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赤ちゃんの"自主的"離乳って、本当にいいの?

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離乳食、大人の食事と違って塩分に気をつかったり、かたさや大きさを変えたり、意外と手間がかかりますよね。それなのに食べてくれなかったり、けっこう苦労するお母さんもいるかもしれません。でも、実はもっとラクで気楽な方法がよしとされる動きも出てきているようです・・・。

大西睦子の健康論文ピックアップ55

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

さて、前回に引き続き、ボストン日本人マタニティサポートグループの方々との講演会の内容をご紹介させていただきます。今回のトピックは、「産後~離乳食期」です。


日本と米国で離乳食※1の内容・進め方は随分違うため、ボストンに住む日本人女性は、次のような疑問を感じています。


1)日米での離乳食の違い、どちらが正しいの?

●いろいろな素材を混ぜる(日) VS 混ぜない(米)
●魚ベース(日) VS 肉ベース(米)
●うま味あり(日) VS うま味なし(米)


2)授乳と離乳食のバランス、離乳食はどうやって進めればいいの?


佐藤佳瑞智博士は「離乳食期」の栄養に関して、以下のような話をされました。

「離乳食は教科書どおりにはいきません。科学より伝統・伝承が重視されるため、アメリカにいらした日本の女性は文化の違いで悩みますよね。でも、アメリカ式もしくは日本式、あるいは家の伝統的方法など、決まった形式にとらわれず、赤ちゃんとお母さんにとって快適な形で進めればよいのです。離乳食は、ミルクや母乳から食事への移行期に、赤ちゃんが食行動(座って食べる、スプーンを持つ)や咀嚼(そしゃく・噛むこと)・嚥下(えんげ・のみ込むこと)運動の獲得、味覚の形成を通じて、食事を楽しみ、生活リズムを確立するのが目的です。赤ちゃんの栄養はミルクで足りているので、アレルギーの無い赤ちゃんの場合、添加物だらけの加工品や強い味付けのもの、生もの、はちみつ(ボツリヌス菌を含む可能性あり)等の細菌汚染が心配なものを避ければ、赤ちゃんが機嫌よく食べればなんでもよいのです」


これまでの多くの研究が、乳児の食事のうち「固形物を始める時期」に焦点をあてていますが、「異なった離乳食の手法が、その後の嗜好や健康にどのように影響するか」ということに関する証拠を欠いています。


そんな中で昨年、イギリスにあるノッティンガム大学の心理学者は、指でつまんで食べられる固形食で離乳した赤ちゃんは、裏ごしした食品をスプーンで食べた赤ちゃんより、健康な食べ物の嗜好を開発し、太りすぎないこと報告しました。この研究は、離乳食の手法が、その後の嗜好やBMI※2など健康に与える影響を調べた始めての報告です。

Ellen Townsend, Nicola J Pitchford
Baby knows best? The impact of weaning style on food preferences and body mass index in early childhood in a case-controlled sample
BMJ Open2012;2:e000298 doi:10.1136/bmjopen-2011-000298


研究では、1歳8ヶ月から6歳半の子供の親155人に、乳児期の食べ物や離乳経験に関するアンケート調査をしました。アンケートでは、炭水化物、タンパク質、乳製品等の一般的な食品のカテゴリで、151の異なるタイプの食品の好みを調べました。92人の親は、生後6ヶ月から、自分で指でつまんで食べられる固形食を使って、赤ちゃんの自主性にまかせた離乳を実践しました。63人の親は、伝統的な、裏ごしして滑らかにすることで食べ物の歯ごたえや種類に変化を付けた離乳食をスプーンで食べさせました。


結果は、赤ちゃんの自主性にまかせた離乳のグループは、スプーンで育てられたグループより炭水化物を多く好みました。一方、スプーンで育てられたグループは、甘い食品を好みました。さらに、スプーンで育てられたグループは、より低体重や肥満の子供が増加しました。


乳幼児期に健康的な食生活を実践することは、先々の健康的な食嗜好形成に重要と考えられています。最近の子供たちの肥満問題の原因として、甘い物を好んでよく食べることが大きく影響しています。赤ちゃんの自主性にまかせた離乳を行うと、炭水化物の好みに良い影響を与えるようです。


この論文に関して、佐藤佳瑞智博士にも意見を伺い、以下のコメントを頂きました。

「赤ちゃんの自主性にまかせた離乳の是非については古くから議論されていて、Crala Davis博士の研究が有名です。赤ちゃんとお母さんを研究施設に隔離して、お母さんには手を出させず、用意した食べ物を赤ちゃんに好きなように食べさせた結果、栄養的に必要十分だった、ということですが、数々の臨床試験がそうであるように、やはりミスリーディングがあります。一番重要なのが、用意した食べ物は研究者側が恣意的に用意したものであるということだと思います。Crala Davis博士の研究の場合、用意している食品がもともと健康的です。この中から選べばどう選ぼうと健康的になるだろうと。


実際の赤ちゃんの生活を考えると、やはり誰かが用意したものを食べているわけで、多くの場合母親の選択に依存しているわけです。


家庭によっては、健康的な食品だけでなく砂糖だらけのお菓子からしょっぱいソーセージ(なぜか子供は大好き)、脂っこいお父さんのビールのおつまみや人工甘味料まみれのジュースまでいろんな"悪い"食品にさらされることが多いですが、こうした現状の評価をふまえても赤ちゃんの自主性にまかせて大丈夫なのでしょうか?小麦ふすまビスケットとチョコレートクッキーなら、間違いなくチョコレートクッキーを選ぶと思いますよ?


ミルクや母乳だけの世界から食生活の大海に繰り出す赤ちゃんには、やはり適切なガイドが必要だと思います。離乳期の栄養や味覚形成がその後の健康に重要だという事実はたくさんの研究に裏付けられているものの、「ガイド」の養成や評価にはあまり力が注がれていない気がします。個人的にはそれこそ重要だと思うのですが」


やはり、赤ちゃんの完全な自主性は無理で、母親の影響が強いのですね。佳瑞智先生のコメントを参考に、すくすくと元気な赤ちゃんを育てて下さいネ!

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