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特定秘密保護法は医の倫理と正面衝突

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それは合法なのか

 逐条解説がもっと早く開示されていれば、照会に本人の同意を義務づけるような修正ができていたかもしれないと残念ですが、このまま法が施行されると、本人の同意のない状態で医療機関は情報照会に応じるのかという問題が発生しそうなこと、ご理解いただけたと思います。

 法で決まっていることなんだから、医療機関側は答えるしかないじゃない、と考えるのが一般的なところかもしれません。しかし、条文に医療機関の回答義務が明記されておらず、他の法律への違反を免責されるとも書いていないことに注目してください。義務と思い込んで回答すると、場合によっては違法行為になる可能性があります。

 というのも、「(弁護士会は弁護士の申し出に応じて)公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」(弁護士法23条の2)という法に基づいて弁護士会から照会を受けて回答した京都市の区長が、違法な公権力を行使したとして損害賠償を命じられたという最高裁判例があるからです(コラム参照)。

弁護士会前科照会訴訟

 自動車教習所の技能指導員をしていた原告が解雇され、地位保全を求めて京都地方裁判所と中央労働委員会で争っていました。教習所の代理人だった弁護士が原告の前科と犯罪歴について「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」とだけ記載して弁護士法に基づく照会を申し出、弁護士会が区役所に対して照会し報告を求めました。これに対して区長は原告の前科を回答しました。弁護士を通して事実を知った教習所は、原告が前科を秘匿して入社した経歴詐称を理由に予備的解雇を通告、また教習所幹部らが中央労働委員会や京都地裁の構内などで、大勢の人に対して原告の前科を言いふらしました。

 これについて原告が区長に対して損害賠償を求めて訴えました。二審・大阪高裁は、区長に照会に応じて報告をする義務はあるけれど、前科等の公表は慎重に取り扱われなければならず、犯罪人名簿を一般的な身元証明や照会等に応じて回答するため使用するのは違法であるとして、原告の請求を一部認めました。区長は上告しましたが、最高裁でも、この判断は変わりませんでした。

 この時は弁護士法に従ったけれど、その結果、守秘義務違反になった、と判断されたのです。特定秘密保護法についても、憲法や他の法律との関係を裁判で争った場合、どういう判断がくだされるのか、まだ分かりません。

 ただし、『医療崩壊』の著者である小松秀樹・亀田総合病院副院長は、医療ガバナンス学会発行のメールマガジンの中で以下のように指摘しています。

「司法はどのように関与できるでしょうか。医師が回答を拒否した場合、罰則があれば、司法に持ち込まれる契機になりますが、罰則はついていません。あいまいな強制力で争点を生じさせないようにすれば、司法の場に持ち込まれにくくなります。(編集部補筆・一方で医師が回答に応じた場合、)適性評価の対象となっている個人が、医師や医療機関を訴えることは考えられません。勝訴することが、本人のメリットにつながらないからです。三権分立は権力の暴走を防ぐための仕組みであり、健全な国家運営に必要なものです。照会・回答は、人権に関わる問題であり、司法による判断が重要な領域です。司法をできるだけ排除しようという意図があるとすれば、危険だと言わざるをえません」

 適性評価が違法な公権力行使となっていないか、裁判で争われづらい構造になっているというのです。困ったものです。

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