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着色料が子供の発達障害を引き起こす!?その2

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前回から取り上げている合成着色料の話。食中毒や食品汚染への関心はその時々で高まりますが、日常的に食べている食品に普通に含まれている着色料のことは、意外と見過ごされていないでしょうか。今回はさらに一歩踏み込んでメカニズムの話に入ります。ちょっと難しいですが、問題を直視しておきたいところです。

大西睦子の健康論文ピックアップ83

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

前回に引き続き、合成着色料の話題です。

合成着色料は、タール色素※1とそれ以外の非タール色素に分類されます。石油精製のときに得られるナフサ※2を原料とするタール系色素は、安く、安定性あり、自然な着色料より発色が鮮やかなため、多くの加工食品等に使用されています。

最近は、自然食品を好む消費者が増えたため、着色料不使用あるいは安全な自然の着色素材に切り替える企業も増えています。ところが、子供は鮮やかな色の食品を好み、合成着色料を使用したお菓子などを手軽に口にしがちですよね。

そのため、体も小さく発がん物質に敏感な子供たちへの合成着色料の危険性が懸念されています。


厚労省による「マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査」※3(2013年)によれば、20歳以上の日本人では、一日あたり摂取量が一番多い合成着色料は黄色4号(0.224mg/日)で、次いで赤色102号(0.025mg/日)、黄色5号(0.012mg/日)でした。いずれも一日許容摂取量の範囲内であり、安全性の問題はないと判断されました。

ところが欧米を中心に、一日許容摂取範囲内の合成着色料のリスクが盛んに議論されています。そこで今回は、前回ご紹介した米パデュー大学の研究者らの報告http://robust-health.jp/article/cat29/mohnishi/000466.phpを参考に、合成着色料のリスクをご説明します。


●合成着色料の吸収

そもそも私たちが摂取した合成着色料は、体内でどのように吸収されるのでしょうか。

これまでの実験動物およびヒトでの研究で、合成着色料のうちごく少量はそのまま尿中に排泄され、大部分は糞便中に排泄されることが分かっています。Ryan博士らの報告によると、放射性の元素を使ってラットに摂取された黄色4号10㎎を追跡したところ、8%は尿中から、そして90%は糞便から回収されました。

またJones博士らは、4人の健康な男性に、100 mgの黄色4号を閉じ込めたカプセルを与えたところ、尿中には黄色4号の状態では検出されませんでしたが、投与した黄色4号が分解されてできるのと同量のスルファニル酸※4が、尿中に確認されました。

一方、腸では、腸の運動、着色料の特性、酸性度(pH)、腸の健康状態という少なくとも4つの要因が、合成着色料の吸収に影響を与える可能性があります。

合成着色料がそのままあるいは代謝産物として吸収されるかは不明です。一部の子供では、異常な腸の透過性により、有害な分子が腸の細胞内に入る際に合成着色料の吸収も増加する可能性が言われています。腸透過性の増加は、抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬※5、セリアック病※6、クローン病※7、食物アレルギー、乳糖不耐症※8、過剰な果糖の摂取量、環境有害物質にさらされること、低繊維食によっても起こります。


●合成着色料はの血液脳関門※9を通過するの?

青色1号は脳にある血液関門(血液脳関門)を通過します。それ以外の合成着色料は、通常の状態では血液脳関門を通過する報告はほとんどありませんが、Levitan博士らによって、赤色3号は複合体を形成していない時には血液脳関門を通過できることが報告されました。ただ、赤色3号は通常、血漿タンパク質※10に結合するため、赤色3号-タンパク質複合体の通過は制限されます。また、子供のラットの腹腔内にスルファニル酸を投与すると、多動が見られるようになり衝撃への反応が低下しました。こうした仔ラットの行動変化は、スルファニル酸が血液脳関門を通過したことを示唆しています。


