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認知症を知る17 認知症にやさしい社会は誰もが暮らしやすい

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。


自分や家族がなって初めて暮らしづらい社会と気づく。

 戦後日本は高度経済成長を背景に、右肩上がりは良いことだという貪欲なまでの価値観で突き進んできました。個人についても、できることが多く早いことは素晴らしいという評価基準になっています。
 80歳を超えてエベレスト山頂を極めたり、90歳になっても豪華客船で世界一周を楽しむといったことが個人の努力の結果として称賛され、それはもちろん将来にわたって変わりなく素晴らしいことです。
 でも一方で、個人の意思とは関係なく、できることやスピードを奪われた人、健康を損なった人たちは、社会の中で「居場所」を失っています。自分や家族がそうなった時に初めて、暮らしづらい社会であることに気がつくのです。
 人間誰でも歳をとれば衰えます。行動が遅くなり、失敗するようになるのは自然な姿です。そこに、もっと寛容な社会を願っています。認知症にやさしい社会は、すべての人にやさしくできる社会だと思います。
 勘違いされると困るのですが、成長や拡大する社会を否定して過去に帰れと言うつもりはありません。最先端のテクノロジーに加えて、日本社会が成長の過程でどこかへ置き忘れてきてしまった何かを拾って融合して、認知症に集約されている超高齢社会の価値観や幸せのあり方を皆で共有してゆくようにしたいんです。それこそが、ハート・リング運動のめざす「認知症にやさしい社会」です。

――ぜひとも広めたいですね。

 先日、とある記者さんの取材を受けまして、その方は嫁として、年に何回かの帰省時に認知症の義父と会うそうなんですが、同居する家族の言動が本人にストレスを与えていて、家族の側も面白くないという負のサイクルが回っていることをずっと感じていたというんですね。
 家族の対応次第では本人の認知症進行が緩やかになるという話(2013年5月号参照)もあるのに真逆で、状況を悪化させるばかりになっているわけです。
 最近、認知症のセミナーやシンポジウムが数多く開かれていて、大抵は「ご本人を主役に」という考え方を教えてくれます。でも大多数の、時間もないし関心もないという人には、そういう情報が届いてません。「認知症にやさしい社会を」という世界観が色々な場で段々と浸透して世に広がっていくなかで、今まで見向きもしなかった人がちょっと足を止めて見るということになれば意義はあるんだろう、と思いますね。

認知症2人で立ち姿.jpg――無関心層に訴えるのは、本当に難しいです。せめてハート・リングって聞いたことがあるなとか見たことがあるな、とかいうのだけでも覚えておいてもらえれば、何かあった時に検索してもらえるということでしょうかね。
 最後にNPOの課題は何でしょう。

 手弁当で始めたので、まずは何をするにも、お金がないことです。共感していただけた方は、ぜひ会員になって一緒に活動していただけたら幸いです。

NPO法人ハート・リング運動の会員となって一緒に活動してくださろうという方、まずはメールか電話(03-3582-8100)でご連絡ください。
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