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がん情報、週刊誌は有用だが鵜呑み厳禁

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 東京大学の研究グループが、日本の主要週刊誌6誌で、がんに関する記事や広告がどのくらい掲載され、どのような内容になっているか分析をしたところ、一般大衆ががん情報を手に入れる手段にはなるものの、エビデンスの存在しない治療についての記事も目立ち、一部の専門家によるコメントに偏っているなど、情報の正確性については一考の余地があるとの結論が出ました。

Cancer Articles in Weekly Magazines: Useful Media to Deliver Cancer Information to the Public?
Masayoshi Nagata, Morihito Takita, Yukiko Kishi, Yuko Kodama, Tomoko Matsumura, Naoko Murashige, Yukio Homma and Masahiro Kami
Jpn. J. Clin. Oncol. (2013) doi: 10.1093/jjco/hyt004 First published online: January 30, 2013

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 日本の週刊誌は、発行部数270万部以上であり、一般大衆への情報伝達における重要な役割を担っている。娯楽・ゴシップ・政治・経済など、幅広い情報を提供しており、しばしば、がんに関する記事が含まれている。しかしながら、雑誌におけるがん関連記事は、体系的に分析されてきてはいない。

 本研究では、日本の主要6週刊誌における、がん関連記事および広告を調査し、がんに関する公共の利益における傾向を示した。

 2009年7月から2010年12月までに査定した総記事数は36,914本で、そのうち1.9%にあたる696本が、がん関連記事であり、総広告数は21,718本で、そのうち1.6%にあたる340本が、がん関連広告であった。研究期間中で、がん関連記事数は上昇傾向を示した。記事では、肺がんに関するものが145本、泌尿生殖器がんに関するものが122本であった。最も多い内容は、治療法と診断に関するもので340本、患者の症例報告が160本であった。有名なコメディアンが自分の前立腺がん診断について明かした後では、前立腺がん関連記事が、月に2.0本から6.6本へと増加した。免疫療法が、疑わしい民間療法も含めて、記事や広告で最も頻繁に扱われているがんの治療法で、全体の32.9%を占めた。少数の腫瘍学専門家が繰り返しコメントを出しており、コメントの35.6%は、たった5人の医師によって提供されていた。

 週刊誌におけるがん関連記事は、一般大衆へのがん情報を提供する一般的な紙媒体であるが、提供される情報が確立されていない治療法や偏った見解に重きを置いている可能性がある。

●方法

(1)週刊誌からのがん関連データ収集手順
 週刊誌の定義は、紙に印刷された出版物で、通常定期的な週単位の予定に従い出版される種々の内容を含むものとした。女性誌や専門誌ではない雑誌から、発行部数が最も多い6誌(週刊現代・サンデー毎日・週刊文春・週刊朝日・週刊新潮・週刊ポスト)を選択し、2009年7月から2010年12月までがん関連記事および広告を調査した。広告は、掲載費を払って雑誌に告知を出すことと定義した。ほとんどの広告記事では、ページ下部に「広告ページ」という記載がされている。雑誌記者によって書かれたクリニックや医薬品の紹介記事は、広告から除外した。「がん」、「白血病」、「リンパ腫」、「肉腫」という語を含むすべての記事および広告を抽出し、数を数えた。がん関連記事および広告の数における変化は、記録し分析した。2人の研究担当者が、少なくとも2回、6誌のすべての記事を詳しく調べ確認した。

(2)がん関連記事および広告の分類
 がん関連の記事および広告は、がんの原発部位・内容の種類・治療の種類によって分類した。「民間療法」は、権威あるどの医学文献にも有効性に対するエビデンスが見当たらない治療と定義した。2人の研究担当者が個々に記事を評価し、それぞれの治療が民間療法にあたるかどうか議論し決定した。

(3)雑誌におけるがん関連記事の傾向表示
 研究期間中でのがん関連記事において引用された、がんに侵された有名人や腫瘍学専門家からのコメントを評価することにより、週刊誌でのがん報道の現状を調査した。

