全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

タンパク質、動物性から植物性に置き換えよう!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

3大栄養素のひとつであるタンパク質、皆さんは毎日しっかり摂取していますか? 一日に一定量以上を摂取することはもちろん、タンパク質の種類にも注意しなければならないようです。どのようなタンパク質を摂取するべきか、2016年8月1日付の医学雑誌「JAMA Internal Medicine」に掲載された、米ハーバード大学の研究者からの報告を参考に考えてみましょう。

大西睦子の健康論文ピックアップ119

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートと編集は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

植物性タンパク質、鶏肉、魚が健康的

研究者らは、ハーバード公衆衛生大学院が実施している、女性看護師を対象とした大規模疫学研究「Nurses' Health Study(NHS)」において32年間(1980〜2012年)と、男性医療従事者を対象とした大規模疫学研究「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」において26年間(1986〜2012年)、それぞれ調査しました。参加者は、女性8万5013人(64.7%)と男性4万6329人(35.3%)の、合計13万1342人です。調査開始時の平均年齢は49歳でした。参加者の食生活については、食物摂取頻度調査票を使った調査を実施して評価し、4年ごとに更新しました。また、医療やライフスタイル、その他の健康に関する情報については、2年ごとにアンケート調査を行いました。調査終了時、3万6115人が死亡(心血管疾患:8851人、がん:1万3159人、その他:1万4105人)していました。

Mingyang Song, et al.
Association of Animal and Plant Protein Intake With All-Cause and Cause-Specific Mortality.
JAMA Intern Med. Published online August 01, 2016.
doi:10.1001/jamainternmed.2016.4182

統計学的に分析したところ、次のような結果が得られました。

●全体の9割の人が、総摂取カロリーのうち、動物性タンパク質から9~22%(中央値※は14%)、植物性タンパク質から2〜6%(中央値は4%)を摂取していました。動物性タンパク質の主な摂取源は、赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉など)や白身肉(鶏肉など)、魚、卵、乳製品で、植物性タンパンク質の主な摂取源は、パンやシリアル、パスタ、ナッツ、豆類です。
※データを大きさの順に並べたときの真ん中の値

●動物性タンパク質の摂取が、総摂取カロリーに対して10%増えるごとに、総死亡リスクが2%増加し、心血管疾患による死亡リスクが8%高まりました。この関連性は、肥満もしくは深酒の習慣がある人で特に強まりました。

●一方、植物性タンパク質が総摂取カロリーに対して3%増えるごとに、総死亡リスクが10%低下し、心血管疾患による死亡リスクは12%低くなりました。この関連性は、現在も喫煙の習慣があり、飲酒習慣があり(1日に最低ビール小瓶1本分)、太り過ぎまたは肥満で、運動不足の65歳以下もしくは80歳以上の参加者でより強く認められました。

●また、動物性タンパク質の種類によっても違いが見られました。摂取エネルギーの3%分のタンパク質を、数種の動物性タンパク質から植物性タンパク質に置き換えたところ、総死亡リスクは以下の通りとなりました。▽加工肉から植物性タンパク質への置き換えでは34%減少、▽非加工の赤身肉からの置き換えでは12%減少、▽鶏肉や魚からの置き換えでは6%減少、▽卵からの置き換えでは19%減少、▽乳製品からの置き換えでは8%減少。つまり、鶏肉や魚を摂取した人の死亡リスクは、植物性タンパク質を摂取するより高めだったものの、赤身肉や加工肉を摂取した人よりも低かったのです。

以上から、同じタンパク質を摂るならば動物性たんぱく質よりも植物性たんぱく質を多めに、動物性たんぱく質を摂るならば加工した赤身肉よりも鶏肉や魚を多めに摂ることを心がけるのが健康的と言えます。


生活スタイルで違うタンパク質の種類の影響

上記の結果からは、タンパク質の種類や摂取量と死亡リスクの関係は、純粋にタンパク質の種類のみに依存しているというよりも、参加者の不健康な生活スタイルの影響が大きいことも見受けられます。

そこで研究者たちは、参加者を「健康な生活スタイル」グループと「不健康な生活スタイル」グループに分けて分析を行いました。「健康な生活スタイル」とは、タバコを吸わないか年に5パック未満で、お酒は飲まないかたしなむ程度(アルコールにして女性は1日14g、男性は1日28g未満)、BMI(体重指数)が18.5から27.5未満、最低でも中強度の運動を週に150分もしくは高強度の運動を励行していること、と定めました。これに当てはまらないのが、「不健康な生活スタイル」となります。

