全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

間食やめたい人はランチにアボカド

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

今回は、「森のバター」と呼ばれ栄養価が高いことで知られるアボカドに、意外な効果があるかもしれないという話をご紹介します。

大西睦子

ハーバード大学リサーチフェロー
医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンに。

 このほど『Nutrition Journal』に米ロマ・リンダ大学の研究者が投稿した論文によると、ランチに新鮮なアボカドを半分加えるだけで、満足感が長時間持続し、無駄な間食を防ぐことができそうだというのです。

 ただし、2002年に米国農務省の監督下に設立された「ハスアボカド委員会」の資金援助で行われた研究の報告なので、アボカドの優れた点を根拠づけようという意図で研究が行われていることには留意する必要ありです。

対象は太り気味な人

 さて、研究の参加者は、健康だけれども過体重(平均BMI28.1)の平均40.8歳の成人26人(女性16人、男性10人)でした。2分の1個分のハスアボカド(日本に輸入されているアボカドの大部分がこの品種)を、参加者のランチに追加、あるいはカロリーが変わらないよう採り入れ、ランチ後の食欲や血糖値、インスリン反応を評価しました。

 参加者は、同じ内容の朝食(オレンジジュース、コーンフレーク、牛乳、スコーン)を摂った後、3グループに分かれてランチを食べます。自分がどのランチを割り当てられ、何を比較されているのか、知りません。摂取したアボカドは平均重量67・5gで約112kcal、タンパク質1.3g、炭水化物5.6g、脂肪10.4gが含まれます。

 対照群である①は、サラダ(緑の野菜、ミニトマト、低脂肪スイスチーズ、イタリアンサラダドレッシング)、フランスパン、チョコレートチップクッキーを含みます。②は、①にアボカドを混ぜ、エネルギーと主要栄養素の内訳を一致させるため、サラダドレッシングやクッキーを減らします。③は、①にそのままアボカドを追加します。

 参加者はランチの前後に、食欲感覚(空腹感、膨満感、満足感、食べたい欲求、どのくらい食べられるか)を自己申告で段階評価しました(ランチ後30分、60分、90分、120分、180分、300分後)。さらに血糖値および血中インスリン値を、調査日の朝とランチ開始後3時間まで同様の間隔で測定しました。

 結果、③では①に比べ、食後5時間経過しても満足感が23%高く維持され、食べたい欲求は28%低く抑えられました。食後3時間なら満足感は26%高く維持され、食べたい欲求は40%も低い値でした。3グループ間で血糖値の違いはありませんでしたが、血中インスリン値はランチ開始後30分から3時間の間、②に比べて①と③が高くなりました。

血糖上昇は穏やか

 この研究からは以下2点が導かれました。

1、ランチにアボカドを半分追加すると、太り気味の成人では、その後3〜5時間、高い満足感が維持されます。食後の満足感は体重管理における重要な因子で、満足感を得られれば間食しないでも済む可能性が高まります。
2、③でアボカド追加分の摂取カロリーと炭水化物が増加しても、血糖値は①より上昇しませんでした。また同じカロリー、同じ炭水化物量でも、②よりは①の血中インスリン値が高くなりました。これはアボカドが加わると、食後の血糖管理が容易になるかもしれないという可能性を示唆しています。

 アボカドによって満足感が維持できた理由としては、他の果物や野菜と同様に、アボカドに含まれる食物繊維や水分による影響が考えられます。また、食欲を調整している脳の満腹中枢や摂食中枢に信号を伝えるインスリンなどホルモンの反応等も考えられます。さらに、食べる行動そのものも満足感に関わってきます。様々な要素が絡みあっていると言えるでしょう。

 一方、この研究結果について注意すべき点は、アボカドによって追加されたエネルギー(112kcal)で、そのために満足感が増加して食欲が低下しただけという可能性も考えられます。ただし、満足感が足りずに間食した場合、もっとカロリーを摂ってしまう恐れは十分ありますし、一方のアボカドに含まれる栄養成分は次のような報告があります。

ルテイン 加齢に伴う白内障や黄斑変性症などの予防に関係すると示唆されています。
水溶性食物繊維 血糖値やインスリンの調節に役立つことが示唆されています。
葉酸 妊娠中の女性の重要な栄養として知られ、赤ちゃんの奇形や神経管閉鎖障害の発生リスクを下げるために不可欠です。脳卒中のリスクを減らすとも言われています。
一価不飽和脂肪酸 血中の脂質構成を健康的に改善できることが報告されており、糖尿病、脳卒中、冠動脈疾患のリスクを低減する可能性があります。
植物化学物質(フィトケミカル) 特定のがんの発症を防ぐことが報告されています。

 間食をやめたいという方、ぜひともランチに採り入れてみてください。

  • 患者と医療従事者の自律をサポートする医療と健康の院内情報誌 ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索