追加
CTに基づく腹部区画測定が、既にBMIや腹囲が含まれているモデルによって説明されるマーカーの変動性度合を増すのかどうかを評価するために、BMIと腹囲を含むモデルに皮下脂肪組織と内臓脂肪組織を別々に加えた結果は、以下の通りとなった。
1 BMI・腹囲でも補正を加えたモデルにおいては、皮下脂肪組織は、フィブリノゲンとの関連のみ有意なままとなった(P=0.01)。
2 一方で、内臓脂肪組織は、CRP・IL-6・イソプロスタン・MCP-1との関連が有意なままとなった。
3 女性においては、内臓脂肪組織の標準偏差1増加に伴うCRPの推定増加量は0.57 mg/Lとなった一方で、男性においてはその半分に過ぎなかった。

(6)二次分析
 既に述べた炎症マーカーとの相関は、収縮期血圧・拡張期血圧・脂質異常症治療・総コレステロール値のHDL-Cに対する比率・トリグリセリド値・糖尿病・心血管疾患を含めて、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織と炎症を関連づける仲介的仕組みとして作用しているかもしれないとの仮説を立てた。これらの共変数をモデルに加えても、結果は実質的に変わらなかった。

 心血管疾患のあった人151人、糖尿病のあった人129人、CRP濃度が10mg/dL超であった人94人を除外しても、本質的に結果は変わらなかった、

 全体として、皮下脂肪組織とフィブリノゲンとの関連、および内臓脂肪組織とCRPとの関連は、統計的に有意であり、年齢による効果修飾程度は小さいとのエビデンスを見出した。

さらに、皮下脂肪組織とCRP・IL-6・イソプロスタンとの関連は、喫煙による効果修飾を検出した。現在喫煙が、本質的に、皮下脂肪組織とIL-6およびイソプロスタンとの関連を除去した。また、どのマーカーに対しても肥満との相互関連は有意とならなかった。

 炎症および酸化ストレスと皮下脂肪組織に対する内臓脂肪組織増加との関連を調べるため、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織三分位におけるCRPとイソプロスタン濃度を比較した。CRPは、男女ともに、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織三分位が上がることに関連があったが、イソプロスタンと内臓脂肪組織との関連は皮下脂肪組織最大三分位群において主に見られた。

 さらに、皮下脂肪組織または内臓脂肪組織を補正に加えた多変量モデルにおいて、BMIと腹囲の重要性を調べた。皮下脂肪組織に関しては、BMIはCRP(男女とも)・フィブリノゲン・IL-6において、腹囲はオステオプロテゲリン・Pセレクチンにおいて有意となった。内臓脂肪組織に関しては、BMIはCRP(女性のみ)・フィブリノゲン・IL-6と有意となったが、腹囲はいずれとも有意とはならなかった。

●考察

 本研究では、地域密着型標本を用い、CT走査に基づく腹部肥満測定値が、いくつかの炎症および酸化ストレスを表す全身生物指標と有意に関連することが分かった。皮下脂肪組織および内臓脂肪組織との関連はほとんどのマーカーにおいて同様であったが、イソプロスタンとMCP-1は内臓脂肪組織との関連がより強かった。皮下脂肪組織と内臓脂肪組織が一つのモデルに入れられると、CRP・フィブリノゲン・IL-6はどちらの脂肪組織貯留物とも相関が見られたが、他のマーカーはどちらか一方との関連のみが見られた。加えて、内臓脂肪組織とCRP・IL-6・イソプロスタン・MCP-1濃度との関連は、全体的な臨床的測定値や中心性肥満を考慮しても有意なままとなり、内臓脂肪組織がBMIや腹囲では完全に説明できない重要な炎症との相関であるかもしれないことを示している。また、腹部肥満は、男性よりも女性においてCRPとの関係が強いことも分かった。本研究からは、皮下脂肪組織および内臓脂肪組織のどちらとも、CD40リガンド・Lp-PLA2・オステオプロテゲリン・TNF-αとの関連は見出せなかった。

↓↓↓当サイトを広く知っていただくため、ブログランキングに参加しました。応援クリックよろしくお願いします。


1 |  2 
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索