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砂糖、塩そして脂肪の次は、リン?

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以前から老化との関係が指摘されていた「リン」の過剰摂取。リンは通常の食事にも十分含まれていますが、現代ではハムやソーセージ、その他の加工食品に多い添加物のため、知らないうちに子供から大人まで摂りすぎてしまうようです。リン過剰摂取の問題点をより科学的に裏付ける論文が発表されました。

大西睦子の健康論文ピックアップ68

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。


「カルシウムを摂りなさい!」って、よく聞きますよね。それではカルシウム同様、食品に含まれるミネラルのリンはいかがでしょうか?


実際のところ、「リンを摂りなさい!」とはあまり聞きません。リンは、カルシウムに比べてあまり注目されることがありません。なぜなら、私たちは肉、魚、牛乳や穀物などから、体に必要なリンを無意識のうちに十分に摂取しているため、不足があまり問題にならないからです。ところが最近は、加工食品に含まれるリン酸添加物からの、リンの過剰摂取が問題になっています。


以前に「リン酸と老化」の関係の記事を書きましたので、まず、こちらを参照して頂き、リンとは何か、どんな問題があるか、復習してみて下さい。


歴史的には、リン酸過剰摂取に対する懸念は、腎臓病※1の患者さんに限られていました。慢性に腎臓の機能が低下すると、リンを体外に排泄することができず、リンの血中濃度が上昇します。その結果、高リン酸血症およびカルシウム•リン積※2の増加が生じ、血管の石灰化※3を促し、心血管疾患※3、および死亡率のリスクを増加させます。それでは、リンの過剰摂取は、血中のリン酸値の正常な、健康な人にも同じ結果をもたらすのでしょうか?


先日、健常人においても、リンの過剰摂取が死亡リスク増加に関与することが、米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究者から報告されましたので、ご紹介させて頂きます。

Alex R Chang, Mariana Lazo, Lawrence J Appel, Orlando M Gutiérrez, and Morgan E Grams
High dietary phosphorus intake is associated with all-cause mortality: results from NHANES IIIajcn.113.073148 Am J Clin Nutr January 2014 ajcn.073148
doi: 10.3945


研究者らは、国民健康栄養調査(NHANES;National Health and Nutrition Examination Survey III、1988年〜1994年)のデータを用いて、リンの摂取量に関する疫学調査※5を行いました。対象者は、20〜80歳の成人9,686人です。妊婦や糖尿病※6、がん、腎臓病、心臓病※7の方は、この研究の対象となりません。リンの食事摂取のデータは、対象者が24時間以内の食事を思い出し、訓練されたインタビューアーの質問に答えて収集されます。心血管関連死および全死因死亡に関するデータは、2006年12月まで収集されました。


その結果、平均の経過観察期間は、14.7(13.1〜16.2)年間で、リンの一日平均摂取量は1166 (823-1610) mg、1kcalあたり0.58 (0.48-0.70) mgの平均リン密度、ほとんどの参加者(83.4%)が米国の推奨一日リン摂取量=700mgを超えていました。特に35.1%の対象者は、一日推奨量の倍=1400mg以上のリンを摂取していました。


リンをたくさん摂取している層は、身体活動が活発な若年の男性に多く認められました。また、リンをたくさん摂取している層は、高カロリーで、塩分やカルシウム、タンパク質、脂肪、乳製品、肉類の摂取が多く、フルーツ、野菜、穀物の摂取が少ない傾向にありました。リンを多く摂取していた人の血液中のリン濃度は正常でした。しかしながら、一日リン1400 mg以上の摂取は、全死亡リスクが有意に増加していました。また、平均リン密度が1kcalあたり0.35mg (一日2000 kcalあたり、700mgのリン摂取に相当します。) 以上のリン摂取が心血管疾患の増加に関与していました。


この報告から、栄養必要性を超えたリンの摂取は、健常人においても心血管疾患や死亡のリスクの増加につながる可能性があります。


忙しい現代社会を生きる私たちには、便利な加工食品を全く利用しないで生活することは難しいと思います。加工食品を上手に利用することは問題ないと思いますが、不必要な摂取は減らしましょう!近い将来、アメリカを皮切りに、脂肪、砂糖と塩分に続き、リンの表示に関しても、問題になるかもしれませんね。


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