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睡眠のリテラシー42

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 昼間を元気に過ごして、いよいよ寝る時間が訪れます。「今日も疲れた。明日も頑張ろう」と思いながら、一日を締めくくれると最高でしょう。さっと寝付いて、ぐっすり眠れば、翌日は快調に違いありません。

 ところが、あいにくそうならず、考え事を始めたりしたことはないでしょうか。内容は、今抱えている問題や将来のことかもしれませんが、とかく否定的になりがちです。さらには、不安や怖さまでも感じるようになって、大変な状況になる時もあります。

 一日の中で気分はどのように変わるかという疑問は古くから調べられてきました。そのような変化の特徴を知り、背景にある要因を明らかにすることは、睡眠の研究にとっても、治療にとっても重要であるからです。

 これまでの研究の多くは、実験に参加した方に長時間起き続けていただき、その間に定期的に気分を測っていました。しかし、この方法では、ある時刻に気分の上下が起きても、それがその時刻のせいなのか、あるいは長く起きているせいなのかを区別できませんでした。

 そこで、英国と米国の研究者が共同で特別な実験を行いました。それは1日を28時間で過ごすというものです。この内、睡眠は9時間、覚醒は19時間と決めました。参加者は、このスケジュールでおよそ1カ月間、生活します。

 1日24時間という枠で見れば、4時間ずつ遅寝遅起きを繰り返すことになります。こうすることで、起きている時間を一定にしながら、一日のあらゆる時刻で気分を測ることができます。

 心身のリズムを司る体内時計は睡眠・覚醒のタイミングが1日に4時間もずれると、それについていけません。これが逆に利点となり、体内時計は実験期間中、普段通りに動くことになります。

 この実験では起きている時間は固定されますので、ある時刻に測った気分の値は、体内時計からみれば「何時」に当たり、起床から勘定すれば「何時間」経った時の値として捉えることができます。

 得られた結果から、気分は時刻(体内時計)の影響を強く受けることが分かりました。夜10時頃から気分は下がり始め、朝5時頃に最低になった後、上がり始めます。このようなパターンは起きている時間が長くても短くても、同じように認められました。

 以上より、その時々の家庭や職場の事情が左右することはあるにしても、深夜から明け方にかけて気分が下がるというのは、私たちの内面、具体的には脳の働きによると言えます。

 太古の昔、真っ暗闇の夜は本当に怖いものであったのでしょう。もしかしたら、食べられてしまう危険性もあったかもしれません。そうした「ビビり」の記憶は脳の奥底に刻み込まれ、今にも続いているようにみえます。

 夜を心安らかに迎え、良い睡眠をとるには、昼間からの準備と夜更かしへの注意が肝心になります。

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