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これでよいのか、木材の放射能基準

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 さて、森林汚染による社会科学的問題についてちょっとお話ししたいと思います。福島県の木材協同組合連合会の自主管理基準値、これは今年の7月27日付で出たんですが、製材品の表面線量が1,000cpm以下であることを確認するとなってます。で、測ってみますと、420cpmのもので14,900Bq/kg、650cpmのもので33,400Bq/kgでした。非常に高い値です。1,000cpm以下という自主管理基準は、確かに外に向ける線量という意味では少ないかもしれないのですけど、木材の持っているセシウム量としてはちょっと多すぎるのではないかと私は考えています。チェルノブイリ原発事故後、ウクライナ政府は木材の基準値を1,000Bq/kgと定めました。やはり私は、ある意味ではこれが国際水準なんじゃないかなという風に考えております。
 次は福島県における森林の問題ですね。ちょっと説明しますと、まず放射能汚染は森林保険ではカバーされない。それから放射性セシウムを含む木材の安全衛生が周知されていない。それから樹木へのセシウム蓄積を感じる農家の絶望感。それから木材が全国へ流通。そして、森林の放射能の除染をやらない。そういうことによって、福島の特に南相馬の森林が、相馬市の方もそうなのですけど、森林再生されないまま放置されています。そして林業が衰退し、森林破壊が起こっております。これは、例えば東南アジアなんかの自然林が森林破壊されているのとはまた違った形の、新しいタイプの森林破壊ですね。
 まず放射能汚染が森林保険ではカバーされないのは、非常に重要なポイントです。実はフランスの放射能防災機構という所が、9年前に政府から独立してできました。要するに原子力の安全機構ですね。フランスというのは、今までアンリ・ベクレルとかキュリー婦人とかノーベル賞を原子力でいっぱいもらっていますので、彼らは原発をやめようという気持ちは全くありません。むしろ進めていく。ただし、その代わりに徹底的に管理を行うというコンセプトです。彼らは衛星を使って、福島県の森林火災を監視しています。なぜ森林火災が起こるかというと、これはチェルノブイリ事故の後に頻発したことなのですが、基本的に放射能汚染では何の補償もないので、そうしますと農家は自分の森林に火をつけて、それで保険金をもらうと、そういう生活なんです。だから、日本も起こるのではないかと。私は向こうに行った時「日本人はそんなこと絶対にしませんよ」と言ったのですけど、彼らはそういう観点から監視しています。
 それから薪ですね。今でもちょっと町を離れますと、皆さん薪を割ってそれで風呂とかかまどに利用しています。でも放射能セシウムを含む木材の安全衛生というのが、周知されておりません。セシウムを高い濃度で含んでいる場合、フライアッシュと言って、近くにいる人間が内部被曝と言うんですか、それを吸い込んでしまう可能性があります。
 次は森林の話になりますが、かつて森林再生というのは日本の伝統でありました。切ったら必ず新しい苗を植えて森林再生をしていると。ところが震災後は、切った後、放ったらかしになっています。要するに、農家はここに植えてもダメだろうと。絶望感が非常に強いんです。これは本当に農家の絶望感というのは非常に大きいです。
 さて、林野庁による福島県木材の安全宣言。これは木材の基準値を定めないということで、例えば林業者が他県へ流通する。これはもちろん放射能測定の検査なしです。全くなしで出しています。今福島県の木材が全国に流通されていると。それが例えば椅子になったり箸になったり、色々なものになっています。私は非常にちょっと危惧の念を持っています。
 この森林を取り戻すためにということで、私は三つの非常に重要なことを考えています。まず、木材の安全・安心。これがないといけないと思います。それで、林業あるいは木材産業に放射能測定器を揃えると。福島県の南相馬、相馬地域。それから郡山の方とか、全部やはり放射能測定器を揃えていただきたい。これこそ復興予算を使ってほしいですよね。一つ目のお願いです。
 それから、二つ目なんですけど、賠償問題。これが今非常に停滞しています。林業農家・木材産業にやはりきちんと賠償を行ってほしい。きちんと賠償しない限り、信頼の絆は育ちません。日本人は、やはり信頼関係を持てば守ります。でも賠償されなかったら、そこのところは分からなくなってしまうのではないかなと思っております。
 それから、三つ目。森林破壊ですね。今森林が再生されないままに林地が放置されている。さらに森林を廃棄物の捨て場にしようという話が出ています。そういう意味で、森林の除染をやはり真剣に考えたいと。特に福島県の人々は森林によって救われたわけです。守ってもらったわけです。やはりその感謝の念を持って、やはり森林を大事にしたいというのが私の考えでございます。

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