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再生医療への期待は過大 まだ立体構造を作れない

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。


「成功例」の数々

 現在、再生医学研究者たちによって実際に研究されているのは、受精卵から微細な形状を伴う器官が構築されていくまでの個体の発生過程を参考にしながら、ES細胞やiPS細胞を試験管内で誘導し、組織や臓器を作る試みです。

 理化学研究所「発生・再生科学総合研究センター」の永樂元次副ユニットリーダー(当時)らは2011年、マウスES細胞から眼の網膜の原基(種)である「眼杯」を試験管内で立体構築することに成功。さらに、この眼杯の神経網膜部分の培養を続け、眼と同様の多層構造を持つ神経網膜を形成させました。

 熊本大学発生医学研究所の西中村隆一教授らはまず、腎臓の元になる腎臓前駆細胞が、胎児の下半身の元とされる「体軸幹細胞」を経て形成されることを発見。この細胞を腎臓前駆細胞にするのに必要な成長因子(タンパク質)も特定したうえで、ヒトiPS細胞から試験管内で腎臓前駆細胞を作製し培養したところ、長さ2ミリの腎臓ができました。血液の老廃物を濾し取る糸球体と、栄養分や水分を再吸収する尿細管を伴っています。三次元の腎臓組織を作製したのは世界初で、昨年12月、米の学術誌『Cell Stem Cell』オンライン版に発表しました。ただ、尿排出などの機能はなく、腎臓として使えるようにするには膀胱、尿管なども必要です。

 横浜市立大学大学院医学研究科の谷口英樹教授らの研究グループは昨年7月、立体的で血液も流れ本来の機能を有する微小な肝臓を、ヒトiPS細胞から作製することに成功したと発表しました。

 機能する臓器の作製は世界初の快挙です。発生初期の臓器形成過程をまね、ヒトiPS細胞から分化誘導した内胚葉細胞(大腸、肺、肝臓などの器官を形成)を、血管内皮細胞、組織を支える間葉系細胞と一緒に培養。すると、細胞たちが勝手に集合し、相互作用しながら直径5ミリ大の球状の肝芽(肝臓前駆細胞)へと形成されました。

 肝芽には人が手を加えていないのに血管網ができ、タンパク質の合成や薬物の代謝など、ヒト肝臓が持つ機能も確認。これを肝不全マウスに移植したところ、30日後の生存率は非移植群が30%を切ったのに対し、移植群は90%を超え、肝臓機能を発揮していることが示唆されました。

 この結果を受けて、谷口教授らのグループは、iPS細胞から成熟前の臓器である「臓器の種(原基)」を試験管でつくり、体内移植後に成熟させ機能させるという治療概念を提唱しています。

ものづくりの応用も

 組織・臓器の形成に、最先端のものづくり手法で挑む研究も現れました。佐賀大学大学院工学系研究科の中山功一教授とバイオベンチャー「サイフューズ」(東京) は、ばらばらの細胞同士を集めると自然に小さな細胞塊(スフェロイド)になる性質を利用。直径0.5ミリほどになった細胞塊を、針同士の間隔が狭い剣山のような足場に一つずつ差し込んで積み上げると、塊同士が融合。足場を抜いても形状は安定するため、自在な形、大きさの立体組織を作ることができます。

 このシステムを3Dプリンターに組み込んだ「バイオ3Dプリンター」なら、欲しい形状の3次元データを入力し細胞(複数種類も可)を投入すれば、生体に近い組成の立体組織・臓器を自動形成できるそうで、平滑筋細胞と血管内皮細胞、線維芽細胞を用いた人工血管の作製技術を確立したといいます。

 他に、異種移植による「臓器工場」の研究も進んでいます。例えば、膵臓が生まれつきない形質を持つブタの胚にヒトiPS細胞を入れ込みます。すると、成長する過程でブタの体内でヒトの完全な膵臓が形成されるので、それを取り出し臓器移植する構想です。

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