●結果

(1)がん関連記事および広告の総数
 6誌から、がんに関連する記事696本と広告340本を抽出した。がん関連記事は、すべての記事36,914本中の1.9%を占め、がん関連広告は、すべての広告21,718本中の1.6%を占めた。がん関連記事の数と割合は、研究期間中にすべての雑誌で徐々に増加した。2010年の7~9月までのがん関連記事数151本は、2009年の同時期での69本の2倍以上となった。週刊新潮が最も多い160本のがん関連記事を掲載し、最も少なかったのは週刊ポストの79本だった。週刊新潮では、放射線科医によるがんに関する連続コラムが掲載されていた。広告では、週刊朝日が100本で最も多く、最も少なかったのはサンデー毎日の23本だった。

 記事のうちのいくつかは、がんにかかった有名人について報じたり、がんで亡くなった有名人の話を語ったりしていた。例えば、最も有名なコメディアンの1人である間寛平氏は、2010年の1月に前立腺がん診断を受けたことを明らかにした。その話が掲載された後で、前立腺がんに関する記事が月に2本から6.6本に増えたのである。

(2)がんの原発部位(延べ数であるので、記事数より母数が大きい)
 以下の原発部位でのがん関連記事が見られた。
1 肺        145本、9.9%
2 泌尿生殖器    122本、8.3%
3 消化管      110本、7.5%
4 肝胆道・膵臓   101本、6.9%
5 乳部        81本、5.5%
6 結腸・直腸     78本、5.3%
7 婦人科器官     77本、5.3%
8 造血器官      45本、3.1%
9 耳咽喉科器官    37本、2.5%
10 脳         21本、1.4%
11 その他       17本、1.2%
12 原発臓器記載なし 467本、31.8%

 原発がん病変は、一つの記事に複数のがんが出てきた場合、それぞれを数えた。どの週刊誌でも、がんの種類に関しては大きな差は見られなかった。

 また、比喩的表現で「がん」を使っている記事も6本あり、例えば「彼が、まさに民主党のがんである」というような表現が見られた。

(3)内容による記事分類
 記事の内容は以下の通りであった。
1 診断を含めたがん治療    340本、32.8%
2 有名人のがん罹患・死亡報告 160本、15.4%
3 クリニックや書籍の紹介批評  84本、8.1%
4 がん生物学          63本、6.1%
5 医療経済学または医療政策   22本、2.1%
6 啓発             18本、1.7%
7 がんの新たな基礎研究     8本、0.7%
8 ヒヤリハットまたか医療過誤  3本、0.3%

 どの週刊誌でも、内容に関しては大きな差は見られなかった。

(4)治療法による記事分類
 がん治療に関する340の記事および広告のうち、扱われた治療は、以下の通りであった。
1 外科治療(手術)       63本、18.5%
2 終末期治療またはホスピス介護 42本、12.4%
3 化学療法           41本、12.1%
4 放射線治療          35本、10.3%
5 新技術            18本、5.3%
6 食事療法           16本、4.7%

 しかしながら、がんに対する免疫療法を扱った記事が最も多く、32.9%を占める112本となった。これらの記事のうちのほとんどは、関連するエビデンスの存在しない奇抜で健康保険適用外の免疫療法の報告だった。

(5)がん専門家によるコメント数
 18カ月に及ぶ調査期間中で、総数132人のがん専門家が雑誌上でがんに関しての所見を述べていた。医師によるがんに関するコメントを分析すると、コメント総数340のうち35.6%にあたる121のコメントは、わずか5人の医師によって占められていることが分かった。ある放射線科医は、340の総コメント中23.8%を占める81ものコメントを提供しており、泌尿生殖器がんに関するコメントでは、総数30のうち63%にあたる19のコメントが、3人の泌尿器科医によって提供されたものだった。

●考察

 この研究は、週刊誌が、一般大衆に対してがん情報を提供するうえで重要な役割を担っていることを証明している。がん関連記事は、6週刊誌におい総記事数の1.9%に見られたのであり、この状況は、日本の新聞における1.5~2.0%に匹敵するものである。