その結果、以下のような特徴が見られました。

●健康な生活スタイルの人たちは、動物性タンパク源として、魚や卵をより多く摂取していたのに対し、不健康な生活スタイルの人たちは、加工肉や未加工の赤身肉、をより多く摂取していました。

●同量の動物性タンパク質であれば、不健康な生活スタイルの人たちは健康な生活スタイルの人たちより多くの赤身肉(加工・未加工)、卵、高脂肪の乳製品を摂取し、一方で鶏肉や魚、低脂肪の乳製品の消費は少ないことが分かりました。同じく同量の植物性タンパク質で比較すると、野菜や果物、全粒穀物、食物繊維が少ないことが明らかになりました。

●死亡との関連を見ると、動物性タンパク質の摂取と総死亡リスクに関連性が認められたり、植物性タンパク質摂取が増えることで死亡リスクが低下したりするのは、不健康な健康スタイルを送っている人、つまり、喫煙や深酒、太り過ぎもしくは肥満、そして運動不足のうち、少なくとも1つが当てはまる参加者に限られました(ただし、動物性タンパク質による死亡リスク増は統計学的に有意、つまり偶然でないと言えるほど大きくはありませんでした)。一方、興味深いことに、健康的な生活スタイルを送っている人には、動物性タンパク質の摂取増加による死亡リスク上昇はほとんど認められず、植物性タンパク質の摂取増加によっても死亡リスクに大きな違いはなかったのです。

以上から、日ごろから健康に気を使った生活スタイルを送っている人たちは、タンパク源として加工肉や赤身肉よりも鶏肉や魚を多く摂取していること、植物性タンパク源の種類にも違いがあることが分かり、のみならず、タンパク質を多く摂取しても死亡リスク上昇につながっていないことが分かりました。その背景として、不健康な生活スタイルの人々には、慢性炎症やメタボリック症候群など、タンパク源の違いによる影響(動物性タンパク質を多くとることの悪影響や植物性タンパク質に切り替えることでの好影響)を強める要因を既に持っている可能性が考えられます。


加工肉や赤身肉に発がん性?

今回の研究からは、生活スタイルによる影響の違いはあるとしても、加工肉や赤身肉と死亡リスクとの関連が目立ちました。これに関しては、「加工肉や赤身肉が、がんの原因となる」というWHO(世界保健機構)の発表(2015年10月26日)が記憶に新しいところです。
https://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf
http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/Monographs-Q&A_Vol114.pdf

この発表は、仏国リヨンで開催されたWHOのがん専門機関「国際がん研究機関」(International Agency for Cancer Research :IARC)の会議によって策定されたものです。世界10カ国から22人の科学者が集まり、加工肉や赤身肉の発がんリスクについて、過去の800以上の研究を調査した上で、総合的に評価しました。IARCの評価では、発がん性があるかどうかを5つのグループに分類し、科学的根拠の強さを示しています。

結論から言えば、IARCは加工肉を、タバコと同じ「グループ1:発がん性がある」と判定しました。調査の結果、加工肉の摂取はがんのリスクをわずかに増加させること、摂取量が増えるとリスクが高まることが判明しました。そこでさらに10研究について解析をしたところ、毎日50gの加工肉を食べると、大腸がんのリスクが18%増大すると結論づけました。50gというと、ベーコン約2枚、ホットドッグ用ソーセージ1本分の大きさです。IARCは、加工肉が大腸がんの原因になると結論づけました。さらに、胃がんとの関連も示唆しています。

赤身肉については、総合的には強いがんとの関係が示されず、判定は「グループ2A:おそらく発がん性がある」となりました。消費量との関係を推測するのは困難でしたが、一部の研究からは、赤身肉100gを食べると大腸がんのリスクが17%高まることが示されています。さらに膵臓がんや前立腺がんとの関係も示唆されました。

ただし注意すべきことは、IARCの判定は、物質や環境の発がん性の強さや、どれだけの量を摂取するとがんが発症するかというリスクを評価するものではないことです。

実際、IARCは、加工肉や赤身肉を、完全に食べるな!とは言っていません。特に赤身肉には、質の質、ビタミンB群、鉄および亜鉛などの重要な微量栄養素が含まれています。また今回の研究でも、植物性タンパク質の摂取が動物性タンパク質摂取よりも低死亡傾向となったメカニズムは不明ですし、動物性タンパク質は、植物性タンパク質に比べて体が利用しやすいという利点もあります。しかしながら、過度の摂取は控えておくのがよさそうです。動物性タンパク質を多く摂取をしている人は、植物性タンパク質に置き換えること。動物性タンパク質として、鶏肉や魚の割合を増やすこと。そして同時に、健康的な生活スタイルを送ることも心がけていきましょう!

  • ロハスな商品を厳選してお届け! HAPPY GRIN
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索