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"がんに効く"食べ物は本当?

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出てきては消えつつ、絶えることのない「○○にいい食べ物」というウワサ。何かを食べるだけで健康になれるなら、と、ついつい信じて飛びつきたくなる気持ちも分かりますが、その効果のほどは?今回は、米国のテレビ番組が報じたそんな"ミラクルフード"を、科学的な、冷静な視点から検証しなおした論文です。

大西睦子の健康論文ピックアップ36

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

米国で人気のTVショー「ドクター・オズ・ショー」は、コロンビア大学心臓胸部外科教授で現役の医師として活躍中のドクター・オズが司会を務める健康情報番組。肥満、糖尿病、成人病やがんなどの予防に役立つ情報を、楽しく、わかりやすく提供しています。現在、世界約140カ国で放映されており、日本でもご覧になっている方もいらっしゃるでしょうか(BSで放送中です)。医療、美術や調査など、なんと総勢150人以上ものスタッフが番組の制作に関わっており、米国における一般の人の健康知識は、この「ドクター・オズ・ショー」の影響をかなり大きく受けていると考えられます。それだけに、企業や研究者たちもドクター・オズの発言に注目し、時に批判的なこともあります。


先日の「ドクター・オズ・ショー」で、「エンダイブ※1、赤玉ねぎ※2とシーバス(スズキ)※3は、卵巣がんのリスクを75%まで減少させることができる食品」と紹介されました。それに対して、「この情報を支持する科学的証拠は限られている」と、ミネソタ大学の研究者らは雑誌『Nutrition and Cancer』に批判的なコメントを出しました。

Maki Inoue-Choi , Sarah J. Oppeneer & Kim Robien
Reality Check: There is No Such Thing as a Miracle Food,
Nutrition and Cancer, 65:2, 165-168


研究者らは、メディアで取り上げられる、科学的に証明された「がんに効く」食品、"ミラクルフード"や"スーパーフード"が本当に存在するかどうか議論しています。皆さんも、テレビや雑誌で見つけた健康情報を、本当に信じていいのか疑問に思われたことはありませんか? これを機会に、メディア情報の賢い利用方法を、いっしょに考えてみませんか?


今回の論文で、著者らは以下のような批判を行っています。

1.
エンダイブに含まれるフラボノイド※4のケンフェロール※5は、確かに試験管内での研究では「卵巣がんのがん細胞を死に追いやり、がん細胞に栄養や酸素を運ぶ新しい血管(=血管新生)を遮断する」という報告が複数ある。しかし実際のところヒトにおいては、エンダイブ摂取と卵巣癌の関連を示す研究は1つしか報告されておらず、しかもその結果は偶然観察された可能性がある。さらに、エンダイブよりケンフェロールをもっと含む他の野菜と、卵巣がんの関係は認められていない。

2.
赤玉ねぎのフラボノイドは、「卵巣がんを防止することができる」と推奨されていたが、これはたった1つの症例対照研究※6の結果に基づいており、しかもその研究は、対象者をがんの診断後に評価している。実際、3つの大規模な前向き研究※7(これらの研究では、食事摂取量のデータをがんの診断前に収集)では、玉ねぎの摂取と卵巣がんのリスクとの間に関連性はなかった。また番組では、白や黄色の玉ねぎより赤玉ねぎが特別に推奨されているが、赤玉ねぎに白または黄色の玉ねぎ以上のフラボノイドが含まれているかどうかは疑問だ。実際、10品種の玉ねぎ(赤1、白1、黄色8)の総フラボノイドの内容を比較した調査では、黄色の玉ねぎの2品種(Western YellowとNew York Bold)が最大のフラボノイド(それぞれ6 69.2 mg/ 100 gと55.2 mg/100 g)を含有していて、その次が、赤玉ねぎ(Northern Red, 35.1 mg/100 g)だった。

