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SNSのやり過ぎは摂食障害リスク

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Facebook(フェイスブック)に代表されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用の急速な広がりが、意外なところにも影響を及ぼしています。女性たちの、自身の体に対する不満を助長し、摂食障害のリスクを高めていている可能性があるのです。オーストラリアの研究者たちが、女子大生を対象にFacebookの利用と自らのボディイメージとの関係を調査し、2015年1月に報告しました。今回はこの論文をきっかけに、ボディイメージに関する問題を考えてみたいと思います。

大西睦子の健康論文ピックアップ113

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートと編集は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

ボディイメージにメディアの影響

ボディイメージとは、心に写る自分の姿です。例えば、自分の外見に関して信じていること、身長体重や体型に関して感じること、自分の体の動きについて感じていることなどです。

2015年1月、オーストラリアの研究者たちが227人の女子大生を対象に、Facebookの利用とボディイメージの問題との関係を調査し、医学誌「Body Image」に発表しました。その結果、Facebookの利用状況とボディイメージに対する懸念との間に関係があることが明らかになりました。特に、Facebook上で親しい友達や疎遠な同僚と比較する頻度や、あるいは疎遠な同僚や女性有名人と比較して自分が劣っていると感じる場合に、ネガティブなボディイメージを持つことが分かりました。
Jasmine Fardouly, Lenny R. Vartanian
Negative comparisons about one's appearance mediate the relationship between Facebook usage and body image concerns.
Body Image,Volume 12, January 2015, Pages 82-88
doi:10.1016/j.bodyim.2014.10.004

Facebookの利用がボディイメージに与える影響については、2013年にも、1087人の女子中学生(13~15歳)を対象にオーストラリアで研究が行われています。対象者の75%がFacebookの利用者で、1日に平均1.5時間をパソコンの前で過ごしていました。彼女たちは非利用者に比べ、あらゆるボディイメージ対する懸念が高いという結果が出ています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23712456

さらに、2014年の米アメリカン大学の研究では、103人の女子中高生を対象としたアンケート調査から、Facebookの写真アプリケーションの使用度合がボディイメージ低下と関連していることが分かりました。単にFacebookの利用時間が長いだけではボディイメージ低下につながらず、写真アプリを使って容姿がネット上にさらされる程度が高いほど、体重への不満や痩せ願望などに繋がりました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24237288

Facebookに限らず、女性のボディイメージに対するメディアの影響は以前から言われており、研究も行われてきました。

2008年、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)とミシガン大学(University of Michigan)の研究者たちは、77の研究を分析し、メディアに登場する、過度に痩せている女優やモデルの影響で、著しく女性の体に対する不満が増加し、その影響で、不健康な行動や過激なダイエットに発展することを報告しました。
http://psycnet.apa.org/index.cfm?fa=buy.optionToBuy&id=2008-04614-005

当時のウィスコンシン大学の学内ニュースによれば、メディアの形態は問題でなく、お茶の間のテレビでも、雑誌でも、パソコン画像でも、影響があるとしています。研究者たちは、1990年代より2000年代に入ってからの方が、女性のボディイメージに与えるメディアの影響が強まっていることも明らかにしたと言います。
http://news.wisc.edu/15215

ちなみに、インターネットは一般的に1995年以降、特に2000年代初頭にかけて、世界的に爆発的に利用者数が増えました。日本でも一般に1995年が「インターネット元年」と呼ばれています。SNSは2002年頃までに徐々に成長、2004年に次々誕生し、2000年代後半に急速に利用者数を増やしています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/9/2/9_70/_pdf


若い女性の「痩せ」と摂食障害の増加

近年、ボディイメージとの関連性が問題になっているのが、摂食障害です。

米国の国立摂食障害協会(National Eating Disorders Association)によると、ネガティブなボディイメージをもつ人は、1)本来ではない自分の歪んだ体型を認識し、2)他人が魅力的なのに自分のサイズや体型は魅力を感じず、3)他人の目を気にして、自分の体に対して羞恥心、不安や不快を感じています。これらの人は、摂食障害の発症のリスクが高まり、うつ病、孤独感、低い自尊心に苦しむ可能性が増えます。
https://www.nationaleatingdisorders.org/what-body-image

2011年の米国国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health)の報告によると、全米の未成年(3~18歳)1万123人を対象にした調査の結果、一生のうちに拒食症や過食症、むちゃ食い症候群に陥る割合の推定値は、それぞれ0.3%、0.9%、1.6%でした。
http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1107211

