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メディアの情報 どこまで正しい?

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65-2-1.JPG医療に関する報道が世の中にあふれています。ただし、医療者からすると、「間違いではないけれど、どうも違和感を感じる」というものも少なくないようです。何が違和感の原因なのか探りました。

関心と正確さの反比例

 マスメディアが報じることのできる情報量には物理的な制限があります。新聞であれば1日分の面積はほぼ決まっていますし、テレビであれば1日に最大24時間しか番組を流すことはできません。その面積や時間を、事柄ごとに割り振っていく必要があります。
 端的に表現すると、日々、事象どうしでスペース・時間の奪い合いになっています。専門化すれば他分野との争いはなくなりますが、一方でその事象に関心のない人が接しなくなるので、社会の幅広い層に共通の情報を届けるという意味でのマスメディアとは呼べなくなります。
 何に多くのスペースや時間を割くか、大抵はメディア自身で判断していますが、商売の都合上、メディア自体も人々の支持の多寡を競っているため、基準は必然的に人々の関心の高さになります。
 とはいえ、特に事件の場合、発生したばかりで人々の関心が高い時ほど、何が起きたのかよく分からないものです。それが取材を加熱させ、報道の量も増えます。逆にある程度の時間が過ぎ人々の関心が薄れてくると、分かることは増えているのに報道量が減って来ます。
 実例を一つお示ししましょう。
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 グラフは、東京大学医科学研究所の水野靖夫医師らのグループが、2008年に三重県で発生したセラチア菌による集団院内感染事件(コラム参照)の新聞記事量を時系列で追いかけたものです。
 発生当初の段階で、点滴の作り置きが発覚、患者血液中からセラチア菌が検出されました。全体の報道量のほぼ半分を占めた最初の3日間の記事の中身は、「作り置き」による「院内感染」一色です。読者は調剤済みの点滴を常温で放置したのが感染の原因だと理解したことでしょう。しかし、無菌的調剤の点滴製剤を常温で長時間保管しても細菌が繁殖する可能性は低いため、「何か報じられていないことがあるだろう」と多くの医師が新聞報道に違和感を感じていました。
 事件が初めて報道されてから9日目(グラフの↓)に、医療器具からもセラチア菌が検出されたことが明らかになります。その後、事故原因の調査が進み、多くの医師が納得できる全貌(コラム参照)が明らかになりました。しかし、それらの報道量は初期に比べると微々たるものでした。この文章をお読みになって事件のことを思い出し、「え、本当はそうだったの?」と思った方もいることでしょう。
 時間が経てば経つほど全貌が分かるのに、人々の関心低下と共に記事の量は減る。結果として、不十分な情報が多くの人の脳裏に刻み込まれ、正確になることのないまま独り歩きする、という現実があるようです。
 なお、研究グループによれば、この事件の一連の報道で、医学的に誤っている表現はほとんどどありませんでした。また、全期間の記事を改めて読み返すと、必要不可欠な要素はほぼ漏れなく報道されていました。個々の報道は間違っているわけではないけれど、真の原因に到達しない枝葉のものが多かったので、専門家が読むと違和感があったし、社会にも全貌が正しく伝わらなかったということになります。
 これは、この事件に限ったことではありません。間違っているわけではないんだけれど、核心を外した枝葉が多くて不十分というのが、多くの報道に見られることです。

三重セラチア菌集団院内感染事件  2008年5月から6月の間に、三重県の診療所で点滴を受けた患者さんのうち、1人が亡くなり、18人が入院、10人が通院加療を必要とするという集団感染事件が発生しました。 ▽生理食塩水にビタミンB12製剤と鎮痛剤を混ぜた点滴から、セラチア菌が検出されました。当初の報道では点滴の「作り置き」が問題だとされました。しかし後に、点滴作成の際、個別包装されたアルコール綿ではなく、使用基準の20倍以上に薄められた消毒液に浸した綿が使用されていたこと、その消毒液の中でセラチア菌が繁殖したこと。さらに、長時間その点滴を常温で放置したためセラチア菌が増殖した、という全貌が明らかになりました。
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