3.
シーバス(スズキ)が卵巣がんに対し抗がん作用があると紹介されていた理由は、オメガ3脂肪酸※8の含有量が高く、血管新生を遮断するという報告があるからだ。しかし、魚の摂取と卵巣がんリスクとの関連の証拠は説得力がない。これまでの研究では、魚をたくさん食べる人たちでも卵巣がんのリスクはわずかに減少するだけだった。それどころか、逆の結果も1つ報告されている。そもそも、シーバスに比べてオメガ3脂肪酸を非常に多く含む魚は他にもたくさんある。


著者らは、マスコミのこれら"ミラクルフード"報道は、多くの場合、1つのマーケティング・ツールとなっていると批判しています。ミラクルフードの話は雑誌や広告の販売を伸ばすことから、食品産業が自社食品・製品が卓越していることを示すために研究費のスポンサーとなっている場合もありますし、サプリメント業界は売り上げを押し上げることを見込んでいます。


私たちの実生活では、一つの食品をずっと食べ続けるわけではなく、毎日数回、様々な食品を摂取します。ですから、私たちががんの予防を考える際には、身体活動などのライフスタイル、遺伝やその発現にまつわる要因を考慮するべきだと著者は論じています


さらに、同じ食品でも健康に有益・有害、両方の影響があるかもしれません。 例えば、適度なアルコール消費量は心血管疾患のリスクを減少させることが示されていますが、乳癌のリスクを高めるとも言われています。同様に、スズキはオメガ3脂肪酸の良い栄養源になるかもしれませんが、水銀※9含有量を考慮することも重要です。


最終的に、著者らが推奨する世界がん研究基金(World Cancer Research Fund; WCRF)と米国がん研究機関(American Institute for Cancer Research; AICR)による、がんの予防法は以下です。

1)体重は、できる限り正常範囲内にとどめること
2)毎日の日常生活で、少なくとも30分は、身体活動を行うこと
3)高カロリー食品の消費を制限し、甘い飲み物を避けること
4)野菜、果物、全粒穀物や豆類などの植物由来の食品を多く食べること
5)赤身の肉(牛肉、豚肉、羊肉など)の摂取を制限し、加工肉を避けること
6)アルコール飲料は、一日男性は2杯、女性は1杯までに制限すること
7)塩分、または塩辛い食品の消費を制限すること
8)サプリメントより、バランスのいい食事を摂取すること
9)乳児の6ヶ月間は、母乳で育てることを目指す
10)がん経験者は、がんの治療後は、専門家に栄養に対する意見を求めること


さて、ここでみなさんに質問です。もし、「エンダイブは卵巣癌のリスクを75%まで減少させることができる食品」とテレビで報道されたら、あなたはどうしますか?

a)エンダイブをさっそく買いにいく
b)エンダイブに関して、自分なりにインターネットなどで調べてみる
c)本当の情報か確認するため、その論文を捜す
d)そんな情報は信じない
e)その他


それぞれの立場で、選ぶ答えが違うと思います。私がみなさんにお薦めしたいことは、まず先に引用した予防法を頭に入れておくことです。その上で、例えば、エンダイブの情報をテレビで知ったら、まず栄養価を調べてみてください。そうすると、エンダイブはカリウム※10、カルシウムやカロテン※11が豊富ということに気づきます。また、冬が旬ということもわかります。予防法4)にあるように、野菜リストにエンダイブも、特に旬の時期に加えてみるといいと思います。といっても毎日エンダイブだけを食べる必要はありません。いろんな種類の野菜をバランスよく食べることがいいのです。


確かにメディアの情報は、誇張されることが多いですよね。でも、メディアの情報なしでは、気づかないことも多くあります。ですから、情報を100%信じるのではなく、端から排除するのでもなく、上手く活用するのがよいのではないでしょうか。実は、私はエンダイブって知りませんでした。。。週末にスーパーに行ってみて、美味しそうなら買ってみようかなって思います!

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