●発達障害のメカニズム

合成着色料が子供たちに行動・身体的症状を引き起こすメカニズムについては、合成着色料に対するアレルギーおよび非アレルギー性反応といった「過敏性メカニズム」、合成着色料が必須栄養素の生物学的利用能に干渉し、多動性や他の行動の変化を起こす「栄養効果への影響」(例えば亜鉛や鉄などの栄養効果に問題を起こす等)、さらに「毒性メカニズム」の3つの関与が考えられます。以下、毒性メカニズムについて少し掘り下げます。

これまでに行われた3つの研究で、合成着色料のラットへの生理的な毒性を、血中の生理毒性マーカー(指標)を用いて、合成着色料のラットへの影響を成長障害、肝臓酵素、腎機能不全および血液細胞の4つの観点から検討しています。研究ごとに使われた合成着色料(混合物)も投与量も異なり、実験期間は30~60日でした。投与量はそれぞれ、非常に高用量(0.8 g/kg)、低用量(70~124mg/kg)、そして低用量と高用量の組み合わせ(15mg/kgと500mg/kg)でした。

結果、2つの研究で体重増加(成長)が抑制されました。おしなべて、合成着色料が多くなるほど(70 mg/kg以上)肝臓ストレスの指標となるマーカー酵素の値が有意に増加しました。腎機能を示すマーカー値(総タンパク質、アルブミン※11、グロブリン※12)も有意に上昇し、赤血球と白血球の数にも異常が認められました。最も重要なのは、わずか15 mg/kg使用した研究でも30日後、血清アルカリホスファターゼ(ALP)※13、総タンパク、アルブミン、尿素※14、およびクレアチニン※15は、比較対照群よりも有意に高いレベルを示し、スーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide dismutase;SOD、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素)の値および体重は有意に低くなりました。

一部の研究ではラットに合成着色料の大量投与をしていますが、ラットに使用される薬物用量はヒトに使用される用量よりも高くなければならないと報告されています。なぜなら、ラットの腸の表面積は、ヒトの腸の表面積よりもはるかに小さいからです。 Reagan- Shawらの導いた公式を使って体表面積に基づいて計算すると、黄色4号の場合、ヒトの子供にとって体重1kgあたりの一日摂取許容量である7.5mgは、ラットの体重1kgあたり31.25 mgと変換されます。


さらに、行動毒性学(動物の行動や中枢神経系に対する毒素の効果、ヒトに望ましくない行動を引き起こす効果・必要量についての研究)から見た合成着色料の影響も重要です。。水銀、アルミニウム、鉛、アルコールは、行動毒性物質として古くから研究が進められてきたの例です。ところがこれまで合成着色料の一日許容量について、行動毒性試験は必要とされてきませんでした。合成着色料の行動への影響は、合成着色料の種類や用量で異なることがあり、一日摂取許容量の検討の際にも今後は考慮する必要性があり

これについてShaywitz博士らは、合成着色料の混合物(青色1号、青色2号、緑色3号、赤色3号、黄色4号、黄色5号、オレンジB)を、3つの異なる用量(0.5、1.0、2.0mg/kg)で生後1ヶ月の若いラットに与え、その行動に与える影響に関して多くの評価を行いました。その結果、高用量を投与されたラットでは、運動活性の増加と活動習慣性の減少が見られました。最高用量を投与されたラットは、最大の運動活性と習慣性への大きな影響が観察されました。

同様に、Kamel博士とEl-lethey博士の報告では、黄色4号を2通りの濃度(エサの1.0%と2.5%相当)で加えた飲料水を、16週間、離乳期のラット45匹(比較対照群を加えた3グループ、各群15匹)に与えました。結果、黄色4号を与えられたラットは、多動性や不安の増加、うつ様行動を示しました。

ただしラット他の研究では、黄色4号で非常に活発な行動が誘因されたのとは対照的な生化学的および行動の変化が、様々なな合成着色料について報告されています。


以上がこれまでの知見ですが、今後新しい研究がさらに進むことと思います。まだ不明なことが多いとしても、不必要な着色料は私たちの体にとって全く利益はありませんので、なるべく避けるべきです。以前のコラムでもご紹介させて頂いたように、自然の色にはその意味と価値があります。見た目が不揃いであったとしても、やはり、自然な食品を選ぶべきですね。

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