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日本のメディアは質が低い

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 日本のメディアは質が低い、と世界で最も権威ある科学誌の一つNatureが論説を掲載しました。

Bad press
Japan's media have played a large part in exacerbating the effects of a fraud.
31 October 2012
Nature 491, 7-8 (01 November 2012) doi:10.1038/491007b

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

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 森口尚史氏のでっちあげたiPS細胞を心不全患者の治療に用いたという虚言によって、山中伸弥教授のノーベル賞受賞にケチがついたことは大変に残念である。その話が広く報道されるに至った日本のジャーナリズムの質の低さは、今回に限ったことではなかった。読売新聞の今回の記事は極めて残念なものだが、日本経済新聞を含む他紙も過去10年にわたり森口氏の実証されていない話を掲載してきた。

 このままでは、日本のメディアは、研究の秘密にも踏み込む科学報道に怖気づくことになりかねない。そこでジャーナリストが専門家に太刀打ちするためのノウハウをお示ししたい。

 まずは、科学者の研究発表を調べることである。研究には所属が示されているはずで、本人が言う場所に在籍しているか確認するのは容易である。ハーバード大学にEメールを出していたなら、読売新聞は狼狽せずに済んだかもしれない。共同研究者に、当の科学者が主張している実験なりをやったかどうか確認することもできるし、出資者や利益相反に関する記載もあるはずである。

 最も重要となるのは、当の科学者とは共同研究をしていない研究者と話をすることである。参照文献のリストを見ればそのような研究者の名前が挙がっている。参照文献がなければ警告の印となるだろうし、インターネット検索をしても研究者の名前はすぐに見つかるであろう。一般に科学者は、文献からガラクタを除く作業に慣れており、ガラクタと思えばガラクタと言うであろう。

 森口氏が、最新の研究結果はまだ公表されていないと言ったことも、疑問を抱くきっかけとなるべきだった。なぜメディアに先に明かすのか? そうする理由を有する科学者もいるが、彼に理由はなかった。彼の研究や過去の発表をより細かく調べるべきであった。革新的前進を遂げたと主張している分野でほとんど、あるいは全く経験がないというのはなぜなのか? なぜ存在していない大学の部署で研究したと称したのか? 馴染みのない技術をなぜクリニックへ持ち込んだのか? Natureがしたように、森口氏に直接質問すれば、事態はより明確になったはずだ。なぜ最新研究に関する共同研究者の名前を挙げることを拒んだのか? 表面をつついただけでも、疑わしいことは山ほどあったのだ。

 偽物でやりおおせることはどこにでもあるが、日本においては報道されないままになるという文化的要素があるように思える。日本人の科学者たちは仲間に対して批評的ではない傾向にあり、自分の経歴を危険にさらしたくない告発者を保護する傾向が少ない。そして、日本のジャーナリストは、おそらく先生という言葉でもたらされる高名な印象に怖気づいているのか、儀礼的過ぎて厄介な質問をすることを恐れている可能性がある。英語に対する自信欠如とタイムゾーン(時差)が原因となり、海外の科学者と連絡を取らないでいたりする。

 事態は、iPS細胞マニアという最近の日本の流行によって悪化している。山中教授の研究成果に興奮して、メディアは質を問うことをしばしば忘れ、新しいiPS細胞の話を取りに奔走している。これがiPS細胞技術に偏執的な傾向を生み出し、iPS細胞研究を医療に転換する国際競争に日本が敗れるかもしれないという危惧が、森口氏や読売新聞の記者を炊きつけた可能性もある。

 iPS細胞技術の美点は、世界のどこででも科学者たちによって容易に利用され得るということである。日本が山中教授の業績に対する誇りを示したいのなら、世界中のすべての業績を祝福するべきである。そして、ジャーナリストは、それがどんなに重要であるかを理解したいのなら、新たな成果を国際的視点で見るべきなのである。

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