 がん記事の発表は次第に増えている。2010年のがん関連記事数は、2009年の倍以上となっていた。伝統的メディアは、オンラインメディアに圧倒されてきている。週刊誌も例外ではなく、発行部数は減少している。その結果、編集長たちは、老年人口に沿う形で高齢世代に向けた記事内容へと路線変更したのである。本研究でも、比較的高い割合と言える12.4%にあたる記事は、終末期治療やホスピスを扱っていた。

 がんの原発部位を見ると、読者層の大部分が男性であることから、肺がん・泌尿生殖器がん・胃がんに関する記事が最も多かった。日本において発症の多い悪性腫瘍に関する話題は、一般大衆の興味を惹きつける。対照的に、6誌は主に男性読者に向けられていると考えられることから、婦人科がんや乳がんに関する記事は、新聞よりも露出頻度が少ないように見えた。読者を惹きつけることのできないがんに関する情報を雑誌で入手するのは困難となる。

 有名人のがん闘病日記は雑誌では一般的で、15.4%を占めた。これは、がんと医療制度に焦点を当てている新聞とは対照的である。有名人の病気の話は読者の興味をそそり、がん診断は、もはや隠すべきこととは考えられていない。そのようなわけで、がん診断を受けた有名人の記事は、週刊誌において広告塔となり得るのである。間寛平氏がメディアを通じて前立腺がんと闘っていることを認めたことにより、前立腺がんに関する記事同様に検診広告が次第に増えてきている。

 本研究は、がんに関する記事や広告が一般大衆に疑わしい民間免疫療法を語る可能性のあることを証明した。興味深いことに、これらの記事や広告のほとんどが、薬事法に抵触しないように書籍広告というギリギリの方法を採っていた。どんながんでも完璧に治すことができるという活性化リンパ球療法に関する多くの書籍が、どの週刊誌にも毎週掲載されている。藁にもすがる患者にとって治療選択権は広がるかもしれないが、医師はこの状況を認識し、雑誌読者に情報提供する必要がある。

 がん関連記事にコメントが繰り返し登場した医師たちは、もっぱら数名の腫瘍学専門家に限られていた。驚くべきことに、コメントの23.8%は、たった1人の放射線専門家によるものであった。新聞と比較すると、小人数のスタッフが情報収集をしているため、ほとんどの記者は、すべての記事に関して締め切りというプレッシャーを抱えている。喜んでインタビューを受ける数人の医師に頼ることを想定するのも無理のないことである。がんに関する多くの記事において、限られた医療専門家による見解に不均衡に重きが置かれているという偏りの存在を認識するべきである。

 本研究は、週刊誌が、一般大衆へのがんに関する情報伝達のための最も効果的な紙媒体の一つになり得ることを示したが、議論されるべき限界がいくつか存在する。第一に、調査期間が短すぎ、確たる結論は引き出せないということである。さらに長期間にわたる研究が求められる。第二に、本研究ではオンラインマガジンは調査しなかった。数多くのオンラインマガジンが創刊されていることから、多くの人が将来において多くのがん関連記事を容易に眺めることができるようになるであろう。オンラインマガジンの普及によって、読者層が変わる可能性がある。第三に、がん関連広告の数や潜在的影響については、製薬会社による雑誌へのいかなる投資も広告内容に影響を及ぼすかもしれず、おそらく過小評価されたであろう。最後に、取り上げた日本の6誌が、他の数えきれないほどの雑誌を代表するという仮定には問題がある。最も発行部数の多いこれらの雑誌が、一般化可能性の適用化に至るはずではあるが、女性誌・専門誌・経済誌を含めて幅広い雑誌に対して調査を広げる必要がある。

 結論として、取り上げた雑誌との関係でのがんに関する様々な情報は、記事に含まれる情報が確立されていない治療や偏った見解に重きを置いている可能性はあるが、容易に理解しやすい方法で伝えられている。雑誌媒体の特有性がより理解されるなら、正確な情報が一般大衆に伝えられる可能性がある。

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