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筋肉注射なぜ減った?
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皮下注射はいいの?
注意深く読むと、抗生剤などが組織を障害した可能性については指摘されているものの、筋肉注射そのものが筋拘縮につながることは証明されていません。それでも「筋肉注射は避けるべきもの」という結論部分だけが、医師の間で広く共有されるようになりました。
提言に従って、風邪で解熱剤や抗生剤を投与する際は、ほとんどが飲み薬に置き換わりました。
さらに、予防接種について特段の言及はなかったにもかかわらず、何の疑いもなく皮下注射に置き換えられました。厚労省の「予防接種実施規則」でも、公益財団法人予防接種リサーチセンター(厚労省の天下り団体)が作っている「予防接種ガイドライン」でも、ほとんどの定期・任意接種ワクチンがハッキリ「皮下注」と指定されています。
こうして、予防接種は皮下注射で行うというのが、医療従事者にとっても国民にとっても常識になったのです。
しかし、新潟大学大学院の齋藤昭彦教授によれば、生ワクチンを除き、「世界の標準的なワクチン接種方法は筋肉注射」とのことです。海外の複数の研究で、筋肉注射によるワクチン接種は皮下注射に比べて、
①局所反応(赤み、腫れ、痛み)が少ない
②抗体のつきやすさは同等か、ワクチンによってはそれ以上と報告されています。(Petousis-Harris H, 2008)
皮下注射の方が局所反応は出やすいのに、免疫がつきにくいということになります。特に、ワクチンの効果を高めるアジュバント(免疫賦活剤、抗原物質の作用を強める添加物)が含まれる製品は刺激が強いため、その局所反応軽減を目的として、米国疾病予防管理センター(CDC)や諸外国のガイドラインでは筋肉注射による投与を推奨しています。
それに対して我が国の「予防接種ガイドライン」には、通常見られる局所反応への対策として、「なるべく皮下深く接種する」と、筋肉注射に近づけるような曖昧な記述があるのみです。
CDCなどのガイドラインが正しいのであれば、我が国のガイドラインは、注射の効果を低め、副反応を増やす方法を、あえて国民に押し付けていることになります。逆にCDCの方が間違っているなら、黙っていないで教えてあげるのが親切というものです。
このところHPVや風疹など予防接種に関するニュースが多く、国民の関心も高まっています。せっかく盛り上がっているので、予防接種の技術的な規定についても、改めてエビデンスに基づく合理的な再検討と、その周知を期待したいところです。