厚労省は、日本ではここ10数年も「正確な全国的な疫学調査がなく実態は不明」としながらも、1980年からの20年間に摂食障害全体で患者数が約10倍に増加し、特に1990年代後半の5年間だけで拒食症は4倍、過食症は4.7倍と急増したことを指摘。「医療機関を訪れるのは一部であるため、実際はもっと多いと推定され」、「欧米並みになってきた印象」としています。 また、1998年に行った病型についての調査では、拒食症が47.0%、過食症が39.7%、その他が12.3%であり、それ以前に比べて過食型の摂食障害の増加が特徴的でした。さらに詳しく見ると、拒食症は10代、過食症は20代が多く、推定発症年齢では10代の占める割合が年々増加し、若年発症の傾向を示していました。男女比は1対20で、一般に90%以上が女性と報告されています。
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html

その原因について同省も、摂食障害患者の心理的特徴の中核には「体重や体形へのこだわりや体形への不満がある」としています。患者数増加の背景に、「マスコミや雑誌などでは、スリムになるための広告を毎日のように目にし」、「『やせを礼賛し、肥満を蔑視する』西欧化した現代社会の影響がうかがわれ」ると指摘しています。

実際、ここ10年以上、日本では20代女性の痩せ傾向が深刻で、国民健康栄養調査でも20%台でずっと推移してきました。これは男女合わせて全世代でもっとも高い割合となっています。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000068070.pdf


ポジティブイメージで幸せに

こうしてネガティブなボディイメージについては長年、様々な研究が行われてきたのに対し、ポジティブなボディイメージは近年までほとんど考慮されていませんでした。

米オハイオ州立大学のトレイシー•ティルカ博士たちは2005年、ポジティブなボディイメージの評価スケール(Body Appreciation Scale:BAS)を開発しました。BASでは、1)実際の外見に関係なく、体に対する好都合な意見を持っていること、2)メディアの理想な外見とは異なる自分の体の受け入れ、3)健康的な行動の必要性に従事し、体に対する敬意、4)非現実的な外観の理想の拒絶と体の保護、を指標とします。BASによって評価すると、米国の女子大生では、ポジティブなボディイメージは、自尊心や楽観性、積極性を高め、幸福感と関連していました。また、オーストラリアの女子大生では、ポジティブなボディイメージが、日焼け止めを使用しての皮膚がん予防や、むやみなダイエットの減少といった行動改善につながりました。ポジティブなボディイメージは、ネガティブなボディイメージに独立して、幸福、セルフケア、および摂食行動に関連していたのです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18089195

それから10年を経た今、ポジティブなボディイメージに関する研究が盛り上がりを見せています。非常に興味深いのが、ティルカ博士たちが2015年1月の「Body Imaga」誌上に示した、ポジティブなボディイメージは、ネガティブなボディイメージとは無関係で連続性がない、との見解です。つまり、ポジティブなボディイメージを持つことは、ネガティブなボディイメージを減らすことではないのです。もしネガティブなボディイメージの症状を軽減することに注力したなら、結果も単に「私はもう自分の体を嫌いではありません。受け入れます」といった中立的なボディイメージを促進するにとどまるでしょう。そうではなく、ネガティブなイメージはさておき、自分の体に対してポジティブなボディイメージを持ち、尊重し、自賛し、感謝し、誇りに思うことが重要なのです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25921657

ポジティブなボディイメージを持つ人は、1)明確に真の自分の姿を認識し、2)自分のありのままの姿を賞賛でき、また感謝し、3)人としての価値や性質について身体的な外見で評価せず、4)オンリーワンである自分自身の体を受け入れ、誇りを持ち、体重や食品、カロリーをむやみに気にすることなく、5)自分の体を快適に感じ自信を持つことができます。
https://www.nationaleatingdisorders.org/what-body-image

ここ数年でソーシャルメディアの利用者は爆発的に広がり、国籍や年齢、性別などを問わず、多くの人の日常生活に浸透しています。今後、さらにネガティブなボディイメージによる摂食障害の問題が広がる可能性があります。だからこそ、私たちはネガティブイメージへの固執をやめ、ポジティブイメージを自分の中に形作っていく必要があります。そうすれば自ずと、気に入っている部分はもちろん、そうでない部分も含めて、ありのままの自分の姿を受け入れ、肯定することができるようになります。そうして幸せを実感できるようになるんですね。

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