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女性のテストステロンは遺伝的要素が強い

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 米国での調査で、男性ホルモンの代表であるテストステロンの女性における血中濃度を測定し、母娘や姉妹での遺伝性を調べたところ、比較的遺伝率の高いことが分かりました。

Circulating testosterone and SHBG concentrations are heritable in women: the Framingham Heart Study.
Coviello AD, Zhuang WV, Lunetta KL, Bhasin S, Ulloor J, Zhang A, Karasik D, Kiel DP, Vasan RS, Murabito JM.
J Clin Endocrinol Metab. 2011 September; 96(9): E1491-E1495.
Published online 2011 July 13. doi: 10.1210/jc.2011-0050

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 性ステロイドは、通常の性分化および性と生殖に関わる健康において生涯を通じて欠くことのできないものである。性ステロイドは、女性において、骨粗しょう症・メタボリックシンドローム・2型糖尿病・心血管疾患(CVD)を含む多くの加齢性慢性疾患に影響を与える。性ステロイドと慢性疾患の関係は、とりわけ閉経に伴う、女性のホルモンプロファイルにおける変化に影響される。

 テストステロンとその主要な結合タンパク質である性ホルモン結合グロブリン(sex hormone binding globulin = SHBG)は、性ホルモン感受性表現型の媒介となる。血中テストステロンが高いことは、2型糖尿病やCVDと関連がある。SHBGが低いことはメタボリックシンドロームや2型糖尿病と関連があり、SHBGが高いと股関節部骨折リスクが高くなる。

 血中テストステロンとSHBGは、肥満・喫煙・インスリン抵抗性・2型糖尿病を含む多くの環境因子に影響を受けるが、少なくとも部分的に遺伝性のものと信じられている。男性においては、テストステロンの遺伝率は25~75%、SHBGの遺伝率は30~50%と推定されている。対して、女性における血中の性ホルモン遺伝的影響については、ほとんど知られていない。ある研究では、閉経後の姉妹や双子において、総テストステロンは39%、SHBGは56%の遺伝率であると推定した。本調査の目的は、多世代集団ベース研究であるFramingham Heart Study(FHS)(*1)の家族における成人女性での血中総テストステロンと遊離テストステロンおよびSHBGの遺伝率を推定することである。

●方法

(1)対象者
 FHSの第2世代と第3世代に属する19歳以上の女性で、性ステロイドホルモン測定を実施した対象者が研究適格者となった。エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲンを使用している場合、妊娠している場合、両側卵巣摘出術を受けている場合は除外された。

 1晩約10時間の絶食後、通常は午前7:30~9:30に血液採取が行われ、等分・凍結・-80℃で保存された。テストステロンとSHBG測定に使用されたサンプルは、前もって解凍はされなかった。

(2)分析測定
 総テストステロンは、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法により測定された。SHBGは、蛍光免疫測定法により測定された。遊離テストステロンは、総テストステロンとSHBGから算出された。

(3)統計分析
 分析における共変数として、以下の要素を考慮した。
1 年齢
2 年齢の二乗
3 BMI
4 BMIの二乗
5 2型糖尿病(空腹時血糖値が少なくとも126mg/dlまたは糖尿病薬を服用)
6 喫煙(現在喫煙している、現在喫煙していない)
7 閉経状況(少なくとも1年月経がない)

 遺伝率に関して、第一度近親者(母娘および姉妹)および拡大した関係(おばと姪、および、いとこ)すべての家族関係において分析を実施した。すべてのモデルにおいて、同じ共変数での補正により遺伝率を算出した。遊離テストステロンおよび総テストステロンの遺伝率に関しては、SHBGとは独立した遺伝的影響を評価するために、SHBGも補正因子に加えた。血中テストステロンとSHBGの遺伝的相関を調べるため、二変量分析を用いた。

●結果

(1)対象者特性
 2,685人の女性が対象となった。第一度近親者では、868組の姉妹および688組の母娘の組み合わせができた。他におばと姪、いとこの関係も確認された。

 第2世代の特性としては、年齢がより高く(平均年齢62歳)、圧倒的に閉経後割合が高く(80%)、BMI値がより高く(平均28)、糖尿病割合もより高かった(10%)。

 第3世代の特性としては、年齢がより若く(平均年齢41歳)、圧倒的に閉経前割合が高く(閉経後は10%)、BMI値がより低く(平均26)、糖尿病割合も低かった(2%)。

 SHBGは第3世代の方が高く、一方で遊離テストステロンは第2世代の方が若干高かった。

(2)遺伝率推定
 総テストステロン、遊離テストステロン、SHBGともに、年齢・年齢の二乗・BMI・BMIの二乗・2型糖尿病・喫煙・閉経状況で補正後、強い遺伝率を示した。

 総テストステロンと遊離テストステロンは0.26(標準誤差SE=0.05)、SHBGは0.56(SE=0.05)となった。血中SHBGを補正因子に加えた後でも、血中総テストステロンは0.25(SE=0.05)、血中遊離テストステロンは0.20(SE=0.05)と遺伝率は有意なままであった。

 二変量分析において、総テストステロンとSHBGの間には有意な遺伝的相関が存在し、遺伝相関係数は0.31(SE=0.10,P=3.32×10⁻³)となった。また、総テストステロンと遊離テストステロンも高い遺伝的相関があり、遺伝相関係数は0.54(SE=0.09,P=1.69×10⁻³)となった。これは、予想通りで、遊離テストステロンは、総テストステロン濃度のごく一部であり、総テストステロンとSHBGから算出されるからである。SHBGは、遊離テストステロンとは負の遺伝相関が見られ、遺伝相関係数-0.60(P=1.93×10⁻⁸)となり、特定の遺伝子が血中濃度に対して相反効果を持っていることを示している。

●考察

 本研究では、総テストステロン、遊離テストステロン、SHBGは、26~56%範囲でヨーロッパ家系の白人女性での遺伝性があることが判った。さらに、血中総テストステロンとSHBGは遺伝的に相関関係があり、この両者は遺伝子によって影響を受けるか、SHBGはテストステロンの主要結合タンパク質であることからSHBGに対する遺伝的影響が間接的に総テストステロンに影響を与えるのかもしれない。遊離テストステロンとSHBGは遺伝的に負の相関があり、遺伝子が逆方向への影響を与えていることになり、両者の間の血中濃度に負の相関が見られたことと一致している。テストステロンとSHBGが、女性の性と生殖に関わる健康、それに関わらない健康両面で重要であることを考えると、これらのホルモンにより影響を受ける疾患、とりわけ骨粗しょう症・メタボリックシンドローム・2型糖尿病・CVDの危険因子を明らかにするためには、血中テストステロンとSHBGの遺伝的影響に関するさらなる分析が必要となる。

 血中総テストステロン、遊離テストステロン、SHBG濃度は、女性において有意に遺伝性のあることが見られ、女性における性ステロイドの変化に対して有意に原因となる特定の遺伝子を識別するため、さらなる研究の重要性を強調するものである。母娘や姉妹といった組み合わせでの、総テストステロン、遊離テストステロン、SHBG濃度における強い共有遺伝的構成要素は、根底にある遺伝子のいくつかの潜在的多面発現性を示していることになる。

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