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高脂肪・高ショ糖食と認知障害

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 脂肪は砂糖の摂り過ぎは肥満に直結するものですが、「私は太らない体質だからたくさん摂っても大丈夫」という人もいらっしゃるかもしれません。でも、コトはそう単純ではないのです。太りにくい人でも、脂肪と砂糖の摂り過ぎは"脳"に悪影響と聞いたらどうでしょう・・・。

大西睦子の健康論文ピックアップ25

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

 勉強、運動、仕事、お付き合いなど、毎日、本当に忙しいですよね。時間を節約するために、安くて簡単に手に入るファーストフードや加工食品を利用されている方も多いと思います。前回も少し触れましたが、ファーストフードや加工食品は、いわゆる「Western diet」=欧米型の食事(ここでのdietは、いわゆる減量の意味でのダイエットでなく、食事や食生活を意味します)の代表で、飽和脂肪酸※1や精製※2された炭水化物※3を多く含みます。そのため「high-fat(脂肪)/sucrose(ショ糖※4) diet」の頭文字を取って「HFS diet」(高脂肪・高ショ糖食)とも呼ばれます。

 飽和脂肪酸はバターやラードなど、肉類や乳製品の動物性脂肪に多く含まれていて、中性脂肪やコレステロールを増やす作用があります。また、白米、砂糖、小麦粉などの精製された炭水化物は、血糖値※5を急激に上げます。一方、精製されていない蕎麦、玄米や全粒粉穀物などは、食物繊維を含むため血糖値の上昇は緩やか(低GI※6)で、ミネラルやビタミンも豊富に含んでいます。ですからHFS dietを取り続けると、肥満や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしやすいのです。

 のみならず、HFS dietを食べ続けると脳にも影響することがわかってきました。認知機能とは、理解、判断、学習、計算、コミュニケーション、記憶、実行など、人の知的機能を総称した概念です。このほどHFS dietが、長期的な脳の認知機能や報酬系※7に影響を及ぼすことを、オーストラリアのマッコーリー大学のFrancis博士とStevenson博士がレビューとして雑誌『Appetite』に報告しましたので、ご紹介させていただきます。

Francis H, Stevenson R.
The longer-term impacts of Western diet on human cognition and the brain.
Appetite. 2013 Jan 3.
pii: S0195-6663(12)00514-4.
doi: 10.1016/j.appet.2012.12.018.

 過去30年間、多くの動物実験によって、HFS dietが脳の様々なシステムを傷つけることが報告されてきました。博士らは、神経心理学的、疫学的、そして神経画像データを用いて、私たち人間でも同じようなことが実証されるかを調べました。博士らは特に、学習や記憶、認知、快楽と関わりのある脳の海馬※8と前頭前野※9に対して、HFS dietがどのような影響を及ぼすかを検討しました。

 ヒトを対象としたこれまでの研究で、飽和脂肪酸を多く含む食事は、記憶、学習や注意力などさまざまな認知機能に障害を及ぼすことが検証されています。しかも、中高年者だけではなく若年者においても、同様な結果が報告されています。

 例えば2011年のHolloway博士らの研究では、19~28歳の健康な男性を、脂肪70%の高脂肪食グループと脂肪24%の標準的な脂肪食グループにわけランダム化比較試験※10を行った結果、5日間の摂取後に、高脂肪食グループでは注意力や処理能力が低下したことを報告しています。また、精製された炭水化物でも、認知機能に対し同様の悪影響が見られました。さらに、2009年のAkbaraly博士らの研究では、脳卒中の既往歴がない35~55歳の成人において、加工食品(菓子、加工肉、精製された炭水化物、高脂肪食品)の摂取が、語彙や言葉の流暢さのパフォーマンス低下に関与することが報告されました。また、HFS dietの摂取を減らすことで認知機能が改善したことも確認されています。さらに別の研究から、高脂肪食や飽和脂肪酸の多い食事が、アルツハイマー病※11やパーキンソン病※12などの神経変性疾患の発症リスクを高めることも分かってきました。

 大人だけではなく子供たちの食生活も大きく変化しました。HFS dietの摂取が増えていることから、HFS dietが子供たちの脳神経機能に及ぼす影響も懸念されています。2007年、Benton博士らによる研究では、6~7歳の子供に血糖値を急上昇させる食事(いわゆる高GI食※6)を摂取させた後、注意力や記憶力の低下が認められたことを報告しています。さらにHFS dietは、ADHD(注意欠陥・多動性障害;Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)※13の病因のひとつとしても考えられています。

 これらの研究は、多くの動物実験で因果関係が明らかにされてきました。すなわちHFS dietは、脳の海馬が司る学習と記憶、あるいは前頭前野の司る注意力、行動抑制、コミュニケーション、記憶といった認知機能に関与を損なうことが示唆されています。では、どのようにしてHFS dietは特定の脳領域に影響するのでしょうか。これまでの研究で、脳由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor;BDNF)※14、酸化ストレス※15、神経の炎症、血液脳関門※16への影響が考えられていますが、ちょっと長くなりますので、これらの詳しい話は来週に続きます。

 勉強、仕事や運動などの効率を上げるには、やはり質のいい栄養を摂ることが大切です。忙しいときこそ、ファーストフードや加工食品ではなく、バランスのいい食事を摂りましょうネ。次回、続きをお楽しみに!

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