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自然が頭と心を癒す――科学的に証明

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大自然に触れたら、心のもやもやが晴れわたって気分がすっきり、ストレスもどこかえ消え去ってしまった!という経験をしたこと、ありませんか? 想像してもそんな感じがしますよね。今回は、それがイメージだけのものでなく、科学的にも証明されたという話です。

大西睦子の健康論文ピックアップ35

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。


幸せでポジティブな気持ちになると、やる気が出ますよね。あらゆることに対して心も体も積極的になり、仕事もプライベートも充実してくるものです。ところが現実には、毎日忙しくて、体が疲れていたり、痛みを感じている方が多いと思います。体だけでなく、集中力が低下してミスをしたり、やる気が出ない、という人も多いですよね?原因は、"脳の疲れ"です。


英国エジンバラ大学の研究者らは、私たちの環境・行動・感情、3つの関係に興味をもちました。特に、木々の生い茂った公園のような、自然の緑地を散歩することによって、ストレスから来る"心の疲れ"が癒されるかどうかを調査しました。その結果が、先日『The British Journal of Sports Medicine」に報告されたのでご紹介させていただきます。

Aspinall P, Mavros P, Coyne R, Roe J.
The urban brain: analysing outdoor physical activity with mobile EEG.
doi:10.1136/bjsports-2012-091877


これまでの研究では、たくさんの木々や公園のそばに住む人は、 コンクリートに覆われた都市に住んでいる人に比べて、コルチゾール※1と呼ばれるストレスホルモン※2のレベルが低いことが示されています。他の研究では、自然に囲まれた環境や緑地は、多忙な生活によるいらつきから神経系を鎮静させることを示唆しています。ただし、こうした環境から来るストレスと、人間の思考や推理、記憶、随意運動※3・感覚などの中枢である大脳皮質※4の活動変化については、科学的に証明することができませんでした。


ところがモバイル脳波計と呼ばれる新しい技術が、それを実現しました。要は持ち運び型の脳波測定器で、屋外を歩きながら脳波※5を測定することできるようになったのです。エジンバラ大学の研究者は、12人の健康なエジンバラ大学の学生の頭皮に、「Emotiv EPOC」という低コストのモバイル脳波記録計を取り付けました。そして、環境の大きく違う3つのゾーンを約25分ずつ散歩してもらい、それぞれの感情の動きを記録しました。


3つのゾーンはほぼ同じ距離です。ゾーン1は歩行者の多い歴史あるショッピング街で交通渋滞は軽度、ゾーン2は緑に囲まれた空間、ゾーン3はコンクリートのビル街で交通渋滞も多い賑やかな商業地区です。12人の学生はどのゾーンも同じように、急ぎすぎず遅すぎない、自分のスピードで歩くように指示されました。モバイル脳波計は、 学生たちのリュックサックに入ったコンピューターに脳波のパターンを送信します。つまり脳波が、短期の興奮、欲求不満、注意深さ、覚醒、瞑想という5つに識別され、連続的に記録されました。


結果は、学生たちが緑の空間(ゾーン2)を歩いたときの脳波は、都市部(ゾーン3)を歩いたときと反対のパターンを示しました。緑の空間では、欲求不満、注意深さや興奮が抑えられて、瞑想がより高まりました。さらに緑の空間(ゾーン2)から賑やかな商業地区(ゾーン1)に移動すると、今度は欲求不満、緊張や興奮が高まったのです。特に、交通量の多い商業地区を通ったとき、参加者の脳波は一貫して注意深さと欲求不満、覚醒のパターンを強めました。以上から研究者らは、自然の公園などの緑地が脳の疲労を減らすと結論づけました。


実は、今回この論文を選んだ理由は、私自身が多忙で疲れてしまい、「何かストレス解消にいい方法がないかな」と思ったからなのです......。もちろん、運動や美味しいものを食べること、睡眠などもストレス解消に役に立ちますが、何か新しいことを試したいと思いました。この論文を読んで「なるほど!」と共感し、実際、週末に緑の多いところを歩いてみたら、心も体も緊張がほぐれました。みなさん、せっかく春になりましたし、ちょっと気分転換に、緑の中を歩いてみて下さい。悩んでいたことも小さく感じて、気持ちがリフレッシュしますよ!

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