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1型糖尿病 溝尾圭緯子さん(35歳)
※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。
*このコーナーでは、日本慢性疾患セルフマネジメント協会が行っているワークショップ(WS)を受講した患者さんたちの体験談をご紹介しています。同協会の連絡先は、03-5449-2317
短大1年の時に1型糖尿病を発症した溝尾圭緯子さんは、病気を受け止めきれず、ほぼ2年に1度のペースで、教育入院を繰り返してきました。
神戸市で自動車整備工場を経営する父と専業主婦の母との間に生まれ育った溝尾さんは、母親に勧められて短大の栄養士コースに進みました。
しかし短大1年生の8月、やけに喉が渇き、だるさを感じているうちに意識を失って救急車で病院へ運ばれました。1型糖尿病でした。生死の境をさまよい、3カ月入院してから退院しました。
病名に実感がわかず、生活の参考になればと思って患者会に入りましたが、幼いうちに発症した子供たちが多くて、なじめませんでした。
発症の翌冬に阪神淡路大震災に遭遇し、インスリンが手に入らず苦労したということもありました。
お世辞にも模範患者とは言えず、食べ過ぎて、でも見合った量のインスリンを注射することができないという状態が続きました。いけないことは分かっていましたが、罪悪感が余計に過食を呼ぶという悪循環でした。
短大を卒業する時に3カ月の教育入院したのを皮切りに、ほぼ2年に1度ずつ教育入院を繰り返しました。
クリスマスの出会いから
患者会からは遠ざかっていましたが、一人だけ近所に同じ1型糖尿病患者の友人がいました。その友人が、わざわざ東京女子医大まで受診しに行き、それが縁で同大学で開かれる1型患者たちのクリスマスパーティーに誘われるようになりました。
それほど気乗りしていたわけではないものの、たまたま28歳の時に行ってみたらとても楽しく、翌年も続けて行きました。そこで東京勤務の友人ができ、彼女からセルフマネジメントプログラムのことを知らされたのです。
とかくマイナスの方に傾きがちな自分の感情を吐き出したいと強く思っていたので、そういう自分の感情を何とかしてくれる場なんじゃないか、と非常に興味を覚えたと言います。08年9月に兵庫県尼崎市でワークショップ(WS)が開催された時、土日には取りづらい休みをやりくりして受講しました。
でも、実際に参加してみたら予想と違っていました。感情をコントロールするテクニックは確かに教えてもらえて、これは悪くはないなと感じると同時に、思ってた以上に内容が難しく、1回では十分にこなしきれないなということも感じました。
WSの内容から、特筆するほど何かを得たということもありませんでしたが、貴重な出会いはありました。リーダーが、同じ病を抱える神内謙至医師(10年2月号参照)で、ちょうどインスリンポンプを使ってから1年ほど経ち、ホノルルマラソンに挑戦しようとしているところでした。
ポンプの存在は知ってはいましたが、カテーテルが詰まったり、皮膚がかぶれたりするのでないかと不安に感じていました。しかし神内医師に尋ねて、機械の性能が向上し快適に使えていることを知りました。
ちょうど、その12月に子宮筋腫が見つかりました。外科手術後の傷の治りをよくするには血糖値のコントロールが欠かせないということもあり、少しだけ悩んでポンプを導入することに決めました。
09年3月にポンプを導入して以来、どうしても10を切れなかったHbA1cの数値が、8ぐらいで何とか落ち着くようになりました。心のゆとりがいい方へ向いたのか、過食もゼロではないけれど、以前に比べると量や回数は減ったと言います。
ワンポイントアドバイス(近藤房恵・米サミュエルメリット大学准教授) ワークショップから得られるものは参加者によって異なります。ワークショップでは6週間でたくさんのことを学びますが、そのすべてをマスターしなければいけないということではありません。自分にとって必要なことを1つでも得られたら、それは大きな進歩です。 多くの参加者が良かったと言われることに、様々な病気の方との出会いがあります。同じ病気や異なる病気の人、若い人から年配の人までいろいろです。病気に関して言えば、2009年度は全国のワークショップに78の異なる病気の方が参加されています。そうした出会いをきっかけに、自分にとって役立つ情報を得る方法を知り、ひとりでは思いつかなかったアイデアを得られることもあります。